性器クラミジア感染症は、世界的によく見られる性感染症(STIs)のひとつ。国立感染症研究所によれば、日本で最も発生数の多い性感染症なんだそう。性別を問わずに感染するものの、特に若年層の女性に多く、また感染した際のリスクも高いと言われています。

治療法が確立されているため、早い段階で治療ができれば問題ないことが多いものの、男女を問わず自覚症状がないケースもあり、放置している間に重篤な合併症を引き起こす可能性も…。

そこで本記事では、クラミジアの原因と主な症状、治療法や予防のために大切なことを<ネット・ドクター>からお届けします。

監修:アッバス・カナニさん

ヘルスケアサービスと処方薬の販売を行う「Chemist Clinic」の薬剤師


【INDEX】


クラミジアとは?

クラミジア感染症は、「クラミジア・トラコマティス」という細菌が原因で引き起こされるもの。

特に25歳未満の若年層の間で、この病気が蔓延している傾向があるとのこと。その理由は、自分がクラミジアに感染していることに気づかずに、知らず知らずのうちにパートナーにうつしてしまい、その結果、感染が広がってしまうから。

男性の場合は睾丸、女性は子宮頸部、子宮、卵巣および卵管まで感染が広がる可能性が…。また、直腸、眼および鼻の奥への感染は、男女ともに見られるケースです。

女性に見られる兆候と症状

クラミジアに感染すると1〜3週間ほどで症状があらわれますが、症状が出るまでに数カ月かかる人や、体の他の部分に感染が広がってから症状が出る場合もあります。

感染しても発症はしない人が多いなか、10人のうち3人には、次のような症状が出ることがあります。

  • 排尿時の痛み
  • おりもの
  • 下腹部および骨盤の痛み
  • 性交時の痛み
  • 性交時の出血
  • 膣の出血

男性に見られる兆候と症状

男性がクラミジアに感染すると、女性よりも症状が出やすいと言われています。クラミジアに感染した約半数の男性に、次のような症状が確認されているとのこと。

  • 排尿時の痛み
  • ペニスからの分泌物
  • 尿道周辺の灼熱感やかゆみ
  • 睾丸が腫れたりやわらかくなったりする

クラミジアの原因

クラミジアは感染している人との無防備な性交や、主に生殖器から出た分泌液を介して伝染します。

  • 分泌液を飲む、あるいは分泌液が眼に付着する
  • 膣、肛門への挿入、オーラルセックス
  • 単なる性器間の密接な接触
  • セックストイの共有

ただし、トイレ、スイミングプール、タオルや衣類を共有しても、クラミジアに感染することはありません。というのも、感染症の原因菌は人体の外では長時間生存することができず、生殖器から出る分泌液が人体の組織に触れた時に伝染すると考えられているからだそう。

hands holding
Tara Moore//Getty Images

クラミジアの診断

クラミジアに感染しているかどうか明らかにするには、検査を受ける必要があります。検査は短時間で済むもので、痛みもありません。

「尿検査で、クラミジア・トラコマティス菌の有無を分析します。検査は泌尿器科や婦人科のあるクリニックで受けられるほか、イギリスでは検査キットを利用したオンライン診療などの方も。通常、数日ほどで結果がわかりますよ」

尿検査の際には、細菌の濃度がもっとも強い、起床してすぐの尿を使うことが望ましいそう。また、女性の場合は膣スワブを用いた検査方法もあります。

クラミジアによる合併症

クラミジアは治療が遅れると、重大な合併症を引き起こすおそれがあります。たとえば女性の場合、骨盤炎症性疾患(PID)を発症するリスクも。

「骨盤炎症性疾患は生殖器系に影響をおよぼすことがあり、妊娠合併症を引き起こすこともあります。男性の場合、クラミジアの治療をしないままにしておくと、菌が睾丸に達して炎症をおこし、痛みをともなう場合があるでしょう。これが不妊症につながるおそれもあるのです」
「また、男女ともに関節や眼、尿道に炎症を起こす反応性関節炎を引き起こす原因にもなり得るでしょう」

治療のアドバイス

カナニさんによれば、クラミジア感染症は短期間の抗生物質投与での治療が可能。

「クラミジアの治療に用いられる抗生物質は、治療成功率は97%と非常に高い効果があります。ただし、抗生物質は正しい方法で服用し、用量を守ることが大切です」

イギリスでクラミジア治療に使用される抗生物質は、主に次の2種類。

ドキシサイクリン

ドキシサイクリンは7日間にわたり、1日2回服用するもの。この薬はクラミジアの治療に100%効果があるという研究結果もあるのだそう。

アジスロマイシン

こちらは1回限りの服用で済む治療薬。成功率は97%という研究結果。またアジスロマイシンはドキシサイクリンより副作用の症状が軽く、妊娠中でも使用できる可能性があるもの。

予防のためにできること

STI(性感染症)は、誰でも経験する可能性があるもの。でも、できるだけその可能性を低くするために次のような予防を心がけましょう。

  • 膣やアナルをつかったセックス、およびオーラルセックスには、コンドームのようなバリア法の避妊を行う
  • 定期的、また、セックスパートナーが変わるごとにSTI検査を受ける
  • セックストイを共有する場合は、使用する前に徹底的に洗浄。セックストイを使用する際にも新しいコンドームをつけること
  • クラミジアの治療中はパートナーと性的接触は持たない。抗生物質の種類によっては服用後もしばらく性的接触を持ってはいけない場合も。
  • 25歳以下で性的にアクティブな人は、毎年あるいはセックスパートナーが変わるたびにクラミジアの検査を受けるのが望ましい

接触者の追跡

感染しているかもしれないと思ったら、できるだけ速やかに検査を受けることが大切です。検査で陽性となった場合、治療の必要があると同時に、それまでに性的関係を持った人たちに知らせる必要があります。また、自分が感染の疑いがある場合も、速やかに検査を受けましょう。

自分の体のため、そしてパートナーや過去につきあった大切な人のためにも、不安に思うことがあったら迷わず検査を。

※この翻訳は、抄訳です。

Translation: 西山佑(Office Miyazaki Inc.)

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