2010年に「地中海式ダイエット」がユネスコ世界無形文化遺産に登録されたことを皮切りに、一気にその健康効果が日本を含む世界中で注目され始めたオリーブオイル。
10年以上経った今でも健康的なオイルとして親しまれ、調理用油の定番にもなりつつありますが、実際にオリーブオイルがどんなものでどんな健康効果があるか、知らないという方も多いのではないでしょうか?
そこで今回は、菜食栄養学の発信をしているYukaさんがオリーブオイルの種類から、含まれる栄養素や健康効果、選び方やおすすめの使い方、注意したほうがいいポイントなど、知っておきたい情報をまるっと解説します。
【INDEX】
オリーブオイルとは
「国際オリーブ協会」(International Olive Council:以下IOC)はオリーブオイルの定義を、「オリーブ樹の果実のみから採油されたもので、溶剤の使用、再エステル化等の処理を一切行わずに採油されたオイル。 他のいかなる種類のオイルも混入してはならない」としています。
ごま油や菜種油、綿実油など、他の一般的なオイルの多くは植物の種から搾油されていますが、オリーブオイルはオリーブの果実そのものを搾ってつくられたもの。いわばオリーブのフレッシュジュースのようなものです。
そのため、瑞々しくフルーティで香り高いことが特徴で、ワインのように産地や栽培方法、収穫時期、品種によって異なる個性を味わうことができます。
オリーブは地中海地方が原産とされており、オリーブの実をすり潰したり圧搾して取り出した油のオリーブオイルを使い始めたのも地中海地方が最初と言われ、ごま油と並んで、世界最古の歴史をもつ油です。
パスタやピザなど、イタリア料理が日本でメジャーになったことや、オリーブオイルをふんだんに使う「地中海式ダイエット」が健康食としてユネスコ世界無形文化遺産に登録されたこともあり、現在はオリーブオイルが広く日本の一般家庭にも普及しました。
オリーブオイルの種類
オリーブオイルというと、「エクストラバージンオリーブオイル」が一番よく耳にする種類だと思いますが、製法や品質によってピュアオリーブオイルや精製オリーブオイルなどと呼び方が変わります。
日本で一般的に食用として販売されているオリーブオイルは、「エキストラバージンオリーブオイル」と「ピュアオリーブオイル」に分けられます。
エキストラバージンオリーブオイル
精製することなく圧搾や遠心分離などの処理だけでできたオリーブオイルを「バージンオイル」と呼び、化学的な成分の分析による品質検査と人間の味覚と嗅覚で行う味と風味の評価の官能評価に基づいてチェックされ、その結果によりさらに呼び名が変わっていきます。
なかでも鮮度を示す指数の酸度が0.8%以下でかつ、その他成分や、味(フルーティさ、苦味、辛味)、風味などIOCの定めた基準をクリアしたものを「エキストラバージンオリーブオイル」と呼び、オリーブオイルの中で最も質の高いオイルとして取引されます。
ちなみに世界的には一般的にIOCによって定められた「エキストラバージンオリーブオイル」の規格を採用されていますが、日本ではこのIOCによる国際規格を採用せず、JAS(日本農林規格)による「酸価2.0(酸度1.0%)以下であること」という規定を採用。
そのため、日本でエキストラバージンオリーブオイルとして出回っているものが、海外ではエキストラバージンオイルよりも一つグレードの低い「ファインバージンオリーブオイル(酸度2.0%以下のバージンオイル)」として扱われることがあります。
精製オリーブオイル
一方、バージンオリーブオイルの基準に満たないオリーブオイル(主にバージンオイルの中でもランパンテと呼ばれるもの)を精製加工し、酸度を0.3%以下にしたもの「精製オリーブオイル」と呼びます。加工の段階でどうしても栄養素等の一部が雑味とともに取り除かれてしまうため、エキストラバージンオリーブオイルに比べると香りや健康性にかかわる微量成分は少なくなっています。
ピュアオリーブオイル
また、精製オリーブオイルとバージンオリーブオイルをブレンドし、酸度1.0%以下にしたものが「ピュアオリーブオイル」と呼ばれています。ピュアオリーブオイルは、国際オリーブ協会(IOC)の規定には無く、日本で作られた造語です。単に「オリーブオイル」と表示されることも多いです。
オリーブポマースオイル
もう一つ、一般的ではありませんが、日本で出回ることのあるオリーブオイルに「オリーブポマースオイル(オリーブポマスオイル)」があります。
バージンオイルを絞った後の搾りカス(オリーブポマース)にはまだ油分は残っているため、有機溶剤を使ってさらにオイル抽出することで作られたオイルがオリーブポマースオイルです。「オリーブ搾り粕オイル」や「二番搾り」と表記されることもあります。
先進国の多くでは、食用ではなく工業用のオイルとして活用にされますが、日本のJAS法では酸度が基準となるため、食用として認められています。オリーブオイルと表示されて量販店などで安く販売されていますが、オリーブオイルとは全く別物と考えるのがいいでしょう。
オリーブオイルに含まれる栄養素
よりヘルシーなオイルとして、健康志向の方や料理好きな方が好んで取り入れるオリーブオイルですが、健康にいいと言われる理由は、オリーブオイルに含まれる成分にあります。
オリーブオイルは、その名の通りオリーブの油なので、主成分は脂質。
脂質と一口に言っても、バターやラード、ココナッツオイルのような常温で固形の飽和脂肪酸と、オリーブオイルやごま油のような常温で液体の不飽和脂肪酸に分けられ、さらに不飽和脂肪酸はそこから一価不飽和脂肪酸(オメガ9系など)と多価不飽和脂肪酸(オメガ3系、オメガ6系など)と細かく分類されていきます。
オリーブオイルの主な脂質はオレイン酸と呼ばれるオメガ9系の脂肪酸。これらは、酸化しにくい油といわれています。体内でも作ることはできるので必須脂肪酸ではありませんが、それだけでは不足することもあるため食事による摂取が勧められています。
また、オリーブオイルには身体の中では生成できない、必須脂肪酸であるオメガ3系や6系のリノール酸やリノレン酸も含まれています。
さらに、オリーブオイルの中でも特に健康効果が高いとされるエキストラバージンオリーブオイルには、オリーブオイル独特の緑色を構成する成分のクロロフィルや、オリーブオイル特有の苦味・辛味成分のポリフェノール(オレオカンタールやオレウロペイン)、油に溶ける性質のあるビタミンのビタミンE、そしてβ-シトステロールなどの植物性のステロール類などが含まれています。
オリーブオイルの健康効果
エキストラバージンオリーブオイルなどの上質なオリーブオイルには、オレイン酸の他にもクロロフィルやポリフェノール、植物性ステロールなどのフィトケミカルや、ビタミン類が含まれており、他の調理油にはない高い健康効果があると言われています。
悪玉コレステロール値の減少
食生活の乱れやストレスによって増加しやすい悪玉コレステロール値ですが、悪玉コレステロール値が高い状態が続くと、血管が徐々にもろくなったり詰まりやすくなったりしてしまうほか、中性脂肪の蓄積を促してしまいます。
しかしオリーブオイルに豊富に含まれるオレイン酸は、体にいい影響をもたらす善玉コレステロール値は下げずに、悪玉コレステロール値のみ下げてくれる効果が。動脈硬化や心筋梗塞などの予防に効果的なほか、太りにくい身体作りに貢献してくれます。
抗酸化作用
日常生活の中の様々なストレスによって特に体内で増えやすい活性酸素は、細胞にダメージを与え、がんや生活習慣病、また老化の大きな原因となると言われています。
オリーブに多く含まれるオレイン酸には抗酸化作用といって、活性酸素の攻撃を抑制してくれる作用があるため、エイジングケア効果や美肌効果、がんや生活習慣病を予防する効果が期待されます。
腸内環境の改善
オリーブオイルの主成分であるオレイン酸には、腸内を刺激して排便を促すはたらきがあります。また、オリーブオイルには不溶性の植物繊維が含まれており、便の固さを調整する作用もあるため、お通じが良くなり便秘が解消されやすく、腸内環境の改善に繋がります。
腸内環境が整うと、胃腸の調子が整い便秘や下痢になりにくくなるのはもちのんのこと、免疫力が上がり風邪をひきにくくなったり、体脂肪を溜めにくくなり太りにくい体づくりにも繋がります。
オリーブオイルの選び方
売り場にいくと様々なオリーブオイルが並び、どれを選んだらいいのかわからないという方も多いと思います。ここからは、オリーブオイルを選ぶ際に目を向けたいポイントをご紹介します。
容器
オリーブオイルは光に弱く、蛍光灯の光でも酸化が進んでしまうと言われています。そのため、上質なオリーブオイルを選ぶなら、グリーンやブルーなどの濃い色の遮光性の高いボトルに入ったものを選ぶことをお勧めします。
種類
今回の記事のはじめの方でもお話ししましたが、オリーブオイルには色々な種類があります。
その中でも酸度が0.8%以下の「エキストラバージンオリーブオイル」を選ぶようにしましょう。酸度は数値が低いほど鮮度が良いことを示すほか、エキストラバージンオリーブオイルはオリーブオイルの最高級品のため、香りや風味が保証されています。
生産地の情報
商品により、生産地域や生産者名、収穫年月日、オーガニック認証などの記載がある場合もあります。情報がより明確なものほど、高品質である可能性が高い傾向にあるため、スーパーに並んでいるオリーブオイルを一つ一つ裏面をチェックし、生産者や生産地についての情報が細かく書かれているかチェックしてみるのがおすすめです。
価格
エキストラバージンオリーブオイルは本体とても手間のかかる希少なもののため、価格がほかに比べて高いものがほとんど。エキストラバージンオリーブオイルなのに、価格が安すぎる商品には十分に注意しましょう。
オリーブオイルの注意点
ここまででオリーブオイルの魅力や選び方についてお話ししてきましたが、どんなに新鮮なオリーブオイルを買っても、保存条件が悪ければ劣化していきますし、誤った使い方をすると健康効果薄れてしまうこともあります。
そこで、これからオリーブオイルの持つポテンシャルを最大限に生かすために、注意しておきたい点をまとめていきます。
保存方法
オリーブオイルは光(紫外線)と熱、酸素によって風味が変わってしまいます。そのため、熱くなりやすいコンロ周辺に置くのは避け、常温の暗所(シンク下や戸棚)に保管するようにしましょう。
光と熱、酸素を防ぐなら冷蔵庫が一番と思い、冷蔵庫で冷やして保存する方もいますが、オリーブオイルは冷やすと白く濁ったりすることがあり、使う前に温めて元に戻す必要が出てきてしまいます。温めて冷やしてを繰り返していると劣化の原因になりますので、常温保存で大丈夫です。
賞味期限
オリーブオイルは劣化しづらい油とは言われますが、封を空けた瞬間からどんどん酸化は進んでいきます。酸化をすると、嫌な臭いがしたり、泡立ちが消えないなどの変質が見られます。
オリーブオイルに限らず、酸化したオイルを摂取すると体内で活性酸素が発生しやすく身体にとって良いこととはいえません。オリーブオイルは、開封から約3カ月を目安に使い切ると◎。使っている途中でオイルが劣化しているなと感じたら、もったいないですが処分をして新しい油を使いましょう。
カロリー
オリーブオイルは他の油と変わらず、1gあたり約9kcalあります。
体に良い油だからといって、制限なく摂取しすぎるとカロリー過多にもなりかねません。いつもはバターを使っていたり、サラダ油を使っていたところを、オリーブオイルに置き換えるというような感じで、取り入れていくのがおすすめです。
オリーブオイルのおすすめレシピ
オリーブオイルは「加熱せずに、生で食べる方が良い」と聞いたことのある人も多いかもしれませんが、必ずしも生で食べないといけないというわけではありません。
生の方が風味や味がそのまましっかりと楽しめるのは事実ですが、すでにお伝えした通り、オリーブオイルの主成分のオレイン酸は熱に強く加熱しても損失が少ないですし、酸化したり体へのいい影響が少なくなってしまうというわけではありません。
オリーブオイルは生食から加熱調理まで幅広く使うことができ、イタリア料理だけでなく、醤油やだしの利いた和食にも合います。
サラダを食べるときにドレッシングとして使いたい場合は、オリーブオイル・酢・塩胡椒を合わせるだけでとても美味しくなりますし、オリーブオイル・酢・砂糖・醤油・人参・玉ねぎをブレンダーで混ぜると美味しいにんじん玉ねぎドレッシングが完成します。
また、キャベツと油揚げをオリーブオイルとお醤油で炒めるだけでご飯の進む一品が完成したり、揚げ油として使うといつもの揚げ物が少し香り高く華やかな印象になります。
他にも納豆や冷奴、お味噌汁にちょい足ししたり、いつもはマーガリンやバターを塗るパンにオリーブオイルと塩をつけて食べてみるのも普段とは少し違った風味になりおすすめです。
調理油の定番になりつつあるオリーブオイルですが、様々な健康効果があったり、栄養素が豊富に含まれていたり、色々な使い方ができるなど、魅力を再発見した方も多いのではないでしょうか。
生産方法や生産地、オリーブの種類によりかなり味わいが変わってくるので、次オリーブオイルを買われる際はいつも使っているものとは違うものを選び、どう違うかよく味わってみると面白いかもしれません。