性に対して、身体的、感情的、精神的、社会的にも健康な状態であることを指す、「セクシャルウェルネス」という概念。

今回は前半に続き、オピニオンリーダーであるZ~ミレニアル世代の4人が語るセクシャルウェルネスに関する経験談を中心に、 日常生活での悩みや対処法、オススメのアイテム、良いセックス=挿入という固定概念、セクシャルウェルネスとジェンダーの関係性、社会課題について伺いました。

参加者プロフィール

コンドームの妖精なっちゃん

 
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アフリカでの性体験から“爆誕”した、コンドームの妖精なっちゃん。性教育やセックスポジティブ、セクシャルウェルネスにまつわるコンテンツを、愛を乗せて、明るくお届け中。

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モリタジュンタロウ

 
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出生時に割り当てられた性が「女性」であるものの、「男性」として生きることを望むトランスジェンダーのFTM(Female to Male)として、YouTubeの発信活動を開始したモリタジュンタロウさん。身体的な不便や悩みを解消するために立ち上げた、トランスジェンダー向けのセクシャルウェルネスブランド「nopole」代表。

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Kyoko

 
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動物実験をしないヴィーガンコンドームの販売を可能にするため、厚生労働省はじめ各種関係者向けの署名を準備中。セクシャルウェルネスとサステナブルを掛け合わせる現役大学生。

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山本あやの

 
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フェムテック専門ショップ「LOVE PIECE CLUB」に大学時代からインターンで入社し、現在は広報を担当。

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――日常生活での悩みや対処法、オススメのアイテムはありますか?

コンドームの妖精なっちゃん「生理用品は吸水ショーツを使っています。会社員時代、どんなに大きなナプキンを使っても漏れてしまうほど月経過多だったので、長時間の商談では吸水ショーツがすごく役に立ちました。今後は月経カップもチャレンジしていきたいですね。

あとは、性交痛を感じることがたまにあるので、セクシャルウェルネスブランドの『bda ORGANIC』のルブリカントを使っています。見た目もスタイリッシュで、持ち歩きやすい点がオススメです。

愛用コンドームは2つあって、1つ目はステルスゼリーが大量塗布された『ZONE』。2つ目は、肌のやわらかさに近い『SKYN』で、ゴム特有の触り心地が気になる人にオススメです。

リラックスしたいときや、ぐっすり眠りたいときはセルフプレジャートイを使っていて、触り心地が良く、色も可愛い『iroha』のみなもづきがお気に入りです」

山本あやの「生理関連でいうと、月経周期を整えるためのピルと、『ムーンパンツ』の吸水ショーツ『Intimina』の月経カップを併用しています。

『ムーンパンツ』は生地が薄くて、生理でないときでも履いているほど、着心地が気に入っています。ただ、それ一枚だけだと、経血量が多い日の外出は不安なので、月経カップを併用しています。月経カップがあれば、サニタリーボックスの必要もないですし、ゴミを回収する手間や、ニオイの心配なども軽減しました。

あとは『YES』のフェミニンウォッシュ保湿剤を使っています。VIOの脱毛をしているので、ショーツが擦れた痛みや乾燥をケアするという意味でもお気に入り。

よくある、オーガズムに達したことがないというお悩みをお客様から頂いたときには、『ウーマナイザー』『ローラ ディカルロ』などの吸引型のセルフプレジャートイを推奨しています!」

モリタジュンタロウ「リラックスした着心地が叶う『“おかえり”ショーツ』を愛用しています。僕の場合、男性ホルモンを投与すると、クリトリス(陰核)が肥大化するという悩みを抱えていて、普通のパンツでは擦れて痛くなってしまうんですよね。

あとは、僕のように挿入を伴わないセックスの場合、フィニッシュに手を使う人もいるのですが、それだとパートナーを抱き締めにくいという悩みがあります。そんな人には、手前味噌ですが自社製品で、 1つの振動を共有する『nopole』の球体型ローターがオススメです!」

Kyoko「私は月経過多に悩んでいたので、私は月経過多に悩んでいたので、人によっては生理周期が120日に1回になるヤーズフレックスというピルを服用し、だいぶ楽になりました。私も山本さんと同じムーンパンツを2枚と、『メイドインアース』のオーガニックコットンナプキンを利用しています。

でも実は最近、避妊効果が高く、徐々に月経量が減少すると言われている『ミレーナ』を装着するようになりました」

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――セックス=挿入という固定概念に苦しんでいる人もいると思います。それについてはどう思いますか?

コンドームの妖精なっちゃん「良いセックス=挿入&オーガズムという固定概念は、ポルノ文化と深い関わりがある印象です。

ポルノはあくまでも娯楽なので、どうしてもエンターテインメント性が強くなってしまいますよね。だからこそ、誰にとってもわかりやすい視覚的な情報が重視され、挿入はもちろん、射精や潮吹きなどがオーガズムの象徴として映し出されていると思うんです。

個人的には、セックスをするからと言って服を脱がなくてもいいし、ただ触れ合うだけでも満足できます。ましてや身体的な繋がりがなくても、心が通う瞬間は、もはやセックスと呼べるのではないかと思います」

山本あやの「セックス=ヘテロセクシャルの男女の挿入を伴うものという概念が根付いているのは実感しますね。それが前提にあるから、セクシャルマイノリティの方などに対して、『どうやってセックスしてるの?』といった質問をする人が出てくるのかなと。

また、お客様の話を聞いていると、クリトリスでオーガズムを迎える人はよく聞く一方で、挿入による膣でオーガズムを感じる人は比較的にそこまで多くない印象です。

それが関係しているのか、膣で感じる方がすごいことかのように、オーガズムに優越をつけている人もいて、挿入に固執する傾向がある気がします」

モリタジュンタロウ「これはまさに自分のテーマだと思って聞いていました。トランスジェンダーの僕自身も、10代の頃までは『挿入は男性の象徴』だと思い込んでいたのですが、後に、それは社会が作り上げた“男らしさ”への固執であるということに気づきました。

今回、僕がFTM用のセックストイを作るうえで、当事者やそのパートナーにアンケートを取った結果、FTMの方は挿入できないことに悩みを抱え、良かれと思ってペニスバンドなどのトイを取り入れている一方で、一部のパートナー側からは『トイを挿入されるのは痛い』という声が挙がり、まさにすれ違いが起きていることを知りました。

これからの時代、挿入にこだわったセックスよりも、心の繋がりが重視されることを願っています」

Kyoko「コンドームの妖精なっちゃんと同様、ポルノの影響がすごく大きいと思います。ビジュアル的な快感の描写はもちろん、『“男”らしくすべき』などといったジェンダーロールも反映されていると思います。

私は、ゆっくりと時間をかけて自分の内側に意識を向け、心身共に満たされる『タントラセックス』が好きですね。まだ初心者ですが、呼吸を合わせることや、ハグだけを楽しむこともあるんです」

――マイノリティの悩みが顕在化しつつあります。セクシャルウェルネスとジェンダーの関係性について、どう思いますか?

コンドームの妖精なっちゃん「男性に比べて、女性は絶頂に達しにくいことを指すオーガズムギャップという言葉は、まさに歩み寄りの欠如から発生していると思います。

デイリー・メール>誌によると、18歳から65歳までの5万2000人を超える被験者を対象に実施された研究では、セックスでオーガズムに達した男性(ヘテロセクシャル)の割合は95%であった一方で、女性(ヘテロセクシャル)は65%とはるかに下回る結果に。

先ほどの話にも繋がりますが、ポルノでの偏った描写によって、『こうすれば気持ちいいだろう』『前戯よりも挿入』という思い込みにつながるのではないでしょうか。

先ほどの研究結果では、レズビアンの女性がオーガズムに達する確率は86%と、ヘテロセクシャルの女性を大きく上回る結果が出たそうです。

モリタさんが言っていたように、相手の気持ちはわからないからこそ、反応を見たり、コミュニケーションをとる努力をしたりすることで、このギャップは埋まる気がします」

山本あやの「女性の多くは、挿入だけではオーガズムを得られないと言われていますよね。その研究結果を聞いて、いかに挿入や射精をセックスのゴールとして重視している人が多いのか、実感しました。

最近では、そういった悩みを解消すべく、挿入しながらクリトリスの刺激が得られる、カップル用のセックストイが増えてきていて、ニューヨーク在住の二人の女性が手掛けた『エヴァ2 』は、バイブを膣に装着しながら挿入を楽しめるユニークな仕組みになっているのでオススメですよ」

モリタジュンタロウ「ジェンダーやセクシャリティに限らず、たとえば障がいを抱える方など、身体的な快楽は個人差が出てしまうのは仕方がないのかもしれないと思っています。

だからこそ、心の繋がりはもちろんですが、幅広い層のニーズを顕在化した商品が増えてほしいです」

Kyoko「そうですね。ジェンダーロールなどの社会規範が性行為にも大きく関係していると思うので、そういった押し付けがない社会を目指したいですね。そのためには、大々的な発信も大事だとは思いますが、まずは自分に、そしてパートナー、次に友人へと伝えられたら嬉しいです」

――もっとこうなったらいいなと思う社会課題はありますか?

コンドームの妖精なっちゃん皆が心地よく、自由に選択できる社会を目指しています。そのためには、セクシャルウェルネスに関する情報が浸透し、一人ひとりの意見やニーズが理解されることだと思うんです。

これからもそういったコンテンツを、自分らしく、愛を乗せて発信し、女性を中心にエンパワーしたいです」

山本あやの「フェムテック企業に入社して、最初は大手総合ディスカウントストアのアダルトグッズコーナーへの営業からスタートしました。それくらいしか販路がなかった5~6年前と比べて、ここ1~2年でフェムテックが浸透し、百貨店などの大型商業施設にセクシャルウェルネスグッズを置いてもらえるように。幅広い層にアプローチができるようになったのは、自分のことのようにすごく嬉しいです。

とはいえ、空港にセックストイの専門ショップがあるようなヨーロッパと比べると、日本ではまだまだ、セクシャルウェルネスがヘルスケアの一部として認識されていない気がしています。海外での事例を目標に、会社としても、個人としても頑張ってきたいですね」

モリタジュンタロウ「海外と比べて、日本では夫婦やカップルカウンセリングに通っている人は少ないじゃないですか。

『nopole』は、大切な人のケアを重視しているので、今後はカウンセリングの導入など、より良いパートナーシップに向けたあらゆる手助けをしたいです!」

Kyoko「避妊方法の種類、性的同意、性にまつわる適切なサイトへのアクセスについて、まだまだ改善の余地がある気がしています。

避妊については、パートナーの協力を得ることはもちろんですが、もっと女性主体の避妊方法が増えることを願っています。また、私自身も拡散活動を行っている、動物や地球に優しいルブリカントやヴィーガンコンドームも、今後増えてくるといいですよね。

性的同意に関しては、誰もが『ノー』と言う権利があることや、言われた相手はそれを受け入れるという当たり前の行動がもっと浸透してほしいです。

性にまつわる適切なサイトへのアクセスも課題に掲げています。今、正しい性の情報が検索結果上位に表示されるようにするための『SEOセックス』署名活動が行われているので、ぜひ署名してみてください!」