現在アメリカ全土を揺るがしている「中絶の権利」。6月24日(現地時間)、最高裁判所が1973年の「ロー対ウェイド判決(中絶は憲法で認められた女性の権利だという判断)」を覆したことで、国内の約半数の州が中絶を厳しく制限するという見通しになっています。

国内の分断が深まっていくなかで、中絶が可能な州に移動して手術を受ける従業員に対し、旅費をサポートするとさまざまなアメリカ企業が相次いで表明。本記事では、従業員の中絶手術に関するサポートを行う企業を一部ピックアップします。

※7月5日執筆時のアメリカ国内での情報です。


rallies protesting the supreme court abortion opinion continue in la area
David McNew//Getty Images

アクセンチュア

アクセンチュアは、中絶が禁止されている州に住む従業員を支援するため、医療給付金の増額を決定。地元(居住地から160キロメートル以内)で提供されていない医療サービスを受けるための交通費や航空券、宿泊費まで、社員の旅費が援助されるそう。

バズフィード

中絶を禁止・制限している13州に居住する従業員に対し、安全な中絶を受けるために必要な旅費と費用を提供予定。また、この手続きは完全に機密扱いになると発表。

バンク・オブ・アメリカ

自社の自己保険医療保険プランに加入している従業員とその扶養家族のために、旅費払い戻しの対象となる医療行為のリストを拡大。このリストには、がん治療、卓越した施設での臓器移植、中絶を含む生殖医療、精神疾患による入院が含まれるようになったそう。

ザ ボディショップ

今回の判決の影響を受ける従業員へのサポートだけでなく、セルフケアのための場が必要な従業員や、ボランティアや地元の抗議活動に参加するための休暇を希望する人にも有給休暇を提供。

エスティローダー カンパニーズ

「ロー対ウェイド判決」が覆される可能性を見越して、2週間前から中絶を希望する人のための旅費と宿泊費を負担すると表明していた、エスティローダー。福利厚生の対象となるフルタイムおよびパートタイムの従業員に、個人的な健康上の決断を可能にする包括的な福利厚生の提供を発表。

今後は、自社の医療保険に加入している従業員とその扶養家族が医療のアクセスのために必要な旅行と宿泊を補償対象にするそう。

エクスペディアグループ

従業員が自分の住む州で提供されていない医療を求める場合、旅費を負担。機密保持のために、従業員は医療保険を通じてこの制度を利用し、旅費は制度提供者を通じて払い戻されるそう。

また従業員は、規定に従って休暇を取ることができ、理由を記入する必要はないとのこと。

H&M

パートタイムおよびフルタイムの従業員が中絶を禁止または制限している州に居住している場合、ほかの州でしか受けられない関連医療サービスの旅費と交通費をカバーすると発表。

JPモルガン・チェース・アンド・カンパニー

現在、臓器移植など特定のサービスを対象としている既存の医療旅行給付を、自宅から遠く離れた場所でしか受けられない、すべての対象医療サービスに拡大することを決定。

a protester holds a placard reading "united states, where a
SOPA Images//Getty Images

ナイキ

ナイキは、家族計画給付金に中絶を含めることを発表。避妊や中絶の補償から、不妊治療や代理出産、養子縁組などで、従業員をサポートすることを約束。

パタゴニア

パタゴニアのヘルスプランに加入している米国内の社員に対しては、中絶のための医療費を負担すると表明。

スターバックス

スターバックスの医療保険に加入している従業員に、中絶にアクセスするための医療旅行払い戻し給付金を提供。

ワーナー・ブラザース・ディスカバリー

中絶や生殖医療を受けるために移動が必要な従業員とその対象家族の交通費をカバー。