ダイアナ妃の二人息子がキャサリン&メーガンというきれいな女性と結婚この方、すっかりイギリス王室ばやりなのか、最近はイギリス王室の映画ばっかり見ている気がします。イギリスには女王が結構いるので、王室ものの中心に女子がいて、男ばっかりの話よりも展開にバリエーションがあるような。なんていうんでしょうか、男は縦社会のなかで上へ上へ登っていくこととか、周囲を屈服させ名声を得ることが大部分になってしまうところがありますが、女子のおかれた環境は、それですべて解決するほど単純じゃないからかもしれません。

どんなに仕事で成功している女性でも、それだけで自信満々になれるわけじゃないし、結婚して子供を産んだからといって、一点の曇りもない幸せとは言い切れない。誰も自分を分かってくれないと思う日もあれば、誰かに分ってたまるか!と思う日もある。ややこしい環境によって育まれた自意識は、これまたなかなかにややこしいものです。

まあそんなわけで今回のご紹介は『二人の女王 メアリーとエリザベス』。16世紀中頃、スコットランドの女王メアリー・スチュアートと、イギリスの女王エリザベスのお話です。歴史上で、ある種のライバルと目される二人の関係は、単純に言えば「いとこ同士」。でも信仰する宗教も異なるし(キリスト教の旧教と新教)、生き方もめちゃめちゃ対照的です。

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メアリーは美人で奔放なモテモテ女王で、3度結婚し王子を出産。常に相手に挑むように強気で威厳たっぷり、それでいて衝動的で感情に流されやすく、いかにもヒロイン然とした女性です。一方のそもそも美人とは言えないエリザベスは、「私は男なの」とのたまって王座に就き、結果的に未婚で子供もいないまま。自分以外はすべて男という宮廷で、時に優柔不断で自信なさげだったりします。このあたりの描き方は、特にエリザベスにおいて恣意的のように思えますが、そこがこの映画のミソ。両国を行き来する家臣たちが、時に互いに「そっちの女王をきっちり管理しろ」「そっちこそ」と言い合う場面があるのですが、二人は男だらけの世界で、それぞれに自分のやり方で男たちに対しているわけです。実のところすごく現代的なキャラクターとして描かれているんですね。

でもってそんな二人が、もし直接対面していたら。映画は史実にはないそんなクライマックスに向けて進んでゆくのです。


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友達にはなれないけど、ライバルにはなれたのに

映画を見た私は、「永遠のライバルとは何ぞや」と考えました。例えば浅田真央とキム・ヨナ。戦いの場にある時の二人は「あの人には絶対に負けたくない!」という思いがあったはずで、「自分の敵は自分の中にいる」なんて感じのコメントは、もちろんそりゃそうだけれども、お互い頑張ろうね!なんて腹心なく笑顔を交わせる関係だったはずがありません。でもお互いの存在があったからこそ頑張って、自分一人では見ることができなかった場所まで行けたんじゃないか。そしてその道のりにある苦労とか喜びなんかを本当にわかっているのは、お互いだけなんじゃないか。たとえ相手を好きになることや、仲良くなることはできなくても、何かしらの共感や敬意はある。そういう風に思える二人ならば、まさに生涯続く「永遠のライバル」になりうるんじゃないかと。

メアリーとエリザベスはまさにそうなれそうな二人だったのですが、結局そうはなれませんでした。エリザベスはその後、彼女を頼ってイギリスに逃れたメアリーを処刑することになります。一体なぜそんなことになったのか。映画が想像する二人の面会で語られたことを一言でいうならば、「それほど単純じゃない」女子の、その悲しさに尽きるのかもしれません。

『二人の女王 メアリーとエリザベス』

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