適度な運動を生活習慣に取り入れることで、健康維持や改善に繋がることは数々の研究によって明らかになっています。また、最近の研究では、運動が遺伝子の働きに変化を与え、病気の予防に効果があることが分かってきています。

そこで本記事では、運動が遺伝子の働きに変化を与えるメカニズムと、それによる効果について、研究の内容とともにお届けします。


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一卵性双生児を研究対象として比較

Scientific Reports」誌に掲載された新しい研究では、70組の一卵性双生児を対象に、7年間にわたって「運動」がどのように人体に影響を及ぼすかを調査。

今回の研究では、運動の効果を分子レベルで比較することを可能にするため、遺伝子や育った環境が共通しやすい一卵性双生児を対象に設定したと言います。そのため、遺伝的な変動要因を排除し、より広範囲に研究を深めることができました。

その結果、身体活動量(運動量)が互いに異なるペアを比較したところ、その違いが顕著に表れたとしています。

双子のうち運動量の多い対象者は、腹部の体脂肪、高コレステロール、高血糖、血圧上昇など、代謝性疾患の兆候が圧倒的に少ないと結論付けています。つまり、脳卒中や2型糖尿病、心臓病などを引き起こす可能性のあるメタボリックシンドロームのリスクが低いことを示唆しています。

twin sisters running on footpath
Westend61//Getty Images

運動がもたらす「エピジェネティック」な変化とは

この研究を率いた米ワシントン州立大学のマイケル・スキナー博士は、運動がエピジェネティックな変化」をもたらす可能性を示唆。

エピジェネティクスとは、遺伝子のスイッチのオンオフを制御する仕組みのことで、DNA配列を変化させるのではなく、遺伝子をどのように読み取るかを決定し、機能を調節するものと解釈ができます。

変更ができないDNAとは異なり、エピジェネティクスは、食事や喫煙、睡眠などの生活習慣や心理的ストレス、環境汚染物質との接触などによって変化するとされています。

つまり、遺伝的に代謝性疾患を患いやすかったとしても、習慣的な運動などの生活習慣の改善を心がけることで、その発症リスクが下がることを指しているのです。

「運動がエピジェネティクスを通じて個人に作用し、細胞機能を変化させることがわかりました。つまり、身体活動量によって遺伝子発現が変化するのです」

スキナー博士は「強度が高い運動の方がより劇的で有意な影響を与えることできる」としていますが、普段から運動する習慣がない場合には、いきなり強度の高い運動をせず、まずは週に数回の運動を習慣として継続することから始めましょう。

※この翻訳は抄訳です。
Translation: ARI
RUNNER'S WORLD