特に若い世代での性感染症の症例数が上昇し続けている、アメリカ。また、厚労省の統計情報によれば、日本でもここ数年で梅毒や尖圭コンジローマの報告者数が急増しており、中でも20代が最も感染者が多いよう。

そして、「性感染症は恥ずかしいもの」という偏見から適切な検査を受けなかったり、誤った情報が世の中に蔓延しているという背景も…。そこで本記事では、「性感染症にまつわる、よくある誤解」を医師が解説。正しい知識を身につけて、感染予防に役立ててみて!


【INDEX】


「STD」ではなく、「STI」が適切

多くの場合、「STD(=性病)」ではなく、「STI(=性感染症)」と言うべきだそう。感染症は病原体が宿主(この場合は人間)に移って定着することで、無症状の場合も含みます。

「“病”となると、宿主になった人の普通の生活を妨げるような症状が継続して出ます」、と説明するのは性科学者のエミリー・デパッセさん。

ちなみに、STIで一番よくあるクラミジアや淋病は、風邪と同じように抗生物質で治療が可能。そのため「病気」として扱う必要がないのだそう。

“軽い”ものと、“重い”ものがある…は間違い!

性感染症に限れば、その深刻さにランキングのような分類はありません。他のより「まし」だったり、逆に「重い」STIはないそう。なぜなら、すべて治療で症状をおさえ、完治できるものだから。

「他のものよりましな感染症があるという考えは、黒か白かに分ける間違った考え方を強めることにつながります。それに、性感染症にかかったからといって、あなたが“汚れている”という捉え方をする必要は全くありません」と、デパッセさん。

無防備なセックスが原因…とは限らない!

アメリカの性的健康に関する団体「アメリカン・セクシュアル・ヘルス協会」の報告によれば、性的な活動のある若者にSTIの検査をすれば、25歳までの2人に1人が陽性反応を示すだろう、とのこと。

「STIのスクリーニングを受けるのが怖い、あるいは陽性だったら恥ずかしい…と思う人がいることを考えると、この数字はもっと高くなりそうですね」とデパッセさん。

性感染症にかかった人に対して「コンドームをつけてなかったの?」なんて言葉をかけるのは適切ではありません。特にヘルペスのようなSTIの場合は、コンドームをつけていても、皮膚と皮膚の接触から感染する可能性があるのだそう。つまり、必ずしも無防備なセックスが原因とは断定できないということ。

ただし、パートナーと合意の上でセーファーセックスを心がけることは、性感染症だけでなく、望まない妊娠などを防ぐうえでも大切だということは覚えておきましょう。

「見た目でわかる」ものばかりじゃない

STIの中には、外からはっきり見える症状を起こすものもありますが、全くわからないものだってあります」とデパッセさん。症状が目に見えなかったり、切り傷や埋もれ毛と見間違えたり、他の病気と勘違いすることもあるそう。

そのためSTIを持っているかどうかを、局部の見た目に頼るのは危険。

デパッセさんが勧めるのは、パートナーと性の健康について話し合うこと。たとえば、最後に検査したのはいつか、結果はどうだったか、自分たちにとっての線引きはどのへんか、そしてこれからどんなことを望むか、などを率直に話してみて。

同じSTIを持つ人としかつき合えない…は誤解。

「たとえばHIVの陽性と出れば、性関係や恋愛関係においての自由に制限がかけられたように思えるかもしれません」とデパッセさん。

でも、陽性という結果が出た後でも、パートナー(STI持ちでもそうでなくても)と共にセクシュアルな、ロマンチックな関係を維持していくことができるし、実際にそうしている人も多いのだそう。

「そんなこと信じられないと言う人も多いです。特に診断が出た直後には。それはそのような関係のことや、どう上手に相手との関係を続けていくかについて、ほとんど表立って話されないから。陽性だったからといって自分で勝手に否定的な判断をして、セックスライフをあきらめることはしないで」

大切なのはパートナーとオープンに、効果的に意志を通じ合うことなのだそう。


「一度の検査で全て調べられる」わけじゃない!

STIの検査は、性のセルフケアと健康維持にとても大切なこと。少なくとも年に一度は、健康診断のついでに受診したり、あるいはセクシュアルなパートナーが新しくできたタイミングで受けた方がいいそう。

ただし、「すべての項目」を検査してくださいとお願いしたとしても、医療機関や医師によっては、あなたの考える「すべて」を検査してくれないかもしれません。

「アメリカの場合、スタンダードなSTIスクリーニングは、年齢や性的な相手の有無、セックスの頻度によっても違ってきますが、尿検査でわかるクラミジアや淋病などが含まれています。一方で、多くの場合、血液検査などが必要なヘルペスやHPV(ヒトパピローマウイルス)感染症は含まれていないのです」

特定の検査したい項目があるときには、クリニックでしっかりとその意思を伝えることが大切です。

「セーファーセックスで防げる」…とは限らない

先ほども触れましたが、コンドームをつけていてもヘルペスに感染する場合がある、というのは本当です。

「慎重なセックスを心がけていても、ある日突然、STIの検査で陽性になってしまうことがあるんです」とデパッセさん。

「STIの中には皮膚と皮膚との接触で移ってしまうものもあり、コンドームやデンタルダム(安全なオーラルセックスのためのシート)を使って防ごうとしても、性器周辺の皮膚をすべてカバーはできません。だから感染の可能性はあるんです」

つまり、何度スクリーニングを受けても、どんな防御手段を使ったとしても感染のおそれは常にある、ということ。「基本的に、2つ以上の体を密着させることで起きてしまうことなんです」とデパッセさん。

口唇ヘルペスと性病のヘルペスは同じもの!?

「口唇ヘルペス」というのは口やその周囲にできるものですが、実際は同じヘルペスウイルスによるものなんだそう。「同じだと認めたくないこと自体が、性感染症を恥ずべきことと考える風潮のさらなる証拠」と、デパッセさんは指摘しています。

HSVには2つのタイプ、HSV-1(1型)とHSV-2(2型)があります。1型の方は口にも性器にも出ますが、2型の方はもっぱら性器部分に現れる。ですが、1型も2型も、違いより類似点の方が多いんです

STIは誰でも経験する可能性があるもの。予防法だけでなく、検査や治療の正しい知識をもって、定期的に検査を受けるように心がけたいところです。

この翻訳は、抄訳です。

Translation:Sasaki Noriko (Office Miyazaki Inc.)

COSMOPOLITAN US