アメリカのテキサス州で、妊娠約6週間で人口妊娠中絶を規制する法律が施行されたことを受け、女性の権利を訴えるため多くの女性やアクティビストたちが立ち上がるなか、3人の子どもを持つ人気女優のユマ・サーマンが、10代の頃に中絶をしていたことを告白。


テキサス州では、胎児の心拍が確認されてからの人工妊娠中絶を禁止とする法律が施行に。心拍が確認されるのは、多くの女性が妊娠を自覚する前である妊娠6週目くらいだとも言われており、今回の規制によりテキサス州で処置を望む85%以上の女性が影響を受けるとも伝えられている。さらに、性的暴行被害による妊娠だったとしてもこの法律が適用されることも問題視されている。

また、対象になるのが「中絶を手助けした人」とされており、手術を施した医師だけでなく、病院まで送迎したタクシーの運転手なども含まれるよう。さらに新たな州法により、中絶薬も手に入れにくくなったことが伝えられている

このような状況の中、女優のユマ・サーマンが自らの過去を告白。三児の母である彼女が今になって告白した理由は、同じ立場に置かれている女性をサポートするためだった。

10代で妊娠し、両親と相談し中絶を決意

「15歳で女優の仕事をはじめた私は、多くの現場で唯一の子どもでした。そして10代後半のあるとき、ずいぶんと年上の男性を相手に妊娠したのです。所持品をスーツケースひとつに詰め、家族と離れたヨーロッパで暮らしていた私。新しい作品が開始するという時期で、どうするべきなのかと悩みました。産みたいとも考えていました」
「そして私は、家族に電話をすることに。重病で入院していた母のもとへ父は向かい、みんなで選択肢を話し合いました。(中略)そして的確な質問に答えるうちに、私の考えていた“母親業”は、未熟な妄想であることが明らかになったんです。キャリアをスタートさせたばかりで、自分一人すら支えることもできないのに、生まれてきた子どもに安定した家庭を与えることなんてできない。そこで家族で出した決断は、妊娠を続けないということ、そして中絶が正しい選択肢だということでした。しかし、私は心が引き裂かれる思いでした」

手術後の医師の言葉に感動

そして、知り合いの女性に手伝ってもらいドイツの病院で中絶手術を受けたというユマ。処置はかなりの痛みを伴ったけれど、「羞恥心でいっぱいだったため、痛みを受け入れるのが当然」だと感じたそう。

しかし、そんな彼女に医師は、「美しい手ですね。私の娘を思い出しますよ」と言われ、まだ人として見られていること、そしてそれを伝えてくれた医師に感動をしたという。

胸の奥にしまっていた秘密を打ち明けた理由

「本当に苦しみましたし、これはずっと心の奥にしまっていた秘密なのです。51歳の私は、この秘密を、3人の誇れる子供を育てた自宅から打ち明けています。素晴らしい人生を送ってきました。しかし、他の女性と同じように、時には胸が痛むこともありましたし、苦労したことも。失ったこともあるし、不安にもなりました。そしてまた、他の女性と同じように、勇気と思いやりを与えられた人生にもなりました」
「美しく素晴らしい子供たちを産みましたが、父親たちは私が愛し、またこの世に子供を誕生させても良いと信頼した人たちです。人生に悔いはありません。(中絶した)私とは異なる選択をした女性のことを称賛しますし、サポートします。私がティーンエイジャーで経験した中絶は、人生でもっとも難しい選択でした。当時は苦悶し、今でも悲しむことはありますが、これが幸せと愛で溢れている人生を歩むまでの過程だったのです」
「経済的に不利な女性に差別的な法律です。裕福な家庭に生まれた人には選択肢が残っているし、リスクも少ないのが現実。そして、この法律が、民間人同士を敵対視させ、不利な立場にある女性を狙う自警団員を産んだことを非常に悲しく思います。そして育てる能力がないのに子供を産まないという選択肢を与えないことや、将来持ちたいと夢見ている家族像も壊されることも悲しい」

ユマ・サーマンは続けて、「故意に中絶しなければならない立場に立つ女性はいない」「テキサス州にいる女性たちに:私はあなたの味方です。どうか勇気を持って。あなたは美しい」というメッセージを綴っている。