健康促進のために1日どれくらい歩くべきかについて話されるとき、「1日1万歩」という目安を耳にすることが多いはず。でも、どうして1万歩なのでしょうか。そこでライターのジェイドさんは、自ら1日1万歩生活を30日間つづけるという実験をしてみることに。

本記事では、ジェイドさんによる1カ月間の1日1万歩生活の記録をお届けします。どのような効果があったのか、専門家によるアドバイスや研究結果も交えてお届けします。

※この記事は、医師の監修によるものではなく個人の体験談です。運動する際に体調に不安を抱えている方は、必ず医師または資格を有する医療従事者の助言を仰いでください。

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文:ジェイド・ビッグスさん

なぜ1万歩?

1万歩という数字の起源は1960年代に日本のとある会社が、東京オリンピックの直前に歩数計を売り出したことにさかのぼります。商品に、1万歩を想像させる名前がつけられ、さらにそのマーケティング戦略は大成功。

現在も多くのフィットネストラッカーや歩数計が、使用者に1日に1万歩歩くことを奨励しており、様々な研究結果によって1日1万歩歩くことが心疾患やがん、認知症のリスクを軽減すると示されています。一方で、1日4,000歩でも健康リスクを減らせるという研究もあり、1万歩でなくとも歩くことで得られるメリットはあると言えそうです。

では、1日1万歩の生活を送ると、具体的にどのような変化があるのでしょうか。 そんな疑問への答えを見つけるべく、私は1カ月にわたり1日1万歩生活を実践してみることにしました。

running legs in a sport sneakers
Yuliia Konakhovska//Getty Images

1万歩日記

1万歩生活はあらゆる意味で大変なことですが、私にとって最も大変だったのは「時間の確保」でした。仕事をして、人づきあいをして、休息も確保しながら、1日にそんなに歩けるわけがない…と思ったのです。しかも、自宅でのデスクワークが主な勤務形態の私にとっては、“通勤”はベッドから机までの移動のみ。当然、歩数も最小限です。

そこで取り入れてみたのが、デスクの下に置いて使うウォーキングマシーン。これなら仕事をしながらウォーキングができるし、きっと1万歩もすぐに達成できる、そう思いました。

レンタルのウォーキングマシーンが到着すると、まずその大きさに驚きました。振り返ってみれば私の落ち度なのですが、あらかじめ大きさをチェックしていなかったので、デスクの下におさまずにリビングルームで使うことになりました。これによって、仕事をしながら歩く作戦は断念…。日々の生活で、実際に歩く時間を設けることになりました。

1週目

実験を始めた頃、自分が1万歩歩くのにかかる時間をかなり見誤っていたことに気づきました。友人たちといるときは私は歩くのが速い方だったので、1時間ほどで達成できるだろうと思っていたんです。

ところが初日の朝に1時間のウォーキングをしたところ、7,000歩にしかなりませんでした。その後、残りをこなすためにランチの時間に35分ほどウォーキングマシーンを使用することに。

ウォーキングマシーンにもっと速いスピード設定があれば、もう少し時間を短縮することができたと思います。私が借りていたウォーキングマシーンには6段階の速度設定(時速0.5kmから時速6kmまで)があり、公式サイトによると最高速度の設定は「軽いジョギングペース」ですが、私にとってはただの早歩きのペースだったのです。

2週目

そうこうしているうちに、実験も2週目に突入。私は絶好調でした。

リモートワークの合間にスニーカーを履き替え、リビングに行ってウォーキングをするのは最高でした。外を歩くよりも時間を節約できるし、仕事の前に数千歩をこなせるので生産的な日々を過ごせたのです。一方で、時間を捻出するために1時間早く起きたり、夜のリラックスタイムを削ることもありました。

オフィスに行く日には、通勤や移動で1万歩をクリアすることができました。駅まで25分をかけて歩くと約3,000歩で、その後はオフィスで積極的に階段を使ったり、ランチに出たり、帰りにまた駅から家まで歩くことで歩数が増えていきました。また、夜に予定があったり、いつもよりミーティングで職場の中を移動することが多いときには、1万歩を超えることもありました。

4週目

実験の終わり頃には、正直に言うとクタクタでした。

たまに1万歩を歩くのであればそれほど苦ではないのですが、これを「毎日」「1カ月間つづける」となると、体力的に辛いものがありました。体が「寝転びたい!」と叫んでいるかのように、ひたすら何もしたくない日もありました。そういう日は、1万歩を歩くことにエベレストを登るくらいの難しさを感じることも。

それでも毎日、歩きました。そうしたくても、したくなくても、です。出不精なので、ウォーキングマシーンに助けられたといっても過言ではありません。

1日1万歩生活の結果と健康効果

減量を目的とした挑戦ではありませんでしたが、実際に体重は減りませんでした。私が減量を目的にする場合には、低強度のウォーキングだけでは足りないということが分かりました。

体重に変化はありませんでしたが、健康を取り戻したことは実感できました。1カ月が経った頃には、歩いた後に息が上がりづらくなっていましたし、以前よりも腹部が引き締まったようにも感じました。

ただし、ウォーキングのペースを上げれば違う結果に繋がったかもしれません。

国民健康保険(NHS)によると、「運動のかたちとしては見落とされることがありますが、早歩きには、スタミナをつけ、余分なカロリーを燃焼し、心臓を健康に保つといった効果があります」「何時間も歩く必要はありません。毎日10分間キビキビと歩くことで多くの健康効果がありますし、週に150分間という、19歳から64歳の成人に推奨される運動量に加算することができます」とのこと。

また、フィットネスアプリWeGLOWの創設者ステフ・ウィリアムズさんも、減量を目的にする場合には早歩きを推奨しています。

「スピードを上げたり、傾斜をつけたりすることで運動の強度が上がり、心臓血管の健康が促進されますし、減量が目的であれば、より多くのカロリーを燃焼できます。さらに幅広い健康効果を期待するのであれば、他の動きも組み込むとよいでしょう」

ワークアウトだけでなく、健康的でバランスのとれた食事を組み合わせることを忘れずに。

fruit salad in glass transparent bowl
Yuliia Konakhovska//Getty Images

メンタルヘルスに関して言うと、ウォーキングは(特にウォーキングマシーンを最速に設定した場合)ストレス発散になっているように感じました。

歩く毎に、その時々に溜まっていた不安を押し出し、自分の中のネガティブなエネルギーを一掃しているような気がしました。歩き終わるといつも気分が軽く、よく言われる「ワークアウト後の気分の高まり」を実感することができたのです。

今回の実験で学んだこと

普段から熱心にワークアウトファンするタイプではないので、ジムに行って汗だくになるのではない方法で健康を保ちたいと思っていました。その意味で、1日の歩数を増やすのは完璧な解決法でした。

歩きたくない日もあったのでウォーキングマシーンには苦い思い出もありますが、返送するときには少し寂しくなりました。新しい習慣を保つためにもすぐに新しいのを注文するぞ…と誓ったはずが、この記事を書くことになった時点で(実験を終了してから3週間足らず)、まだウォーキングマシーンは買っていません。でも、使っていた頃のポジティブな影響を思い出すと恋しくなる瞬間もあります。

オフィスに通う日は今もアクティブですが、リモートワークの日はほとんど座りっぱなしで、かつての生活に戻ってしまっているのを感じます。ストレスも溜まってきていて、実験をしていた頃の達成感をなつかしく思います。

もっとも、ウォーキングマシーンを再び買ったとしても、1日必ず1万歩という生活を送るつもりはありません。人生に必要なのはバランス。非現実的な目標を掲げても、失望するだけですから…。

フィットネスアプリWeGLOWの創設者ステフ・ウィリアムズさんも、無理をしないことを推奨しています。

「何に関しても同じですが、“完璧”にする必要はないのです。1万歩達成できなくてもがっかりしないで。自分に向いた運動のかたちやルーティーンを探せばいいのです。何もしないより、何かした方がいい、ということを忘れないでください」

※この翻訳は、抄訳です。
Translation:mayuko akimoto
COSMOPOLITAN UK