選択的夫婦別性や、恋愛を超越する親友同士の結婚など、時代とともに変わってきている家族のあり方。

今回は、離婚した元夫と同じ屋根の下で生活しながら、現夫と婚姻関係を結ぶ、一児の母親で経営者でもあるあや香さん(30歳)にインタビュー。「同居離婚」と「別居婚」の両方を経験するあや香さんに、メリットやデメリット、円満な関係を保つ秘訣をを伺いました。


【INDEX】


元夫と「同居離婚」を決意した理由は?

元夫との間にできた子どもを23歳で出産し、25歳のときにダンススクールを開業しました。元夫は二人三脚で私の経営を手伝ってくれていたのですが、様々な場面で価値観の相違が生まれるように。どうしても心の距離ができてしまい、最終的に私たちは“夫婦”の関係ではなくなってしまったんです。

そんな関係がしばらく続き、ふと、「自分を一人の女性として大切にしてくれる人と人生を共にしたい」と思っていることに気づきました。離婚を意識し始めたのは、ちょうどそのタイミングです。

とはいえ、息子のことを思うと、離婚に踏み切るべきかは難しい判断でした。離婚を意識し始めてから約2年間葛藤した末、息子に「長い旅をするとしたら、パパとママ、どっちと一緒がいい?」と聞いてみたところ、彼は「二人と一緒がいい!」と言ったんです。

そのとき改めて、「私たちがパパとママとして一緒にいることが大切だ」と強く感じ、元夫と長い時間をかけて話し合って、同居離婚という新しいカタチをとることに決めました。

father holding hands with child
Malte Mueller//Getty Images

現夫と「別居婚」を決意した理由は?

元夫との離婚後、「自分の人生を幸せなものにしたいし、それを諦めたくない」と、より強く思わせてくれた男性と距離が縮まりました。

大切な息子の幸せや成長を心から願い、傍で見守りたいという強い想いと同時に、自分が女性として、妻として、一人の人間として健やかに生きるには何がベストな選択なのか、自分なりにとことん考えた結果、彼との「別居婚」が頭に浮かびました。

初めは理解に苦しんでいた元夫も、話し合いを重ねるうちに最終的には理解してくれたので、とても感謝しています。

今はどんな生活を送っているのですか?

現夫との家と、子どもが暮らす元夫との住まいの二拠点生活を送っています。

結婚後、現夫が近所に引っ越してくれたんです。なので私は、息子が自宅にいる時間帯は元夫と息子がいる家で暮らして、息子が小学校に行っているときや寝ているときは、現夫との家で生活しています。

son helping mother vacuum carpet
Malte Mueller//Getty Images

同居離婚をして良かったと思う部分は?

正直、私にとってデメリットはあまり思い浮かばないです。逆に、メリットは主に2つ。

1つ目は、「パパとママ、両方と一緒に暮らしたい」という息子の希望を実現できたこと。子どもは生きていく環境を自分で選べないので、離婚してどちらかの親と暮らすパターンが一般的だと思いますが、私たちは二人で息子を見守ることができています。

2つ目は、子育てを分担するので、自由な時間が増えるところ。パートナーがいると育児の両立ができるので、自分だけの時間を持てるのは有難いです。

別居婚をして良かったと思う部分は?

別居婚をして良かったと思う部分も主に2つですね。

1つ目は、母親だけじゃない、様々な一面が持てるようになったこと。母親はもちろん、妻、友達、経営者など、私には色々な顔があり、すべてを諦めなくてもいいということを学びました。

2つ目は、付き合っているときのようなメリハリのある生活ができているのかもしれません。実際、現夫は私がいないときに仕事をしているので、一緒にいるときは充実した時間を過ごせています。

二拠点生活で難しいと感じる部分は?

息子と現夫、世界で最も大切な二人が別々の場所にいるので、同じ空間にいたらできるはずのことが不可能な場合も稀にあります。何か緊急事態があったときに、どっちの家にいたらいいか、その判断も難しいところですね。

また、現夫をすごく愛しているし、愛されているのも伝わるのですが、一般的な夫婦のような時間の使い方はできないので、相手に申し訳なさを感じています。それもあり、この二拠点生活は息子が独り立ちするまでの予定です。

お子さんは今の状況に対してどう感じていると思いますか?

「パパとママは別々の人生を歩むことにしたけれど、あなたにとっては世界でたった一人のパパとママであり続ける」と伝え、「私たちはあなたが大好きで、世界で一番大切な存在だ」と日常的に伝えています。

ほかの家庭とは少し違うかもしれないけど、息子は今の状況に満足していて、毎日を楽しんでくれている気がしています。

baby taking first steps toward mother with arms outstretched
Malte Mueller//Getty Images

同居離婚生活を円満に送る秘訣は?

実は同居離婚をする際に、公正証書でルールを決めたんです。普段ならなんとなく適当に済ませてしまうことも、ちゃんと文章化しておくことが大切だと思います。

たとえば、息子が一人立ちするまでは二拠点生活を続けること、息子と会う権利は平等にあること、勝手に引っ越さないこと、家事分担などのルールを明確に決めています。

家族の在り方が多様化している今、考える理想の社会は?

楽しいことや面白いと感じること、幸せの定義などは十人十色ですよね。理想の家族像や良い母親像もそうですけど、世間が決めた“正解”のようなものを取っ払って、それぞれが自分らしく生きられる社会になればいいなと思います。


現在は、新しい目標を持って大学院への入学を目標に掲げているあや香さん。勇気と行動力を持って、自分の目指す理想を常に追い求める姿に、背中を押される人は多いのではないでしょうか。