性的な接触によって感染する、性感染症(性病)。周りに感染している人増えるにつれて、自分が感染するリスクも高まります。しかし性感染症は防ぐことができ、治療もあり、検査もすぐに受けられるもの。

もしかかっていても、どう対応するべきかを知っていれば、焦る必要はありません。性感染症の前兆や検査を受けるべき適切なタイミングなど、知っておくべき情報を専門家が本記事で解説します。

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「挿入しなければ大丈夫」は間違い!

生理などの健康情報サービスを提供するフローが発表した女性の健康に関する調査によれば、4人に1人のイギリス人女性は性感染症がどのような経路で感染するのかを知らず、18〜24歳の7%はポルノから性の健康に関する情報を学んでいるそう。

この現状を危惧しているのは、性感染症テストキットサービス「アイプレイセーフ」のコンテンツ責任者のホープ・フリンさん。

「TikTokやInstagramなどのSNSは気軽に投稿できるため、性感染症やセックスに関する情報を誰でも簡単に発信できてしまいます。一方で、性的コンテンツに制限があることで、資格のあるエキスパートたちの声が届きにくくなっているのも現状。インターネット上には間違った情報も多いので注意が必要です」

同サービスの共同創業者である、ビアンカ・ダンさんも以下のとおり。

「複数の人と性的な関係を持っていなければ大丈夫、と考えている人もいるようですが、これは間違っています。確かに、多くの性感染症は感染者との性的な接触で感染しますが、予想外の経路で感染することもあるのです」

また、“挿入”を伴わない性行為やオーラルセックスであれば感染しないと考える方もいますが、オーラルセックス、アナル(肛門)セックス、ヴァジナル(ヴァギナ)セックス、キスのすべてで性病は感染する可能性があります

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Grace Cary//Getty Images

そして、性器イボの原因となるウイルス(単純ヘルペスウイルス)は、セックスを全くしなくても、肌と肌が触れるだけで感染してしまうことも。セックストイ・ブランドをもつサマンサ・マーシャルさんは、「セックスの形はもっと多様で、性感染症の感染経路もそれに合わせて多様なもの」だと指摘。

「社会では“最後まで”してこそセックスと考える風潮があり、肛門やヴァギナへの挿入がないとセックスとみなされないこともあるようですが、これは大きな間違いです。特に、クィアの人々にとってこの定義は混乱を招きます」
「オーラルセックス、フィンガリング、セックストイ、シザリング(足を絡ませるなどして、性器をこすりあわせるもの)からも、性感染症のリスクがあることを忘れないようにしましょう」

コンドームをしていても検査は必要?

コンドームなど、バリアタイプ(子宮内への精子の進入を物理的に阻止する方法)で避妊をしている場合、性感染症にかかるリスクはとても低くなっています。感染予防としては最適な選択ですが、それでもコンドームなどの予防効果は100%ではないのです。

TikTokで健康に関する情報を発信するカラン・ラジャン医師は、そもそも「予防はひとりだけが担うものではない」と指摘。

「コンドームは、最低限の努力。コンドームは、歯磨き粉くらい簡単に購入できる唯一の避妊・感染予防方法です」

もちろん、ラテックスアレルギーに対応した製品も存在しているとはいえ、全員がコンドームを使えるわけではありません。しかし、ピルや殺精子剤、注射などの避妊方法では、性感染症の予防はできないのです

もしバリアタイプの避妊を使用しないのであれば、必ずお互いの健康状態などについてのコミュニケーションに一層気を配るようにしましょう。そして、バリアタイプの避妊方法を使っていたとしても、定期的に検査をするようにしましょう。

「性感染症に対して受け身にならず、攻めの姿勢でいることが大事。定期的な検査は、新たな感染を防ぐことにつながります。6カ月に1回は検査すること。もし複数のパートナーがいる場合は頻度を上げましょう。早めに感染を発見し、早期治療できるのはもちろん、別の人にうつしてしまうリスクも減ります(ダンさん)」

もしバリアタイプの予防をしていなかったり、複数の人とセックスをしている場合は、検査を頻繁にしておいて損はないということです。しかし、性感染症は、感染後すぐに検出できるようになるわけではないので、毎週検査をする必要はあまりないそうです。

検査に行くベストなタイミングは?

フリンさんは、 「ソーシャルメディアで拡散されている情報には誤解も多い」と言います。特に、ウィンドウ期間(検査で性病が検知可能になるまでの期間)について知らない人が多いのだそう。

セックスをした翌日から、効果的な検査ができると多くの人が思ってしまっているのだとか。しかし、それは間違い。たとえば、クラミジアは感染から約2週間経たないと検査で陽性にならないといわれています。

ダンさんによる「潜伏期間とウィンドウ期間の違い」は、以下のとおり。

  • 潜伏期間:感染から発症までの期間。感染症によってその期間も変わるほか、時には症状に気づかないような感染症もあります
  • ウィンドウ期間:検査で感染が検知可能になるまでの期間
「(ウィンドウ期間によって)HIV陽性の人と金曜日にセックスをして、月曜日に検査をしても感染を検知することはできません。HIVはウィンドウ期間が3カ月になることもあります。ウィンドウ期間に検査をした場合、感染していても陰性となっている場合もあるので、再検査をしなければいけません。ほかの多くの性感染症は、数週間で検知可能です」

IAACによると、検査で陽性がどうかを知るには「HIVに対する抗体ができてから検査すること」が大事なよう。そしてその抗体ができるのに、個人差があるものの約3週間から2カ月は必要。感染機会から3~6カ月後の検査で、ほとんどすべてのHIV感染は検出できると書かれています

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Catherine Falls Commercial//Getty Images

たいていの場合、医師は感染をしたと考えられるセックスから3週間が経過してから検査をすることを推奨しています。

一方で、たとえばコンドームが破れたり、ステルシング被害(相手の同意を取らず意図的にコンドームをセックス中にとる行為)にあったり、そのほかの性暴力を受けた場合などは、すぐにクリニックに連絡をして専門家の助言にしたがってください。

検査の流れ・種類

検査方法にはいくつか種類がありますが、大体の場合は、検査に使うものは3種類の体液に分けられます。

  1. 分泌物
  2. 血液
  3. 尿

一般的な流れはまずクリニックに着いたら、個人情報や日ごろの性生活についての質問についてのフォームの記入。その後、医療従事者と悩みや気になることを話します。もし、ルーティーン的に検査を受けていてる場合は予約の際にそれを伝えるのも良いでしょう。

そして、いよいよ検査に。コップにおしっこをする尿検査、ペニスやヴァギナの分泌物を綿棒でとりバクテリアを見る検査、血液検査などを行います。基本的に、痛みが生じるのは注射を使う血液検査です。

採取したサンプルは、ラボに送られます。クリニックではほかにも、身体診察もする場合も。これは断ることもできますが、問題を早期に発見するのに役立つと考えられているそう。

肌や性器の診察の際、患者の安全と診察の透明性のため、医師や看護師以外にも付き添い人を部屋によぶ可能性もあります。また痛みがあるかどうかを診るため、該当の箇所を押したり、その他の症状に関する質問を更に聞くことも

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M Suleman khan / 500px//Getty Images

また、クリニックに通わずに自宅で使える検査キットもあります。これらは種類によって、クラミジアやリン病、HIV(I抗体、II抗体、p24抗原)、梅毒、B型肝炎、C型肝炎などに対応したものがあるのだとか。

しかし、炎症を引き起こすことで知られる性器のマイコプラズマやウレアプラズマ、泡状で強い刺激臭を伴うおりものや激しいかゆみを生む腟トリコモナスなどは、簡易的な検査キットでは検知できないので注意が必要です。

性病検査を受けると決めたら...

性感染症の検査を受けると決めたら、近くのクリニックのウェブサイトで予約をするか電話をしましょう。必要な検査の種類なども変わってくるので、受ける理由などはできるだけクリアに。症状をフォームで伝えることが難しい場合は、電話がおすすめです。

もし定期検査を受ける場合は、検査キットを注文するのも良いかもしれません。しかし、症状があまりでない性病もあるので、症状がないからといって感染していないわけではありません。

「性感染症のそれぞれの症状を知っておくことで、早期発見ができる」とダンさん。

「排尿時の痛み、性器からの異常な分泌物、性器や口周りのできものなどに気づいたらすぐに検査、治療するようにしましょう」
「すでに症状が出ている場合は、クリニックを予約する際に合わせて伝えるように。そうすることで、最適な窓口・科に案内されるはずです」
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AlxeyPnferov//Getty Images

重要なのは「ほかの人にうつさないこと」

性感染症ときくと、いまだ「かかると恥ずかしいもの」だと考える人が実際にたくさんいるとマーシャルさんは言います。そしてそれが、治療が必要な人が検査から遠ざかる要因になってしまっているとのこと。

「性感染症をタブー視することはやめましょう。この文化が、検査を避けることやパートナーに自分が陽性だと伝えずらくなることにつながります」

同じくラジャン医師も、「安全第一であるべき」と主張。決して珍しいことではないので、性感染症がまん延する前に検査を定期的にするべきだとアドバイスを送ります。そしてダンさんも。

「陽性でも、落ち込まないでください。重要なのは、ほかの人にうつさないようにセックスをお休みすること。そして、すぐに治療を始めることです」

※本記事は、Hearst Magazinesが所有するメディアの記事を翻訳したものです。元記事に関連する文化的背景や文脈を踏まえたうえで、補足を含む編集や構成の変更等を行う場合があります。
Translation:佐立武士
COSMOPOLITAN UK