ロシアのウクライナへの軍事侵攻を受け、アメリカのジョー・バイデン大統領は、キャビアとウォッカに並び、ロシア産ダイヤモンドの輸入を禁止する大統領令を発しました。業界アナリストらは、ダイヤモンドの価格は今後、短期的に値上がりする可能性があるとの見方を示しています。

ダイヤモンドの供給量で世界1位の国はロシアだと聞けば、驚く人もいるかもしれません。しかし、ダイヤモンド原石の供給量のうち、全体の3分の1近くはロシア産が占めています。

そのロシア産ダイヤモンドはほぼすべてが、シベリアにあるサハ共和国のヤクーツクの鉱山で採掘されています。そして、この鉱山は、ロシア政府が株式の33%を保有するアロルサが運営しています。

一方、世界のダイヤモンド需要の半分近くを占めるのは、アメリカとなっている。そのため、業界アナリストのポール・ジムニスキー氏は、アメリカでは「短期的には、供給不足が起きる可能性が高い」と予想している(禁輸がどの程度続くかわからないため、長期的な影響については明らかではないという)。

ただ、すべての業界関係者が、ダイヤモンドがすぐにも値上がりすると見込んでいるわけではない。ダイヤモンドを使ったジュエリーの需要は過去2年間、大幅な伸びを見せたものの、昨年から続いているインフレや、このところのガソリン価格の上昇、そして世界情勢が、需要に影響を与える可能性も。

過去1年間、アメリカではより多くの人がダイヤモンドの婚約指輪やジュエリーを購入した。2021年のダイヤモンドジュエリーの売上高は、前年比では最も高い伸び率となる51%の増加を記録。さらに、今年の売上高は1000億ドル(約11兆8000億円)を超えると予想されています。

消費者にとってより大きな問題は、購入するダイヤモンドの産地がロシアなのかどうか、どのように見極めるかということ。ダイヤモンド業界はここ数年、サプライチェーンの透明性を高めており、卸売業者・小売業者が原産国を特定することもより簡単になっています。

たとえばティファニーは、0.18カラット以上のダイヤモンドは原産国、採掘された鉱山を明示した上で販売している。すべてのダイヤモンドの産地が追跡可能ではないものの、業界には自主規制組織が複数あり、ジムニスキー氏は、卸売り・小売りを含め多くの販売業者が、責任ある形でダイヤモンドを調達していると述べています。

そのジムニスキー氏は、アメリカのロシア産ダイヤモンドの禁輸措置が長期にわたって続くことになれば、カナダやブラジル、オーストラリアなど、別の産地での採掘に向けた投資や開発計画が推進されることになるとも指摘。

いずれにしても、ダイヤモンド原石はデビアスやリオ・ティントといったほかの大手からも十分な供給を受けることが可能。そのため私たち消費者への影響は、少しの値上がり程度で済むとみられています。

※この記事は、海外のサイトで掲載されたものの翻訳版です。データや研究結果はすべてオリジナル記事によるものです。

From: Harper's BAZAAR JP