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日本で急増中の「梅毒」とは?過去10年で12倍になった性感染症を専門医が解説

放置は危ない?自然治癒はしない?感染経路や症状や検査、予防策などを深掘り!

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日本で急増中の「梅毒」とは?過去10年で12倍になった性感染症を専門医が解説
ADragan//Getty Images

性感染症のなかでも現在日本で猛威をふるっているという「梅毒」。今回は、 国内の現状から病気の症状、感染経路や予防策までを、プライベートケアクリニック東京 新宿院の院長で性感染症の専門医、尾上泰彦先生に解説していただいた。新しいパートナーや出会ったばかりの人と性交渉をする前に、確認しよう。

【INDEX】

  • 国内の梅毒の現状
  • 梅毒の症状
  • 感染経路
  • 進行すると現れる症状
  • 受診すべき医療機関は?
  • 検査方法
  • 治療法
  • 梅毒の歴史
  • その他、マークしておきたい性感染症
  • 予防のためにできること
  • まとめ
  • 尾上泰彦先生
  • 日本で急増中の「梅毒」とは?過去10年で12倍になった性感染症を専門医が解説
    Getty Images

    国内の梅毒の現状

    「複数ある性感染症(STD)のなかでも、近年急増しているのが梅毒です。国立感染症研究所が公表したデータによると、2023年の全国の累積報告数が1万3251人に達し、1960年以降で最多となりました」

    「患者数が全国で最も多い東京都では、2012年からの10年間で約12倍に増えています。女性は10代と20代、男性は30代以上に罹患者が多い傾向です」

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    CHRISTOPH BURGSTEDT/SCIENCE PHOTO LIBRARY//Getty Images

    梅毒の症状

    「梅毒にかかると、男性の場合は陰茎や亀頭にしこりやブツブツ、できもの、体や手のひらに赤いブツブツやあざのようなもの、口の中にできものや口内炎のような症状が現れます。しかし、罹患者の70%以上に症状がないことも特徴のひとつです」

    「さらに、梅毒の母体から胎児への感染リスクが60~80%と非常に高く、“先天梅毒”を引き起こすだけでなく、最悪の場合、流産や死産となる可能性もあります。感染後、約1週間から13週間の潜伏期間を経て発症するので、気になる症状があれば不安行為があってから6週間以内を目安に、病院にかかりましょう」

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    Liliya Dzyba//Getty Images

    感染経路

    「主に性行為やオーラルセックスを含む類似行為を通して、皮膚や粘膜の小さな傷から細菌が侵入し、感染します。なお、空気感染や飛沫感染はありません」

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    Anastasia Malachi//Getty Images

    進行すると現れる症状

    「性器や肛門、口など、感染した箇所にできるしこりや潰瘍などの病変は放置しても3~12週間で消失します。これによって治ったと勘違いしてしまう人も多いですが、梅毒にはいくつかのステージがあり、治療なしに自然治癒することはありません。梅毒患者数が日本の100倍を超えるといわれる中国では、死亡事例も報告されています」

    放置してしまうとどうなるのか。東京都保険医療局による梅毒のステージごとの症状がこちら。

    第1期
    感染後約3週間で感染した場所に、できもの、しこり、ただれなどができる。

    第2期
    一度症状が消えた後、1~3カ月が経つと全身にブツブツができる。しかし、これもまた数週間~数カ月で消失。

    潜伏梅毒
    その後は症状がないまま何年も経過することがあるが、皮膚や内臓で病気は静かに進行する。

    後期梅毒
    数年~数10年後に、鼻の欠損や心臓、血管、神経の異常が現れることもある。

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    Namthip Muanthongthae//Getty Images

    受診すべき医療機関は?

    「性感染症を専門とするクリニックがおすすめですが、女性であれば婦人科、男性であれば泌尿器科、皮膚症状があれば皮膚科など、適宜医療機関を受診してください。また、特定のパートナーがいる場合は一緒に受診することが望ましいです」

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    検査方法

    「皮膚や粘膜などの病変部位から浸出液を採取してPCRなどで病原体を検出する方法と、採血検査で行う梅毒抗体検査があります。しかし、PCR陰性でも梅毒を否定できないこともあり、一般的には採血検査で判断します」

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    治療法

    「国内では、ペニシリン系の抗菌薬の内服治療が一般的です。 2021年9月には、梅毒の世界的な標準治療薬であるベンジルペニシリンベンザチン筋注製剤『ステイルズ🄬』の国内での製造販売が承認されました」。尾上先生のプライベートケアクリニック東京でも2022年5月から投与を開始しているそう。

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    duncan1890//Getty Images

    梅毒の歴史

    「クリストファー・コロンブスが1492年に新大陸の発見とともに“原住民の風土病”をヨーロッパに持ち帰ったのがはじまりとされています」

    「“悪魔のお土産”と呼ばれたこの病は、大航海時代の波に乗って世界へと広がり、1512年には日本にもやってきました。歴史的な著名人にも梅毒の罹患者は多く、マリー・アントワネットやシューベルトも患っていたといわれています」

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    Aleksei Naumov//Getty Images

    その他、マークしておきたい性感染症

    ここでは、梅毒の他にも注意しておきたい性感染症と症状をチェックしておこう。

    ・性器クラミジア感染症

      女性の場合、おりものが匂ったり、量が多かったり、喉の痛みがあることも。自覚症状がない場合も多く気づきにくいが、子宮頸管炎や不妊などを引き起こす可能性があるので注意が必要。男性は排尿痛や尿道の不快感、かゆみなどの自覚症状がある。

      ・ 淋菌感染症

      女性はおりものの増加や不正出血などの症状があるが、無症状のことも多い。男性は激しい排尿痛のほか、尿道からの分泌物や不快感、かゆみなどを感じることがある。オーラルセックスによるのどへの感染は症状が出にくいため、気づかないまま他人に感染させてしまうことも。オーラルセックスのときもコンドームを装着することで予防できる。

      ・ 性器ヘルペスウイルス感染症

      初めて感染したときは性器に強い痛みやかゆみを感じるが、一度感染すると症状が治まっても体内に潜伏し、ウイルスを排除することはできない。治った後も、免疫力が低下すると症状があらわれることがあるが、症状は穏やか。再発を抑える治療はあるので、お悩みの人は医療機関に相談しよう。

      ・ 尖圭(せんけい)コンジローマ

      性器や肛門周辺にできるイボで、痛みやかゆみはなく、ニワトリのトサカのような特徴的な形をしている。真珠様丘疹(しんじゅようしょうきゅうしん)やフォアダイスといった病気ではないイボもあるので、気になる人は医療機関へ。

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      予防のためにできること

      「コンドームは性感染症の予防に有効です。しかし、梅毒の場合はコンドームが覆われない部分の皮膚からも感染する可能性があるため、コンドームによって100%予防できるとは言い切れません。また、HPVワクチンの接種は男女ともに推奨します。男性も接種することで、尖圭(せんけい)コンジローマを防ぐ効果が期待できます」

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      まとめ

      「心当たりのある不安な行為があった場合はもちろん、新しいパートナーができたとき、結婚する前、子どもを作る前など、人生の節目で検査することをおすすめします」

      予防と定期検査で、パートナーとの健康的で安心できるセックスライフを送ろう。

      日本で急増中の性感染症「梅毒」とは?症状や検査、予防策などを専門医が解説

      今回お話を聞いたのは、尾上泰彦先生

      泌尿器科医・医学博士。1944年生まれ。日本大学医学部卒業後、同医学部専任講師を経て宮本町中央診療所を開設。2017年5月からはプライベートケアクリニック東京 新宿院 院長として長年積み重ねてきた性感染症の専門医として診療にあたる。

      プライベートケアクリニック東京

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      性感染症

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