シャーリーズ・セロンが魅せる「ビッチ」のカッコよさ

最近、シャーリーズ・セロンの出演作が妙に目にくのだけれど、どれもこれも雰囲気が全然違うのが驚きます。このところはエリート女性を演じることが多いのですが、特殊メイクをしているとはいえ、『スキャンダル』の有名キャスター役と、『ロング・ショット 僕と彼女のありえない恋』で演じた国務長官とか全然違うし、昨年の1月公開の『タリーと私の秘密の関係』では体重を14キロ体重増やして「イライラMAXの所帯じみたワンオペ主婦」みたいなのも演じており、マジでびっくりしますた。

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タリーと私の秘密の時間
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映画業界では「体重増やして決死の役作り!」みたいな話になるとクリスチャン・ベイルのことばっかり出てきますが、女は一度脂肪がつくと男の何十倍も落とすのが難しいってことわかっているんでしょうか。

なんつったって彼女は、『タリー』の前は『アトミック・ブロンド』で「女007」ともいうべき凄腕スパイをカッコよく演じ、「この人ガチか!?」と思わせるバリバリのアクションやってたんですから。

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とはいえ私が彼女のことが大好きなのは、あれだけ美しいうえに(美しいから、かもしれんが)、作品選びがものすごく果敢であること。日本公開の最新作『GRINGO 最強の悪運男』での役エレーンがこれまたすごい、スーパービッチ。常に真っ赤な口紅を塗り、ブラジャーを“チラ(どころじゃなく)見せ”してて、誰に対しても上からの物言いで、自分の利益のためなら手段を選ばない、もうどこから手を付けたらいいのやら…という感じの女です。

なのに、めちゃめちゃ魅力的に見えるのは、ある1シーンがあるから。彼女はある製薬会社の重役で、社長のリチャードと愛人関係にあるのですが、この社長に別の女がいることを知ってしまいます。彼女の誘いを断った日、社長のマンションの部屋を見上げると、窓際でイチャイチャする二人の影が。

さっきまで強気一辺倒だった彼女の頬にツツーッと涙が流れーーそれをバックミラーで見た彼女は、自分自身がめっちゃ驚くのです。「泣いてんの?!」そして「あなたはそんな“女の子”じゃないはず。いつだって勝つ。しっかりして」と持ち直してゆきます。ここでいう「勝つ」が「男を取り返す」という意味では決してないのが、映画が進むにつれて分かってくる。その「女ですけど、何か文句でも?」というあり方が最高です。

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そもそも間違ったルールに、女性が従ってしまう理由

映画の主人公はリチャードの友人で、部下のハロルド。リチャードは会社ぐるみでやっていたメキシコの麻薬取引に彼を利用し、挙句に誘拐された彼を見殺しにしようと考えます。

人のいいハロルドは、マジメな父の「ルールに従え」という教えを守って実直に生きてきたのですが、社長のリチャードはそんなものハナから守る気がなかった。ぐでんぐでんに酔っぱらったハロルドが「ルールなんてクソだ」とつぶやいたところから、登場人物の誰もがルール無用のけもの道を突き進み――もちろんエレーンも…――と、映画はめちゃめちゃ面白くなっていきます。

つまるところ「ルール」は、それを作った支配者側に都合よくできている上に、いざとなれば簡単に破棄することすらできる。でも「マジメ」な人たちは、ルール(とすらいえないものまで)--たとえそれが間違っていようと――を守ることに固執する。ルールから変えること考えたっていいんじゃないの? って思うんだけどなあ。

例えば、大学の入学者、会社の役員数、議員数に、一定数の女性を入れることを義務付けるクオータ制が話題にされるとき。「逆差別だ」と騒ぐ男性たちの主張に、優秀な女性ほど同調してしまったりすること。

それは「女だから入れた」と言われたくないから(さらに“女性は従順であるべき”という刷り込みを利用されている)だったりするわけですが、例えばひそかに「女性の足切り」みたいなことが行われている中で、つまり自分より実力のない男が「男」というだけで上に行く状況で、そのルールに従い、そのルールを維持し続けることに、なんの意味が?

もちろん「女だから入れた」とくだらない陰口を言う人もいるでしょう。でもエレーン式に「だから?」と開き直る強さも、女性の誇っていい実力と思ってほしいなあ。

『GRINGO 最強の悪運男』

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映画『グリンゴ/最強の悪運男』予告編 80秒ver.
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