最近、目にすることも増えてきたヴィーガン食。食の選択をするときにエシカル面、環境面、健康・美容面も考慮するポイントに取り入れられるようになった今、ヴィーガン食も選択肢の一つに仲間入りするようになってきました。
外食する時にヴィーガンオプションがあれば、それを注文するだけでヴィーガン食を楽しめるけれど、自分で食材を選び料理するとなると、わからないことだらけでなかなか取り入れられない…という方も多いはず。
本記事では、カナダで応用人間栄養学学士号を取得し、5年以上ヴィーガン生活を送っているYukaさんが、ヴィーガン食のはじめ方と、その押さえておきたいコツやポイントをご紹介!
ヴィーガンとは?
ヴィーガンとは、「動物たちを私たちにとっての資源としてみるのではなく、感情があり痛みを感じる生き物としてみなし、可能な限り彼らを搾取しない」という考え方に沿って生きている人や作られた商品などのこと。
ヴィーガンは「完全菜食主義」などと訳されてしまうこともありますが、食生活だけでなく、衣服や美容製品、家具、掃除用品など、私たちが生活する上で必要なものを買ったり利用したりする際に、「不必要な動物の搾取は避ける」という考えのもとに、それ買うか買わないか、使うか使わないかを選んでいくのが、ヴィーガンライフスタイルです。
たとえば、バッグを買うときに本革ではなくヴィーガンレザーのものにしたり、化粧水を買うときに動物実験をしていない製品を買ったり、デートに出かけるときに動物園ではなく映画館に出かけたり。
他にもたくさんの例がありますが、ヴィーガン生活ではこのように日々の選択を通し、動物を搾取することによって成り立っている産業ではなく、より良心的な産業をサポートすることで、不必要に苦しみ殺されていく動物たちの数を減らすことに貢献します。
ヴィーガン食とは?
ヴィーガン食とは、ヴィーガンの考え方に基づいた食事のこと。つまり、動物を搾取することで得ることのできる食材を取り入れない食事のことです。具体的にいうと、お肉、魚介類、卵、乳製品を初め、蜂蜜やゼラチン、鰹出汁や鶏がらスープなどを避けて食事をします。
ヴィーガン食がどんなものなのかを聞くと、「そんなにいろんなもの食べれないのはちょっと…」と感じる方も多いと思います。そこで、これからヴィーガン食を始める際のポイントをご紹介。きちんと知ることで、ヴィーガン食のハードルが下がるかもしれません。
ヴィーガン食を始めるポイント
まずはヴィーガン食を始める前提として伝えておきたいのは「私たちが住んでいる社会の基盤自体がヴィーガンではない」ということ。なので通常の生活をしながらいわゆる“100%ヴィーガン”な食生活をするというのはかなり難しいのが現状です。
そのため、自分の食事が「100%ヴィーガンかそうじゃないか」にこだわるよりも、自分のできることからはじめ、より自分にも周りにも思いやりのある選択をしていくのが、一番持続可能です。
やりやすいタイミングと頻度から始める
まだ菜食を取り入れたことがない方は、徐々に菜食を取り入れてみるのがおすすめ。週に1回だけや、朝食だけなど自分のやりやすいタイミングと頻度で取り入れてみましょう。
自炊から始める
他にも自炊の時だけで取り入れる方法もあります。外食や、友達や家族と食事をする時も菜食を貫くのは難しいかもしれませんが、自分で食材を買うところからコントロールできる時は菜食にトライしてみるのもいいかもしれません。
植物性のものに置き換えていく
そしてもう一つが、動物性の食材を少しづつ植物性のもので置き換えていくという方法。下記の代替食品の一例を参考にしながら、やりやすい方法で少しずつ取り入れてみてください!
- 肉
→大豆ミート、豆腐製品、きのこ、豆類、ナッツ・シード - 卵料理
→豆腐 - 焼き菓子で使う卵
→チアシード、フラックスシード、アクアファバ、マッシュしたバナナ - 牛乳
→植物性ミルク - ヨーグルト
→大豆ヨーグルト - チーズ
→植物性のチーズ - アイスやシャーベット
→豆乳アイスや冷凍フルーツ - バター
→ココナッツオイル、ヴィーガンバター、ピーナッツバター
始めるときの注意点
ここからは慣れない菜食をより快適に、不安要素をできるだけ減らして取り入れられるように、菜食を生活始める前に知っておきたい注意点について解説。
いきなり完全菜食に切り替えない
まずは、いきなり完全菜食に切り替えようとしないこと。
いろいろな事実を知ってから「動物製品は一切食べたくなくなってしまった」という方もいるかと思いますが、今までご自身が“ノンベジ”の食生活をどれだけの間してきたのか考えてみましょう。人それぞれですが、とても長い期間だということには変わりないはず。
たとえ菜食が体に良いものだったとしても、“ノンベジ”の食生活に完全に慣れてしまっている体に、いきなり食物繊維たっぷりで消化吸収の仕方も少し違う食材たちをどんどん入れ込むと、人によっては体が上手く対応できず、不調を感じてしまうことも。
なのでベストなのは、菜食生活やヴィーガン生活、栄養学など、ある程度の知識をつけてから、自分の金銭的、時間的、体力的、精神的余裕を考え、やりやすいことから少しずつ取り入れていくという方法。
食生活のシフトはマラソンのようなもの。最初から飛ばすよりも、一歩一歩自分のペースで着実に進んでいくほうが、長く遠くへ進むことができ、最終的に辿り着きたいゴールに行けるようになります。そのことをちゃんと心得た上で取り組むのが大切です。
空腹を感じても我慢しない
二つ目は、お腹が空いたら我慢せずその都度食べるということ。
菜食の食事は消化しやすく、消化器官にも負担がかかりにくかったり、量あたりのカロリーが“ノンベジ”の食事よりも低くなることが多いため、菜食を始めたばかりの方は食後に空腹感を抱きやすくなる方もいらっしゃいます。でもこれはまだ菜食に慣れていないからで、1~3カ月の間に体は慣れてきます。
基本的にはお腹が空いたらその都度、ナッツやシード、豆腐などのタンパク質が豊富な食材をつまんだり、生の果物ドライフルーツ、玄米などの上質な糖質を取れる食材などを食べたりして、空腹感を落ち着かせましょう。
三食きちんとタンパク質食材が含まれているか確認するのも、空腹感を抑えるのにおすすめめです。
お腹の張りがあれば食べ方を見直す
三つ目は、お腹が張りやすかったりガスが出やすかったら食べ方を見直すということ。お腹のガスは食べるときに一緒に飲み込む空気と腸内でバクテリアが食物繊維や糖質を発酵させたときに発生するガスが合わさったもの。
まだ菜食の食事を処理できるような腸内環境が整っていないと、食物繊維の摂取量が増えるため、腸内で必要以上にガスを発生させてしまったり、食物繊維が処理されなくて不快感を抱くことがあります。
ガスが出るのは実は体にとってはいいことで、がんへと導くような腸内ダメージから守ったり、発癌物質を薄めたり、善玉菌の成長を促したり、腸のpHを正常値に調節してくれたりするのですが、現代社会で生きているとなるべく抑えたいという人も多いはず。
なので、菜食を始めてからお腹の張りやガスで悩んでいる方は、最初は食物繊維が豊富な食材(玄米、オーツ麦、乾燥豆、ごぼうなど)の量を少なめにしましょう。そこから少しずつ量を増やしていったり、よく噛んで食べることを意識してみてください。
簡単!ヴィーガン食初心者におすすめのレシピ
ヴィーガン食というとスーパーフードを使ったり、大豆ミートやヴィーガンチーズなどの新しい食材を揃えないといけなかったり…と、高くつきそうなイメージや、凝った調理法で手間がかかると思っている方も多いかもしれません。
ですが、実際はそんなことはなく、みなさんお馴染みの食材でぱぱっと簡単に作れる料理も多いんです。
今回は、とっても簡単なのに美味しい、食材2つ、調味料2つでできる一品をご紹介。分調味料の分量はあえて明記していませんが、自分の好みに合わせて作ってみて下さい!
キャベツと油揚げの醤油炒め
材料(大きめのフライパン一杯分の量)
- キャベツ…半玉くらい
- 油揚げ…2枚
- オリーブオイル…適量
- 醤油…適量
手順
- キャベツは適当な大きさに切り、油揚げはできれば油抜きしておく。
- キャベツを大きめのフライパンに入れ、上からオリーブオイルを2回しくらいかける。
- 蓋をしてフライパンを両手で持ち、よく振ってオリーブオイルを全体に行き渡らせ、蓋をしたままフライパンを強めの中火にかける。
- 蓋が温かくなってきたら、一度蓋を開けてかき混ぜ、もう一度蓋をして弱火で加熱する。
- 時々蓋を開けてかき混ぜ、キャベツに8割くらい火が通ったら、油揚げをちぎって入れる。
- 火を強火にして醤油を2周くらい回しかけ、汁を油揚げに染み込ませるように炒める。
- 火を止めて蓋をし、少し経ったら完成。
このお料理は、すごくシンプルな分、丁寧に作るのがポイント。心を込めて作ると本当にキャベツが甘くなって、油揚げにキャベツのお出汁とお醤油が染みて、絶品に。ご飯のお供にも、お酒のおつまみにもぴったりです。
壁を感じがちなヴィーガン食の自炊。牛乳を植物性ミルクに変えてみる、卵スクランブルから豆腐スクランブルに変えてみる…まずはできるところから少しずつ切り替えていってみると、ストレスに感じにくく、新しい変化を楽しんで取り入れられるはず!