イギリスのリズ・トラス首相が、就任からわずか45日で辞任するというニュースが、世界を驚かせています。

数日前から噂されていたこの劇的な展開は、トラス政権が英国内の金融市場を低迷させ、経済政策の多くを撤回し、与党保守党に対する国民の信頼を失落させるなど、波乱に満ちた在任期間に続くかたちで起こりました。

トラス首相は、現地時間10月20日の午後2時過ぎ、ダウニング街10番地の首相官邸前でスピーチし、辞任を表明。

まず「私は、経済的にも国際的にも極めて不安定な時期に就任しました」と切り出しました。そして、低い税率と高い経済成長についてのビジョンに触れ、「ですが、このような状況では、保守党から選出された自分の任務を遂行できないと認識しています。そのため、私は国王陛下に保守党の党首を辞任するとお伝えしました」と述べました。

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Liz Truss stands down as UK prime minister
Liz Truss stands down as UK prime minister thumnail
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トラス首相はこの日の朝、党首選を監督する議会グループ「1922年委員会(1922 Committee)」のグレアム・ブレイディ委員長と会談し、次のように話しています。

「我々は、1週間以内に党首選を終えると合意しました。これにより、我々は財政計画を引き続き実現し、我が国の経済的安定と国家安全保障を維持します。後任が決まるまでは、私は首相として留任します」

保守党は、今年の夏のボリス・ジョンソン前首相の失脚劇と、その後トラス氏が勝利を収めた党首選、そしてトラス首相の辞任が続き、混迷を極めています。

この数週間で総選挙を求める声は高まっており、トラス首相の辞任を受け、野党労働党の党首キア・スターマーが再び語気を強め、保守党にはもはや政権を担う権限がないと表明。

labour leader keir starmer addresses the tuc conference
Chris J Ratcliffe//Getty Images
英最大野党・労働党の党首キア・スターマー氏

彼は、「過去12年間にわたる保守党の失敗を経て、国民はこの回転ドアのような混乱よりも、はるかに良い状況に置かれる権利がある」とし、保守党の政策について次のように発言。

「ここ数年、保守党は記録的に高い税率を設定し、我々の制度を破壊し、“生活費の危機”を生み出した。今、保守党は経済をひどく破壊し、国民は住宅ローンで毎月500ポンドの追加負担を強いられている。保守党が与えたダメージは、修復するのに何年もかかるだろう」

また最近の世論調査では、もし総選挙が行われた場合、労働党が圧勝するとみられています。

今のところ、保守党員は1週間以内に新しい党首を選出するもようです。誰が候補に挙がっているのかは不明ながら、党首選でトラス首相の最大のライバルだったリシ・スナック氏が有力候補の1人として挙がっています。また先週、トラス首相がクワジ・クワーテング氏を解任したのち財務相に就任したジェレミー・ハント氏は、出馬しない意向を示しました。今後の動きに注目です。

Translation: Masayo Fukaya

From: Harper's BAZAAR JP