恋人やパートナーとの関係に不満が溜まったとき、他の人に心が移ろっているとき、関係修復の一つの方法として「オープンリレーションシップ(パートナーとお互いに合意のうえで他の人とも関係を結ぶこと)」を検討したことがある人もいるかもしれません。

一方で、健全なオープンリレーションシップを保つためには、コミュニケーションにとてつもない労力と精神的エネルギーが必要なもの。この記事では、著者の体験談と共に、オープンリレーションシップに向いていないカップルの特徴を専門家の知見を交えてお届けします。

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文:カイラ・キッビさん

1対1の関係に息苦しさを感じ…

「私にはオープンリレーションシップが必要なんだと思う」と親友にメッセージを送ったのは、春頃のことです。親友も私自身も、この告白にそれほど驚きませんでした。なぜなら私は、昔からモノガミー(婚姻や性的関係、恋愛関係において1人の相手とのみ関係を築くこと)な恋愛関係には疑問を抱いていたから。

当時の彼氏に出会った頃は、幸せなシングル生活を4年ほどつづけた後のこと。好きになった人とはだれとでも性行為を楽しんでいた20代前半の頃の私は、そういった状況を少し変えたいと思うようになっていました。そんな私が恋に落ちたのが、2回の離婚を経験していながらもモノガミーを求める、当時の彼氏だったのです。

一方で私は、大学を卒業してから1対1の恋愛をしていませんでした。でも、そういう巡り合わせだったのでしょう。交際をはじめてすぐに私は、「オープンリレーションシップ」の可能性を提案し、その後も何度か提案を持ちかけてみていました。それでも合意は得られなかったため、彼との関係のためにモノガミーを試してみようと思いました。

交際が1年に達するころには、私は1対1の関係をつづけることに限界を感じはじめていました。当初から「彼氏以外の人とセックスができないという考え」には息苦しさをかんじていましたが、まるでスイッチが切り替わったかのように、「他の人とセックスができないという事実」に耐えられなくなったのです。

誰か特定の相手がいた、というわけではありません。電車や道端で出会う他人や、バーでナンパしてくる人、思い出したかのようにダイレクトメッセージを送って元恋人など、対象は誰でも良かったのです。

そこで私は、彼氏に再度オープンリレーションシップを提案することに。すると今度は彼の方も賛成してくれました。ところがその2週間後には、私たちは別れていました。

別れるべき?オープンリレーションシップを試すべき?判断基準を解説
MargaretW//Getty Images

正直なことを言うと、彼と別れることができて少しホッとした自分がいました。彼を失ったという哀しみよりも、安堵の気持ちの方が勝っていることに気づいた私は、いよいよ自分と向き合うしかなくなりました。私が求めていたのは、「オープンリレーションシップ」ではなく「シングルでいること」だったのです。

たしかに、お互いに合意のうえで成り立つオープンリレーションシップは、モノガミーの良いところを持ちつつ私の性的な欲求を満たす、“理想的な関係”のように見えました。でも、私が実際に欲していたのは、自分がセックスしたい人として、そのことについて誰にもお伺いを立てる必要がないということでした。私にとってオープンリレーションシップは、“一時的な問題解決”でしかなかったのです。

オープンリレーションシップが向いていないケース

合意のうえでのノン・モノガミーが、世間でも広く知られるようになった昨今。

“パートナー以外とセックスしたい人にとっての万能薬”と見なす傾向が強まっていますが、これを「よくある誤解」だと警鐘を鳴らしているのは、ニューヨーク大学のザナ・ヴランガロヴァ教授です。

大手世論調査会社「YouGov」と、既婚者向けのマッチングサービス「アシュリー・マディソン」が共同で行った調査によると、アメリカ人の60%が他の人とのセックスを夢想し、ほぼ半数が「パートナーとのセックスにあまり満足していない」と答えています。

「多くの人がパートナー以外の人とのセックスを妄想したり望んだりしていますが、そう考えること自体は本質的に問題ではない」と話すのは、恋愛カウンセラーのエリザベス・シェフ博士。こうした願望を持つ人々の多くが、その解決策として合意のうえでのノン・モノガミーを求めるのは当然のことかもしれません。

「自分たちの関係に概ね満足しているカップルが、1対1というモノガミーな性質のみによって問題が起きているという場合には、性的なパートナーシップを他の人にも“開く”ことは、より解決策になりえるでしょう」(ヴランガロヴァ教授)

とはいえ、これは思っているほど簡単ではありません。

まず、健全なオープンリレーションシップを保つためには、コミュニケーションにとてつもない労力と精神的エネルギーが必要です。そして二人の関係の基盤が、岩のように堅いものである必要があります。崩れかけている関係を修復するためにノン・モノガミーを導入することは、良い解決策ではないことを覚えておきましょう。一時的には“うまく”いくかもしれませんが、長い目で見ると有害無益なのです。

「お互いを尊敬できなかったり、絶えずケンカをしていたり、どちらかが降参するようなかたちでしか問題が解決しなかったりするカップルは、オープンリレーションシップには向いていません。二人の問題は未解決のまま、複数のパートナーとの欲求のバランスをとるためのストレスが積み重なるだけなのです」(シェフ博士)

あくまでお互いの関係に満足しているうえで、性的な探求を深めたかったり、視野を広げたいという場合には、 オープンリレーションシップが機能する可能性があるということ。一方で、欲求が満たされていなことやその関係から逃げたいと考えているときに取り入れると「関係は崩壊してしまう」と、シェフ博士。

オープンリレーションシップを取り入れるべきかの判断基準

では、自分たちが問題にフタをして、別れを先延ばしにしているのではなく、適切な理由からオープンリレーションシップを取り入れようとしているのかどうかを見分けるには、どうするべきなのでしょうか。

二人の関係は、健全?

「モノガミーと関係のない理由で苦しんでいるカップルにとって、オープンリレーションシップは良い選択とは言えません」と、ヴランガロヴァ教授。

お互いへの愛情や信頼感の欠如、コミュニケーション不足、虐待的な言動やそれによる恨み、相手をコントロールするような行動、人生の目標が一致しない――などで悩んでいる場合には、オープンリレーションシップを取り入れることで解決できることはありません。

「これらの問題を解決するためにオープンリレーションシップという手段をとるカップルは、ほぼ必ず別れに向かっていくことになります。しかも、関係者を増やしたことから問題がより複雑になるため、嫌な別れになってしまうことも少なくありません」(ヴランガロヴァ教授)

まずは、あなたが二人の関係に求めているものをリストアップし、それぞれの項目における満足度を5段階で評価してみましょう。もしも「3」や、それ以下が多いようであれば、二人の関係が問題を抱えているという指標になるでしょう。

関係を修復する他の手段はない?

ノン・モノガミーに飛びつくカップルによる失敗の原因の多くは、「どうしてオープンリレーションシップに惹かれるのか、関係を“開く”ためのプロセスはどうするのかなどについて時間をかけて考えていないこと」だとケイト・バレストリエリ博士は言います。

オープンリレーションシップか別れるかを早急に決める必要はありませんし、選択肢は他にもあります。

「時期がくればオープンリレーションシップを取り入れることが解決になるかもしれないけれど、まだ他の人を入れる準備ができていないこともあります。その場合、お互いの性的な妄想について話し合い、セックスライフにそういったことを組み込んでいくことで性的な満足度を上げることもできるでしょう」(ヴランガロヴァ教授)

メリットとデメリットについて考える

また、オープンリレーションシップを取り入れることで得られるメリットが、デメリットやリスクを上回るかどうか考えることも重要です。

現実的にあなたとパートナーにとってどんな困難が起こりうるのか、そしてその時にどう解決するのか、そもそもそういう事態になることへの覚悟があるのかどうかを自問しましょう。 満足度よりも二人の関係が難しくなる危険性の方が高いのであれば、解決策を見直すべきでしょう。

双方が望んでいること?

「どちらか一方が、オープンリレーションシップを取り入れることを急かしたり、無理強いしたり、そうでなければ別れるなどと言って脅したりするのであれば、それは実際には合意には基づいていません。この場合は、計画倒れになる可能性が高いでしょう」(シェフ博士)

オープンリレーションシップは、健全な基盤を持ったカップルが「お互いの合意のもと」で取り組むもの。独りよがりになっていないか、今一度見直してみましょう。


※本記事は、Hearst Magazinesが所有するメディアの記事を翻訳したものです。元記事に関連する文化的背景や文脈を踏まえたうえで、補足を含む編集や構成の変更等を行う場合があります。
Translation:mayuko akimoto
COSMOPOLITAN US