パートナーとの大切なコミュニケーション手段でもあるセックス。しかし、オーガズムに達しなかったり、達しづらかったりすることで悩んでいる人もいるかもしれません。その可能性として挙げられるのが、性機能障害の一種である「オーガズム障害」。

そこで本記事では、産婦人科医の富坂美織先生にオーガズム障害について原因や治療法について伺いました。


【INDEX】


オーガズム障害(オルガズム障害)とは

そもそもオーガズム障害(オルガズム障害)とは、一体どのようなものなのでしょうか?

日本女性心身医学会によると、性機能障害の一つで十分な性的刺激や性的興奮を経験しているにもかかわらずオーガズムの欠如や感覚の低下がみられる症状を指すそう。

なお、性機能障害には、オーガズム障害のほかにも性行為への関心が減ることで性的興奮が得られなかったり、挿入時の痛みで性交が困難になったりする症状もあるとのこと。

「実際に外来で『パートナーから求められても育児や仕事の疲れで応えられない』『性交時、体に力が入ってしまい痛みを感じて挿入ができない』といった女性の悩みを聞くことは少なくありません」
「男性の場合は『日頃の疲れから夫婦生活が難しい』といった訴えを多く聞きます」

日本では、これまで女性の性についてオープンに話すことがはばかられてきたという社会的背景もあり「現時点では正確な発症率の統計は存在しない」と、富坂先生。しかし、外来での相談件数は年々増えているそう。

  
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オーガズム障害の原因

では一体、オーガズム障害を引き起こす原因は何なのでしょうか? 富坂先生によると、「同障害を広い意味で捉えると、主に身体的原因心理的原因に分類される」そう。

身体的原因

心療内科で処方される薬の副作用や糖尿病、外傷などがオーガズム障害の原因になりうる、と先生。

そのほか、外来では子宮内膜症やエストロゲンというホルモンの分泌量減少による性交痛についても多く相談を受けるとのこと。閉経などによりエストロゲンの分泌が減少すると膣内粘膜が乾燥し、性交痛が生じやすいのだとか。

心理的原因

「気持ちよくならなければ」とプレッシャーを感じることによる緊張や、自分の体に対する恥ずかしさ、「痛そう」という不安や恐怖などの心理状態も、オーガズム障害の原因と考えられているそう。

また、過剰な忙しさやストレスはもちろん、パートナーとの信頼関係なども要因になりうると言います。

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オーガズム障害の治療法

オーガズム障害の治療法は、原因によって様々です。「子宮内膜症などの婦人科系の病気が原因にある場合には、その治療が大切」と、富坂先生。

「また、閉経後のエストロゲン低下により分泌物が低下したり膣内の粘膜が乾燥したりして性交痛が生じている場合には、ホルモン補充療法が有効です」
「パートナーとの気持ちのすれ違いが影響しているケースには、カップルセラピーを受けてみることも検討してみてください」

普段からストレスを抱え込まないことや十分に睡眠をとること、規則正しい生活を送ることも重要だと言います。

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Nico De Pasquale Photography//Getty Images

誰にも相談できず一人で抱えこむ人も少なくない、性の悩み。「不安になったらまず病院を受診しましょう」と、先生はアドバイスします。

「最近は性機能外来を開設している婦人科や泌尿器科といった専門外来もあります。もちろんかかりつけの婦人科医がいるなら、そちらに相談するのも良いと思います」

「自分の体がおかしいのかも…」とパートナーや周囲の人に相談できずにいるという人もいるかもしれません。もし、セックスでオーガズムが得られずに悩んでいるならマスターベーションを試してみるのも一つの手。

「マスターベーションは自分の心と体、そして自分の性的欲求をよく理解する助けになります」

自分の心身によく向き合い観察することで、要因が相手との関係性などにあると気がつくきっかけになり、精神的な負担が軽減されることもあるでしょう。


心理的な理由によっても起こりうるオーガズム障害。人に相談しづらい悩みだからこそ、原因がわからないまま不安に過ごしている人もいるかもしれません。しかし、適切に対処すれば改善する可能性も。

オーガズムを感じないことが自分にとって悩みになっていないなら、必ずしも心配する必要はないけれど、ストレスや苦痛になっている場合は専門家に相談しましょう。

今回お話を伺ったのは…

産婦人科医 富坂美織先生

 
冨坂美織
産婦人科医、医学博士。不妊治療を専門とし、テレビや雑誌など、幅広いメディアで活躍中。さくらウィメンズクリニック勤務の他、順天堂大学医学部産婦人科教室非常勤講師も務める。著書に『2人で知っておきたい 妊娠・出産・不妊のリアル』(ダイヤモンド社)など。

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