性的な欲求不満は、誰でも感じることのある一般的な現象。その原因はセックスの回数やパートナーとの親密感以外にも、心身の変化によってさまざまな可能性が考えられるのだとか。

本記事では、欲求不満の原因やセルフチェックのポイント、解消法のアドバイスなどを、＜コスモポリタン アメリカ版＞よりご紹介。

性的欲求について知っておくべきことを、セックスおよび人間関係専門家のセラピストであるエミリー・ジャミア博士とと、性科学者でセクシュアルウェルネスを提供する「Lovers」の性問題専門家、マーラ・レニー・スチュワートさんが解説します。

【INDEX】

「欲求不満」の状態とは？

大抵の場合、セックスと“感情的な親密さ”は密接につながっているもの。そのため、性的欲求と実際の性的充足感のバランスが取れていない状態が「欲求不満」なのだそう。

「セックスは自己表現の機会であり、感情的なつながりと身体的な悦びを得られる機会でもあります。欲求不満を感じる人の多くは、孤独や相手との距離を感じると語っています」とジャミア博士。

「欲求不満はすべてのジェンダーに生じる可能性がありますが、どのような形で表れるかは人によって異なります。一般的に、異性愛者の女性が抱える欲求不満は、パートナーが自分を満足させる術を知らなかったり、冒険的なセックスに消極的なことが原因です」
「また、男性器を持つ人の場合には、欲求不満の症状として『ブルーボールズ現象（性的興奮を感じながらもそれを解放できず、睾丸に一時的な不快感や鈍い痛みなどを感じる症状）』が挙げられますが、これは“物理的な状態”であり、より“感情的な状態”を表す欲求不満とは少し異なります」

欲求不満の原因

欲求不満を引き起こす要因もさまざまのため、原因を一つに特定することはできないのだそう。一方で、「一般的には恋愛関係にある二人の性的欲求に差があることが原因です」と、ジャミア博士は説明します。

カップルのうちどちらかの性欲が突出して強い場合、結果としてその人が欲求不満を感じる可能性があるんだそう。というのも、もう1人は相手ほど頻繁にセックスをしたいと思っておらず、欲望に差が生じてしまうため。

逆に、毎日セックスをしていたとしても、行為の中でしてほしいこと、してほしくないことをパートナーが学んでいない、あるいは学ぼうとしない場合にも、欲求不満を感じやすくなる可能性があるとのこと。

「性的な相性は重要な要素です。私たちの行った複数の研究で、性的満足感と恋愛関係の満足感の間には強いつながりがあることが示唆されています」

とはいえ、欲求不満はカップルだけではなく、シングルの人にも起こり得るそう。

「精神衛生の専門家によれば、パンデミックの間は以前のように頻繁にデートやセックスをすることができないため、シングルの人々の間で欲求不満が増加したそうです」

ただし、欲求不満にはセックスという行為だけでなく、その裏にある親密さも関係しているというのは重要なポイント。

「セルフプレジャーで身体的な満足感を満たすことはできますが、感情的な満足感を得られるかはまた別の話ということになります」

欲求不満のセルフチェック

性的欲求不満と日常のフラストレーションは、同じような形で現れることがあるそう。たとえば、渋滞に巻き込まれたとき、仕事に遅刻したとき、イライラが募ったときに感じる感情は、性的欲求不満でも感じる典型例。

「欲求不満はさまざまな形で現れます。たとえば、次のような悩みを感じる場合は欲求不満のサインかもしれません」とスチュアートさん。

  • 人生や恋愛関係において、セックスや親密さが足りないと感じるようになった
  • 何かが足りないと感じる（特に、実際にセックスをしているとき）
  • パートナーとのセックスやセルフプレジャーであまり快感を覚えない
  • セックスをしても以前のようにオーガズムを感じなくなった
  • セックスのことで頭がいっぱいになる（特に、別のことを考えなければならない場面で）
  • 集中力に欠け、それによって日常生活に支障をきたす
  • パートナーとの間に感情的・物理的な距離を感じる
  • 些細なことでパートナーに腹が立つ
  • セックスが自然な流れで始まるより、誘う方がより多くなっている。またはまったく誘わなくなっている
  • パートナーとのセックスを拒否することがより多くなっている。またはセックスをしても満足感が得られないため、セックスをしようとしなくなっている
  • パートナーがあなたを性的に満足させる方法を学ぼうとしない
「欲求不満を感じる人の多くは、全体的に倦怠感を覚えているようです。人生に意義を感じられるかどうかや、幸福感、心身の健康、睡眠の質、人間関係の満足度は、欲求不満と強い関連性があることが研究で示されています。こうしたことで悩んでいる場合も、欲求不満が原因かもしれません」

欲求不満が身体に与える影響

欲求不満は誰にとっても気持ちの良い状態ではありません。

スチュアートさんによれば、この状態は性的欲求が満たされていないというだけでなく、身体の健康にも影響し、多数の症状につながる可能性があるとのこと。

「欲求不満に陥ると、ストレスホルモンとも呼ばれるコルチゾールが分泌され、疲労、いらいら、不安、うつ、高血圧、便秘、また不感症や勃起不全、生殖能力への影響といった性機能障害を引き起こす場合があります。特に恋人に対して、精神的苦痛を感じるかもしれません」

欲求不満の解消法

欲求不満には、長期的あるいは短期的な解消法が多数あります。ここからは、専門家たちがおすすめする欲求不満の解消法を紹介していきます。

あなたが欲求不満を感じている場合

「第一に、相手にどう気持ちを伝えればいいかを考えることが重要です」と、ジャミア博士は強調。

「コミュニケーションは大切ですが、自分と比較して相手の欲求が低いことを責めるのはよくありません。お互いにとってプラスにもなりません。気をつけてほしいのは、相手に対して『もっと感情的につながり、親密さを高めたい』といった伝え方をすること。身体的な快感を強調することで、相手は自分が性的な物体のように感じることがあるからです」

短期的には、溜め込んだ性的エネルギーを運動、セルフプレジャー、または身体を使って何か楽しめる行動で発散するといいでしょう、とスチュワートさんは推奨。これによってエンドルフィンが分泌され、パートナーとの会話や交流がより心地よく、明瞭に感じられるのだとか。

「話をするときは、心を開いて相手を理解しようとすること。心からの会話は『自分は愛されている』という安心感を相手に与えられます。これにより、2人が同じ考えを抱けるように協力することが可能になります」

パートナーが欲求不満を感じている場合

パートナーが欲求不満を感じていると分かると、つい自分を責めてしまいがち。悪循環に陥る前に、一呼吸置きましょう。

「うろたえるのではなく、まずは欲求不満に陥ったパートナーの意見に積極的に耳を傾け、気持ちに寄り添うようにしてみましょう」と、ジャミア博士はアドバイスしています。

「性的欲求が満たされないために相手との距離を感じるというのは頼りなくも感じるかもしれませんが、カップルは感情や友情と同じくらい、性的な面も大切にできるように協力する必要があります」

一般的には週や月のセックスの回数を決めておくことが解決策となりえます。ただし、これはどのカップルにも有効なわけではありません。

「まずは何が原因で性欲に差が生じているかをパートナー同士で理解する必要があります。原因は、性欲の高いパートナーがリラックスするため、あるいは関係性を証明するために過度にセックスに頼っているためでしょうか？　あるいは、性欲の低いパートナーはストレスが多くてリラックスできず、その気になれないためでしょうか？　何がお互いの性的欲求に影響しているかを理解して協力し合うことが、差を最大限埋めるための有効な方法です」

状況を改善するには、セックスの頻度よりも質を高めることに専念するといいでしょう。なぜなら、性的満足感は一般的に、頻度よりもその経験をどれだけ楽しめたかということと関係しているから。

この点で、セックスセラピストに頼るという選択肢も。適切なトレーニングを受けた専門家は、お互いの性的な欲望と最終的なゴールを一致させる一助となります。

「もしセラピスト以外の選択肢を探しているなら、プレジャーマッピング（自分の体で快感を覚える部分を理解するプロセス）を試したり、さまざまなセックストイを使ったりして、性的体験の充実を図ると良いでしょう。これによって、欲求不満を抱えるパートナーが望んでいると思われる感情的なつながりに専念しやすくなります」

さらにスチュアートさんは次のように言っています。

「何より大切なのは、自分自身を思いやることです。欲求不満はよくあることで、誰にでも起こり得ます。たとえば、数年にわたるコロナ禍のストレスや燃え尽き症候群、パートナーとの関係性の変化などにより身体が影響を受け、これまでとは違う何かを求めるようになっているだけとも考えられます。私たちはただ、そうした変化に自分たちを適応させていけばいいのです」

※この翻訳は、抄訳です。
Translation：Mari Watanabe（Office Miyazaki Inc.）
COSMOPOLITAN US