多くのラブコメ映画で、“青春時代の通過儀礼”のように描かれることの多い「初体験」。スクリーン上だけでなく実社会でも、「処女は恥ずかしいもの」や「早く初体験を済ませるべき」と捉えている人も。

本記事では、性体験をしていないことをタブー視する風潮や、処女に向けられる偏見、そしてその背景にある性教育の課題について、<コスモポリタン イギリス版>からお届けします。


【INDEX】

  • 処女への偏見
  • 処女の概念
  • 処女と恥
  • 性教育の問題
  • 今後の課題

処女に向けられる偏見

セクシャルウェルネスの重要性への認知が高まり、近年はセックスについてオープンに話す傾向が高まってきている一方で、処女については、未だに“触れてはいけないこと”のように扱われがち。

Virgin(ヴァージン)』や『Thirty Things I Love About Myself(原題)』の著者であるラディカ・サンガーニさんも、次のようにコメントしています。

「処女は、ジョークとして取り上げられる以外、ポップカルチャーではほとんど触れられません。セックスそのものは話す機会があっても、まるで処女はタブーで、触れてはいけないこととされている傾向があります」

セックスとリレーションシップのコーチであるシャーリーン・ダグラスさんも、これに同意。

「(欧米)社会では『初体験は失敗するのが当たり前』、『16歳の誕生日のすぐ後には経験するもの』とされていることも。その結果、その時期に経験しないと恥ずかしい、自分だけおかしいのではないかと感じてしまっている人も多くいるんです」

しかし実際に統計を見てみると、実態はいささか違っているよう。2016年のある研究によると、イギリスの初体験の平均は18.3歳だったものの、2018年の別の研究では、26歳のうち8人に1人は処女であるという結果が。

さらに、Z世代は他のどの世代よりもセックスをする頻度が下がっているという研究結果も。アメリカの「青少年リスク行動調査」では、1991年から2017年の間で、セックスをする高校生の数が、54パーセントから40パーセントに下降。オーストラリアの研究では、Z世代は年金受給者と同じぐらいのセックス頻度なのだとか。

このような現状にも関わらず、未だに処女は“タブーで恥ずかしいもの”だという偏見があるのはなぜでしょうか。

「処女」の概念

多くの辞書では、処女とは「性行為の経験がない女性のこと」と定義されるのが一般的。しかし実社会ではもっと複雑なもの。セックスセラピストのジョディ・スリーさんはこう説明。

「通常『処女』という言葉は、ペニスを挿入する性行為に言及しています。しかし、これはヘテロセクシャルであることが当たり前という前提で考えられているもの。レズビアンで100人の女性とセックスしていても、社会の定義では処女なのです」

実は、この曖昧な処女の概念は実社会にも影響が。女性セレブたちの多くは、男性の処女崇拝の対象になり、彼女たちがいつ処女をなくしたかが騒ぎ立てられることも多々あるのが事実。

この影響はセレブだけではなく一般人にもあり、ジェイミーさん(26歳)は、初体験を処女信仰の男性に利用されたと感じたそう。

「私が“純潔”だから魅力的だと言われました。初めて自分が求められている、セクシーだと感じたのに。そう言われて彼への気持ちが一気に冷めました」
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Getty Images

処女と“恥”

初体験の理想は、自分のニーズや不安を安心して話せること。友人に相談でき、社会のプレッシャーを感じず、心の準備ができたらすればいいけれど、残念ながら多くの人にとっては、この理想から程遠いのが現実。

モニカさん(24歳)は、友達やパートナーに処女であることを隠し続け、昨年初体験を経験。隠していたのは、自分の選択が間違ったものだと批判されると感じたからだったそう。

「私はデミセクシャルで、特別な人が現れるまで待つことにしていたんです。でも、多くの人は理解してくれません。シングルだったのもあり、人には“お堅い”と言われました。もし処女だと明かしたら、その10倍言われると思います」

カトリーナさんは22歳のときに初体験を経験。自分だけ遅い、遅いのは恥ずかしいことだと感じていたという。

「友達とのセックスや恋愛についての話題には入れませんでした。みんなには、かわいそうだと思われていたんじゃないかな」

性教育の課題

こんな状況の中、性教育に改善が必要なことには多くの人が同意できるはず。スリーさんは現状について、以下のように説明。

「学校では性教育ではなく、生殖教育を教えています。セックスが実際はどんなものなのか、性的同意や安心して楽しむ方法を誰も教えてくれません」

こうした性教育の不足が、自分の体や相手とどう向き合うか、何が健康的で同意のあるセックスなのかを曖昧にしてしまっているよう。

また知識が少ないことで、本来であれば「おかしい」と言うべきシーンも、その場の雰囲気に流されてしまうという問題も。ジャスミンさん(27歳)は、初体験でステルシングの被害にあってしまったという。

「男性のほうが経験があったこともあり、私は行為の進め方を託していました。彼は私の信頼を利用し、最終的にコンドームを外したんです。事前にそれは嫌だと伝えていたにも関わらず」
「こんなことが起こってしまう可能性があると知っていても、止めることはできなかったかもしれません。でも情報を持っているだけで、少しでも状況をコントロールできるようになったり、対応できるようになったりするはず。処女であることへの罪悪感や恥はあるべきではないのです」
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ZAHRA SULEMANGETTY IMAGES//Getty Images

今後の課題

唯一の希望は、インタビューで話を聞いた人たちは今の状況を問題だと思っていたことと、10代の多くは今の20~30代の人たちよりも、処女であることに恥や偏見を抱いていないということ。

処女であるというクロエさん(18歳)は、準備ができたと思えるタイミングまで待つと言い、処女をからかうのは“昔のこと”だと感じているそう。

「誰かに処女であることをからかわれたりはしません。セックスをしたければできることはわかっているし、意味のない冗談だと思います」

今後、人々の安全を確保するには、何を変えなければいけないのでしょうか。

第一に、性犯罪はどんな状況でも、どんなことでも被害者のせいではないとはっきり反論すること。また性被害を受けたことを明かしている人がいる場合、その人たちの声、意見を聞くことが重要。

これは、サンガーニさんが友人やパートナーに伝えていることでもあるそう。そして初めてのセックスにおいて、話す姿勢、話を聞く姿勢が大切だと言及。

「初体験で1番大切なことはコミュニケーションです。相手がどう感じているか、様子を確認しましょう。セックスはとてつもなくロマンチックで衝動的なものでなくていいのです。私にとって真のロマンスとは、気遣いと優しさ、事前にどんなものかを話し合うことです」

そして学校の性教育は、もっと対人関係を意識したものが必要。LGBTQ+コミュニティのセクシャリティや性的同意、どうやって安全なセックスをするかについても触れるべきで、クロエさんは次のように指摘。

「セックスには責任が伴います。当人同士が、何をするかに事前に同意し、ルールに従って行動することが大切です」


相談窓口

性犯罪被害相談電話
Tel. #8103

男女共同参画局による公式サイト
※相談に関するQ&A、警察や病院に行く時に持って行った方がいいものなどが解説されています。


※この翻訳は抄訳です。
Translation: Haruka Thiel
COSMOPOLITAN UK