夫婦関係を維持し、お互いを尊重しながらも婚外交渉を認めるという「オープンマリッジ」。これは、自身のパートナー以外と精神的に恋愛をするというよりかは、肉体的な関係がその基盤にある点で、ポリアモリー(交際相手を1人に限定しない恋愛関係)とは異なるもの。

日本ではまだ認知度が低いものの、欧米では広く知られる概念で、中には実践するカップルも! そこで、オープンマリッジの経験者である作家メリッサ・ブローダーさん(38歳)が「縛られない夫婦関係によって得られたこと」を赤裸々に告白。

ブローダーさん自身によるエッセイを、<レッド>からお届けします。

夫とは事前に何度も相談を重ねた

ある木曜日の夜のこと。バーで24歳の無邪気な男性とお近づきになった私。すぐ近くに人がいるにも関わらずドレスの中に忍び込もうとする彼の手をよけることもせずに、彼のあまりの若さと美貌に酔いしれた私は、シートを濡らしてしまうほど興奮してしまいました。

当時の私は34歳。結婚もしていたけれど、バーの隅で、まるで10代になったかのような気分になって彼との時間を楽しみました。でも、これは「浮気」ではありませんでした。

なぜなら、私と夫は5年間のモノガミー制(一夫一婦制)を体験後、ノンモノガミー制(非一夫一婦制)を取り入れ、生活は共にしながらオープンマリッジを実行していたから。オープンマリッジについては、夫と何度も話し合いを重ねました。

私と夫は違うルールのもとで…

オープンマリッジは万人向けのものではありません。私たちの場合、ルールがあり、そのルールはそれぞれにとって少しずつ違うものでした。

夫にとってのルールは、セックスする可能性がある時はあらかじめ私の合意を得なければならず、終わったらその一部始終を私に話してくれること。このルールのおかげで私はとても救われました。

私にとってのルールは、私がいいなと思った人と、私が求めることは何をしても良いということ(ただし、お互いの友人は除外)。逆に私の夫は何も知りたがろうとはせず、「一切話してくれるな」というのがルールでした。

何もしなかった2年から、私を変えた出会い

ノンモノガミー制(非一夫一婦制)になってはじめの2年間は、私は“何も”しませんでした。オープンマリッジはいったんハマるとやめることが難しいと思っていたし、私の心はまるで16歳の少女のままだったので。夫に出会う前の20代前半の自分のことを思い出し、他のパートナーを相手にまたあの恋焦がれる気持ちには戻りたくなかったのです。

その後、“ハンター”に出会いました。彼は女性に興味がないと思っていたのですが、オーラルセックスが得意だと言うので、私は「それなら」と。彼とキスをした時、唇がこんなに色々なかたちになることや、大きさも味わいも違うことを知りました。

体を重ねた時には、私は達することはできなかったもののものすごく満たされて―― もう一度したいと思ったんです。

nude female with hands wrapped around torso
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めくるめくセックスを楽しみ…

この5年間で夫以外の9人と関係を持ちました。そのうちの1人のトムはとても下手くそで、「夫は上手いんだ」と気づかせてくれたほど。途中で「なんでこんなことにわずらわされてるんだろう? 自宅で夫とすればよかった」と考えてしまったことを思い出します。

すばらしいセックスを経験したこともありました。ホテルの部屋でジェームズとセックスしたその瞬間、私はもう彼に夢中になっていました。彼の目の上にかかる髪の甘い香り、きれいにカーブを描くお尻のライン、クライマックスに達した時の酔ったような顔つき、何もかもに酔いしれました。

けれど、終わったあと彼が、アメリカの作家で詩人のチャールズ・ブコウスキーのことをいかに「彼が男らしいか」について語りはじめると、自分が夫を選んだ理由がセックス以外にもあること、そしてその部分が、自分にとって重要だという事実をあらためて思い知って、ありがたく感じました。

バーで会った24歳のグラフィックデザイナー、エリとの一件でも夫に感謝しました。リビントン・ホテルでセックスしようと誘われたとき、当然部屋を取るものとばかり思ったら、彼はロビーのトイレでやるつもりだったという…。

こういった色々なことを経験して、私の結婚生活はより刺激的ななものとなりました。オープンマリッジを経験して、夫と共にいることが自分にとって一番いいということが納得できたんです。

さまざまな経験をしてから夫とセックスをしたときは、初めて出会ったときの彼がよみがえったように感じました。色が黒く、セクシーで、がっしりした手を持つ彼が。私は、夫が他の女性セックスしているところを想像するのも好きです。別の女性がフレッシュでハンサムな彼をどうやって見ているのかを想像することも。そんなことを考えていると、一層彼のことが欲しくなったりするんです。

深入りしてすぎたことも…

オープンマリッジで唯一面倒なことが起こりそうだなという思いをしたのは、ディミトリアスとの時でした。距離的に離れている彼との仲は1年続き、セクスティング(性的なメッセージや写真を携帯で送る行為)を交わし、ホテルで会うときもどうにかなりそうなほど燃えました。あまりに深入りしすぎて、彼のことを思うことに疲弊し、自分の結婚生活に疑問を抱くようにまでなってしまったのです。

3か月に1度しか会えない人と、いつもそばにいる人、生活を共にしている人とを比べることなどできません。夫との長年に渡る関係とディミトリアスとのことを比べることなどできないのは頭ではわかっていたものの、疑問を抱いたことで私は疲れ切ってしまったのです。

もう一度「モノガミー」に

私のやることは隠しておいて欲しいという夫の当初のルールに反して、私は夫に洗いざらい打ち明け、もうオープンマリッジを続ける気力がなくなったことを伝えました。そして私たちは、5年にわたるオープンマリッジを経験して、もう一度モノガミー(一夫一婦制)に戻ることを決断したのです。ディミトリアスと別れる強さが自分にあるとは思えませんでしたが、今は、心の奥底から、正しい選択をしたと思っています。

夫とモノガミー(一夫一婦制)に戻って4年経つ今、これまでと違うことに挑戦しています。ある面、どこかで新しいインスピレーションに刺激されないと、物事に熱い情熱を保ち続けることはどんどん難しくなっていくものだと思うんです。

現在、オープンマリッジとは違うやり方で、私たちのセックスはずっと良いものになっています。おそらくこれまでの中で一番。結局のところ、余計なことを考えずにお互いだけに集中すればいいんです。二人の間にオープンマリッジという境界があった時よりも、この境界がさらなる創造性を高めてくれることになったと思っています。

私たちがモノガミー(一夫一婦制)を今後ずっと続けていくかどうかはわからないし、夫婦関係は常に変化し続けていくもの。モノガミー(一夫一婦制)についても引き続き話し合いを続けていくことになるでしょう。

私たち夫婦にとって今一緒にいることは、自分たちの選択肢のひとつ。夫も私も「これからも今と同じでいなければならない」とは考えてはおらず、そしてそのことを私は気に入っています。

※この翻訳は、抄訳です。

Translation:西山 佑(Office Miyazaki Inc.)

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