妊娠中絶を実質的に禁止し、激しい議論を呼んでいる、アメリカ・テキサス州の新法。テキサス州オースティンの連邦地裁の裁判官は10月6日(現地時間)に州に対し、この法律の一時差し止めを命じたものの、その2日後の8日に法律が一時的に復活することに。

同州の法律は、母親の命に危険がある場合を除いて、胎児の心拍が確認されてからの人工妊娠中絶を禁止。

中絶手術を行った医師をはじめ、「中絶を手助けした」あらゆる人が訴訟の対象になり、病院まで送迎したタクシーの運転手なども含まれるよう。さらに新たな州法により、中絶薬も手に入れにくくなったことが伝えられている

そして誰であろうと訴訟を起こすことが可能かつ、勝訴した場合、最低でも1万ドル(約113万円)の報奨金が得られるという。

この法律には、共和党のグレッグ・アボット州知事が5月に署名し、9月1日から施行。心拍数が検出される妊娠6週目頃は、多くの女性が妊娠に気付きにくい時期であることや、性的暴行被害による妊娠も例外としないことなど、全米で最も厳しい中絶禁止法であると議論が起こっていた。

marches held nationwide in support of reproductive rights
Yana Paskova//Getty Images

そんななか「女性の権利を守る」というバイデン政権の無効化を求めた訴訟により、10月6日(現地時間)に一時的に効力を停止する命令がテキサス州の連邦地方裁判所によって下されることに。

しかし、2日後の8日、第5巡回控訴裁判所では、同法の一時差し止めを命じたオースティンの連邦地裁の判断は、出されるべきではなかったと指摘。これにより、法律の差し止めが一時的に解除された。

marches held nationwide in support of reproductive rights
Megan Varner//Getty Images

プランド・ペアレントフッド社によると、テキサス州にある同社のクリニックに来院する同州の患者数は、法律発効後の2週間で80%近く減少。テキサス州の診療所が閉鎖の危機に瀕している一方で、近隣の州では何百キロも車で移動してくる患者が急増しており、その対応に追われているという。

州内では法律の効力停止期間中に 中絶手術を再開した診療所もあり、その法的リスクや今後の動きなどについても混乱を招いている。