最近SNSやメディアなどで取り上げられることが多く、注目されている避妊器具「IUS(ミレーナ)」。今回は、避妊効果が高いと言われるIUSのメリットやデメリット、費用や装着のプロセスなどを、アヴェニューウィメンズクリニックの福山千代子院長に取材。選択肢のひとつとして、参考にしてみて!

IUS(ミレーナ)って?

「避妊リング」とも呼ばれているIUS(ミレーナ)は、子宮内に3cm程のT字型の器具を入れて着床障害を起こす避妊具のこと。器具自体に黄体ホルモンを付加していて、子宮内膜の増殖を抑えて受精卵の着床を防ぎます。

避妊効果は99.9%と高く、確実な避妊効果が5年間持続。また、IUSは子宮内膜を薄く保つ作用があるため、生理の出血がおりもの程度の少量になったり、月経痛の緩和も期待できたりします。

避妊効果は最長5年なので、ピルの血栓症のリスクを考えたり、子どもを作らない選択をしたりする40代以降の方が利用することが多いのですが、高い避妊効果を得たいという10〜30代にもおすすめです。

IUSのメリット

  • 避妊の失敗率は0.1%*
  • 最長5年の避妊効果
  • 生理の出血の減少
  • 生理痛の軽減

IUSと同様に子宮内に銅を付加した器具を入れる子宮内避妊用具(IUD)の避妊失敗率は0.8%*、低容量経口避妊薬(低用量ピル)は8.0%*なので、IUSの避妊効果が高いことは一目瞭然です。

*一般的な使用の場合

IUSのデメリット

  • 医師による処置が必要
  • 処置に伴う出血がある
  • 使用開始後は銅付加の子宮内避妊用具(IUD)よりもしばらく出血が続く

デメリットとしては、上記のことなどが挙げられます。

また、装着後1カ月は月半分の間出血が伴う可能性も。2カ月目は10日くらい、3カ月目以降からは徐々に減っていきます。最初は面倒かもしれませんが、出血はナプキンやパンティライナーで対応してください。タンポンは避妊具装着後3日目以降であればOKですが、月経カップは外すときに抜去糸を引っ張ってしまう可能性があるのであまり推奨はしていません。

this is an illustration of an iud  intrauterine device
Kei//Getty Images

低用量経口避妊薬 (低用量ピル)との違いは?

低用量経口避妊薬 (OC)はいわゆる低用量ピルのこと。避妊のほか、月経不順や月経痛などの療法で使用されることが多い内服薬です。

適正使用により生理周期のコントロールが可能なので、旅行や受験などで生理周期をずらすために利用したことがある方も多いはず。

デメリットとしては血栓症のリスクがあったり、飲み忘れや胃腸の不調で吸収が悪い場合に避妊に失敗したりすることもあります。また、服用開始から数カ月は胸の張りやむくみ、吐き気、頭痛などのマイナートラブルを伴う場合も。

決まった時間の服用が難しい方や、長期間の避妊効果を得たい方はIUSも検討してみてもいいかもしれません。

銅付加の子宮内避妊用具(IUD)との違いは?

受精卵の着床障害を起こす避妊器具がIUD。黄体ホルモンが付加されていないので、産後すぐ、授乳中でも使用できるのがポイント。避妊効果は2〜5年と言われ、IUSより期間は短いものもあります。

デメリットは、月経量が増えるほか、IUSと同じく、医師による処置が必要で出血や痛みが伴うこと。ただ、処置後の不正出血は1週間程度で終わることが多いです。

hormonal and copper iud
Lalocracio//Getty Images
▲右が銅付加の子宮内避妊用具(IUD)

一般的な費用は?

クリニックによって金額は異なりますが、避妊目的ならばすべて自由診療となり自費。目安の費用はこちら。

  • IUS:約7万円
  • IUD:約5万円
  • 低用量ピル:毎月約3~4,000円(別途初診料・再診料)

ちなみに5年間の費用として換算すると、低用量ピルが一番割高に。

またIUSやIUDは、正しい位置に装着されているかのチェックが必要なので装着後の1・3・6カ月検診と、年1回の診療が必要。その際は別途診療費が発生します。

IUSの装着と抜去のプロセスは?

まずは、感染症や子宮筋腫の疑いがないか、子宮内の深さなどのサイズの確認を含め、エコーなどでチェックします。

その後に避妊用具を挿入。問題なくスッと入れば、処置は5〜10分程度で終わります。

挿入時の痛みに関しては、経産婦(帝王切開術による分娩を除く)であれば、多くの場合、軽度の痛みで装着が可能。未産婦の場合は一般的な子宮内膜検査と同じくらいの痛みだと言われています。

外す時は、器具についている抜去糸という細い針金を抜くだけなので一瞬で終わります。

装着後の注意点

性行為の際、パートナーが子宮口から出ている抜去糸を引っ張ってしまい用具がずれることがあるので注意が必要です。

まれに生理中に経血の塊と一緒に用具が外れたり脱出することも。気になったら、すぐにクリニックに相談してください。

また、頻度が高くはありませんが、放線菌症などIUSによる感染症の可能性は0ではありません。おりものに変化があったり、熱が出たりした場合はすぐに受診してください。そして、性感染症予防のためにも性行為の際はコンドームを装着しましょう。

日常生活への影響は?

基本は違和感もなく、日常生活に支障が出ることはありません。

性交渉の際、抜去糸が当たってチクチクとした感覚がパートナーにある場合、抜去糸の長さを調整することもできるのでクリニックに相談してみてください。


アヴェニューウィメンズクリニック 福山千代子 院長

日本産科婦人科学会専門医。金沢医科大学を卒業し、東京大学医学部附属病院、茨城県立中央病院で研修後、複数の病院で経験を積み2009年11月より現職。

更年期障害をはじめ、月経痛や月経前症候群(PMS)などの治療も積極的に行っている。女性ホルモンに影響される様々な不調や悩みを抱える女性の生き生きとした生活を応援しています。

アヴェニューウィメンズクリニック
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