性に対して、身体的、感情的、精神的、社会的にも健康な状態であることを指す、「セクシャルウェルネス」という概念。

今回は、オピニオンリーダーであるZ~ミレニアル世代の4人が語るセクシャルウェルネスに関する経験談を中心に、セルフケアの一環として取り入れたきっかけや、タブー視されがちな性に関する意見をオープンに発信する理由について、前半と後半に分けて伺いました。


参加者プロフィール

■コンドームの妖精なっちゃん

 
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アフリカでの性体験から“爆誕”した、コンドームの妖精なっちゃん。YouTubeInstagramなどのSNSで、性教育やセックスポジティブ、セクシャルウェルネスにまつわるコンテンツを明るく、愛を乗せて発信中。

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■モリタジュンタロウ

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出生時に割り当てられた性が「女性」であるものの、「男性」として生きることを望むトランスジェンダーのFTM(Female to Male)として、YouTubeの発信活動を開始したモリタジュンタロウさん。身体的な不便や悩みを解消するために立ち上げた、トランスジェンダー向けのセクシャルウェルネスブランド「nopole」代表。

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■Kyoko

 
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動物実験をしないヴィーガンコンドームの販売を可能にするため、厚生労働省はじめ各種関係者向けの署名を準備中。セクシャルウェルネスとサステナブルを掛け合わせる現役大学生。

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山本あやの

 
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フェムテック専門ショップ「LOVE PIECE CLUB」に大学時代からインターンで入社し、現在は広報を担当。

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――「セクシャルウェルネス」という言葉はどこで知りましたか?

コンドームの妖精なっちゃん「性教育について発信している人のTwitterを見て、初めて『セクシャルウェルネス』という言葉を知りました。

当時、性=“アダルト”なイメージが私の中にあったのですが、この言葉が生まれたことで、『健康』という親しみやすい概念に変わりましたね」

山本あやの「私はフェムテック企業に入社してから、セクシャルウェルネスという言葉と出合いました。

プレジャーアイテムと聞くと、わいせつなものとして捉えてしまう人々もいると思いますが、決してそうではなく、性の健康を保つうえで大切なものだと伝えたいです」

モリタジュンタロウ「僕はトランスジェンダーなので、FTMが使えるアダルトグッズを作りたいと思っていたなかで、インターネットでセクシャルウェルネスという言葉と出合いました。

その言葉や概念は、まさに僕がトイを通して伝えたい、自分やパートナーが快楽を追求することの喜びや、その先にある、セルフラブなどといった心の健康にも深く関わるので、とても共感できます」

Kyoko「私もフェムテックブランドでインターンをしていて、そこで『セクシャルウェルネス』を学びました。

私にとってセクシャルウェルネスとは、心と体の健康です。生理によるメンタルヘルスや、そこから派生する友人や家族とのパートナーシップなども含まれるのではないでしょうか。

フェムテックやセクシャルウェルネスについて興味を持ったきっかけは、海外で性教育を学んだ友人の話を聞いたときに、自分や自分の周りは、まだまだ性に関する知識が少ないと痛感したこと。それからは、性教育や性暴力被害者の支援団体での経験を経て、今に至ります」

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――セクシャルウェルネスをセルフケアの一環として取り入れるようになったきっかけがあれば教えて下さい。

コンドームの妖精なっちゃん「大学生のときに付き合っていた恋人がアフリカ在住だったので、遠距離恋愛をしていて。当時、国境を超えて遠隔操作ができるセックストイを見つけたのが、セクシャルウェルネスアイテムを取り入れるようになった始まりです。

しかし、私も地方出身なのですが、地元のアダルトグッズ専門店の多くは、いわゆる“男性向け”のアイテムがほとんどで、少しハードルが高い印象でした。

そんななか、女性向けセルフプレジャー・アイテムブランド『iroha』や、フェミニストの方が運営するセックストイショップ『LOVE PIECE CLUB』などで、誰もが手に取りやすいおしゃれなデザインと、心地良さに寄り添った商品を見つけたときは、本当に感動しましたね。

アメリカに旅行へ行ったときには、普通のスーパーにもトイやローションが置いてあるコーナーがあり、セクシャルウェルネスは日常と隣り合わせだからこそ、誰もがアクセスしやすいことが大切だなと実感しましたね」

山本あやの「大学でジェンダーやセクシャリティについて学んでいた一方で、セクシャルウェルネスについては学ぶ機会がありませんでした。

でもある日、弊社の代表が、私が通っていた大学の特別講師として登壇し、可愛いセックストイを紹介してくれたことが転機となり、セクシャルウェルネスについて興味を持ち始めました。

コンドームの妖精なっちゃんが言っていたように、“男性”目線で作られたセックストイが多いなか、女性が考えて、制作に携わっているアイテムを広げる手助けができるのは光栄です」

モリタジュンタロウ「僕は出生時に割り当てられた性が『女性』で、男性器はない状態です。そのため、自分の体で気持ち良くなることに抵抗を感じていた時期もありました。

でも、『パートナーとのセックスは鏡だから、自分自身が楽しむのが大切』と、とある先輩から助言をもらった日を境に、今の体だからこそできることがあるのではないかとポジティブに考えらえるようになり、FTM用のアダルトグッズを作るきっかけにもなりました」

Kyoko「コロナ禍で月経過多や生理による精神的な不安と、腰を据えて向き合うようになったのが始まりです。おうち時間にInstagramを見る機会が増えて、吸水ショーツや布ナプキンに強く興味を持ち、挑戦することに。それがきっかけで、デリケートゾーンのケアも始めました。

人から見られるようなものではないけれど、セルフケアをしているという自覚が、メンタルヘルスの安定にも繋がった気がします」

――セクシャルウェルネスについて発信しようと思ったきっかけを教えてください。また、どんな反応がありましたか?

コンドームの妖精なっちゃん「もともと性に対する好奇心は旺盛だったのですが、あまり公にしない方がいいと思っていた時期がありました。オープンに語るようになったのは、知り合いの助産師が、性行為のことをパートナーシップやセルフケアの一つとして発信していたのがきっかけです。

それからは、女性のためのセクシャルウェルネスグッズをたくさん調べ、発信するように。個人的には、パートナーにも言えなかった性の悩みを、アイテムをきっかけに円滑に話せた経験が大きかったですね。私のように、自分に非があるのかもしれないと思い悩んでしまう人に、『そんなことないんだよ』と伝えたいです。

発信を始めてから、同級生や幼馴染から、『実は私も…』と悩みを打ち明けてもらう機会が増えました。自分の活動で世界を変えることはできないけど、ひとりで抱え込んでいる誰かの相談相手になることや、女性が性について語るのはおかしいことではないというメッセージが伝わったら嬉しいです」

山本あやの「フェムテック企業のPRとして強く感じるのは、ここ2~3年で、雑誌やテレビ、SNSの影響で、『フェムテック』という言葉が浸透してきたことですね。流行語大賞2021の候補にもランクインしていましたし。

今は札幌から沖縄まで、かなりの数の問い合わせを頂くようになり、お客様のなかには、『性交痛やデリケートゾーンの悩みは、しょうがないものだと諦めていたけれど、専用のアイテムを使えば、自分でも緩和できるものだと知った』という声も。

全員が親から教わったり、友達に打ち明けられたりするわけではないので、そういった悩みのサポートができて嬉しいです」

モリタジュンタロウ「僕にとっては、自分の性体験をYouTubeで赤裸々に語ることが始まりでした。

僕が知っているFTM当事者の多くは、男性器を持たない選択をしているのですが、それ故に、『どうやってセックスをすればいいのかわからない』という声をよく聞きます。そうであれば、同じようなことで悩む人の参考になればと思い、自分の体験談を語るようになったのがきっかけです。

その後、FTM当事者とそのパートナーにアンケートを取り、電子書籍『竿無し男子によるSEXの真面目な教科書』を出版しました。アンケート結果でわかったのは、“正解”がないので、当事者はそれぞれ自分流のセックスをしているということと、パートナーとの間に価値観のズレがある可能性があること。

興味深いことに、FTMの方がセックストイなどを使用して挿入にこだわっていたとしても、そのパートナーが必ずしもそれを求めているわけではなく、なかには肌の触れ合いで満足しているというケースもありました。

電子書籍は700部くらい売り上げ、『こういうことを本当に知りたかったから嬉しい』という声も頂いてます」

Kyoko「発信しようと思ったきっかけは、セクシャルウェルネスに関して悩んでいる人がたくさんいた、というところに尽きますね。

具体的には、コンドームをつけてくれないパートナーに悩んでいる人、コンドームを自分で買ったことがない、あるいは買い方がわからないという人、性行為中に要望を伝えたいけど伝えられない人、パートナーに性交痛を理解してもらえない人、生理痛がひどいけど、婦人科に通うことにハードルを感じている人、ピルを飲むことに対する親の反応を恐れている人などが挙げられます。

これまでの経験を活かして、自分個人の意見を発信しているのですが、とある友人が、誰にも言えなかった悩みを私にだけ相談してくれたことで、誰かにとっての『セーフゾーン』になりたいという使命のようなものを感じました」