生理を迎えると、外陰部のかゆみが生じたり、お通じがよくなるという人もいるのではないでしょうか。経血に“血の塊”が混ざっていたりすると不安になるかもしれませんが、それは生理にともなう体の変化に関係している場合があります。

婦人科医で「Gynae Geek」という名前で婦人科関連の大切な情報をSNSで発信するアニータ・マイトラ医師に聞いた「生理のときに体に起こる変化や医師に相談するべき症状」について、<コスモポリタン イギリス版>からご紹介。

※この記事は、診断の代わりとなるものではありません。症状について不安がある場合には、必ず医師または資格を有する医療従事者の助言を仰いでください。

1.デリケートゾーンのかゆみ

生理中に外陰部(デリケートゾーン)のかゆみが生じるのは、ごく一般的なこと。そしてマイトラ医師いわく、このかゆみは「内に健全に存在する細菌であるマイクロバイオーム(細菌叢・さいきんそう)の変動によるもの」であるそう。

「ホルモンの変化や経血により、そのマイクロバイオームや酵母(真菌の一種で膣カンジダ症の原因となる)が変動し、かゆみが発生するのです」

タンポンを使うとかゆみが悪化すると感じる人もいるそうですが、これには個人差があるもよう。

「タンポンには、炎症といったさまざまな症状を引き起こす有害な化学物質が含まれているという噂があふれています。それによってオーガニック素材のタンポンを使用した方がいいとも言われているようですが、これを裏付けるような明確な証拠はありません

また、かゆみの対策として「ビデや膣洗浄器の使用を避けた方がいい」と、マイトラ医師。かゆみが悪化する可能性があるだけでなく、善玉菌が洗い流され、取り除きたいはずの酵母や細菌が増殖しやすい悪循環に陥ってしまうと指摘をします。

使い切りビデは必要?「膣内洗浄」の正しい知識を医師が解説

また生理のときは、経血特有のにおいが発生しますが、洗うとそのにおいもより強くなる傾向にあるのだそう。「血そのものににおいはあるものですし、多少の臭いが発生するのはごく当たり前のこと」と言います。

2.膣内のpH値が変化

膣内はpH値が低く保たれており、これが細菌性膣炎やクラミジアや淋病などの性感染症の原因となる細菌の増殖、そしてHIVやHPV(子宮頸がんの原因とされるウイルス)などのウイルス感染症を防ぐ働きをしています」とマイトラ医師。

生理前後は、膣内のpH値がわずかに上昇します。そのため生理中は膣カンジダ症に感染しやすいという説もありますが、その真偽についてはまだ結論がでていないそう。

「酵母が好むエストロゲンの数値が高くなって、卵胞期や排卵期に膣カンジダ症に感染する人もいます。一方で、生理前後に感染しやすい人も多く見てきました。その理由は、細菌数の変動により酵母が増殖して膣内環境が変化し、非常に強いかゆみやおりものといった、不快な症状を引き起こすからとも考えられています」

3.子宮頸管が少しやわらかくなる

経血が体外に流れ出やすくなるよう、生理中は子宮頸管がやわらかくなるのだとか。

「これは、炎症反応に関わる物質であるプロスタグランジンが放出されることにより起こる現象です」

4.陣痛のような痛みが生じる

このような痛みは、先述のプロスタグランジンというホルモンの働きで、出産のときと同じように子宮が小刻みに収縮することにより生まれるそう。「それにより子宮内膜が剥がれ落ち、子宮頸管を通って膣まで降りていくのです」とマイトラ医師。

「これがいわゆる、“生理痛”の原因。下腹部だけではなく、骨盤領域と神経がつながっている関係で背中や腰、臀部(でんぶ)、そして太ももにも痛みを感じることがあるのです」

5.お通じがよくなる

上記のプロスタグランジンには腸を収縮させる働きもあり、それによってお通じがよくなることも。

マイトラ医師によると、「トイレに行く回数が増えたり、お腹がゆるくなったりするのは珍しいことではありません。そしてこれには、腸の動きを抑える働きをもつプロゲステロン(黄体ホルモン)の分泌量が下がることも関係していると示唆されています」とのこと。

6.血の塊を溶かす物質が分泌される

close up of pad
Megan Madden / Refinery29 for Getty Images//Getty Images

経血にときどき混ざる、ドロッとした血の塊。慣れない感触に驚くかもしれませんが、多くの場合は塊があっても心配する必要はないのだそう。

「生理のときに子宮の壁から出る血液は、子宮内で固まります。同時に血液を溶かす物質が体内から分泌され、それにより再び液体となり、体の外に排出されるのです」

そして出血量がこの物質が分泌されるスピードを上回ると、やわらかくなった子宮頸管を通って、血の塊が排出されることがあるのだとか。塊自体は3センチ以下の小さなものがほとんどですが、大きめの塊が大量に出る場合は出血量がかなり多い可能性も。

その傾向が感じられたら、「貧血を起こしていないか、そして何らかの病気が関係していないか、かかりつけ医に相談してみるといいでしょう」とマイトラ医師。

相談を検討すべき4つの症状

そのほかかかりつけ医に相談した方がいいとされる、4つのケースは次の通り。

  • かゆみが治まらない:生理中に外陰部がかゆくなるのは自然なこと。けれど、それがいつまでも治まらない場合は要注意です。
「硬化性苔癬(こうかせいたいせん)など、別途適切な治療が必要な皮膚疾患などではないかを確かめる必要があるかもしれません」
  • 耐え難いほどの痛み :鎮痛薬を摂取し、体を休めたり温めたりしても治まらない痛みは、子宮内膜症など何か別の原因がある可能性も。かかりつけ医に相談しましょう。
  • 経血量がかなり多い :経血量が多い生理の判断基準として、「生理の合計量が80ml以上」「ナプキンやタンポンを二時間おきに変えなければいけない量」といった定義などが設けられていますが、これらは体感では少々わかりづらく、またすべての人にあてはまるわけではありません。
「日常生活に支障をきたしたり、体調を崩したりするほど多かったり、量が増えてきたりなど、とにかく何か不安なことがあるのであればかかりつけ医に相談してみてください。ほとんどの場合はそこまで深刻ではないことが原因で、簡単に治療できる甲状腺疾患などが関係していることもあります。また、貧血になっていないかを確認することも大切です」
  • 生理のとき以外に出血がある:基本的に出血があるのは、生理期間中だけ。セックスの後も含め、生理期間以外で出血がある場合は、躊躇せずにかかりつけ医に相談してみて。まれに重大な疾患が隠れている場合もあるので、必ず医師または資格を有する医療従事者に診てもらうことが確かです。

※本記事は、Hearst Magazinesが所有するメディアの記事を翻訳したものです。文化的・言語的な処理を含めた抄訳や部分利用、改変を含んでいます。
Translation: 平田三桜(Office Miyazaki Inc.)
COSMOPOLITAN UK