脱・業界ウケを狙う、草の根「ライメロ運動」

さて今回のネタは、巷で今一番話題の映画『ラ・ラ・ランド』。それぞれに夢を追ってハリウッドに出てきた男女を主人公に、ミュージカルらしい明るさと能天気さで観客をウキウキさせながら、リアリティの苦さや切なさも感じさせ、10年後にも観客の心に残り続けるラブリーでファンタジックな場面がいくつもある、素晴らしく行き届いた作品です。

そんなわけで映画業界を中心にマスコミ業界は大盛り上がり。作品はカラフルで楽しいし華やかだし、アカデミー賞だって獲得してしまいそうだし――とまあ、そこにはいろんな理由があるのですが、特に業界女子にとって大きな理由は、主演がライアン・ゴズリングだから、それもライアン史上最高にキュートな役を演じているからではないかと思います。先日監督と一緒に来日した際には、会見場がライアン見たさの業界女子で文字通りイモ洗い状態にごった返し、あらためてその人気に驚いたのですが――とここまで読んで、みなさんはきっと思ったに違いありません。

ライアン・ゴズリングって、誰それ?

私の認識が間違っていなければ、日本でのライアンは究極の業界ウケ&映画マニアウケ。ライアン好きを自認する私は、これまでも様々な場面で草の根的に「ライアン・ゴズリングにメロメロ促進運動」をしてきたのですが、いまひとつ功を奏している気がしません。というのもライアンは、「何この人イケメン!」というよりは「何この人…イケメン?」というタイプ、女子100人中イケメン認定してくれるのは47人くらいという微妙なタイプです。『きみに読む物語』『ドライブ』を見ればその魅力は即座にわかるのですが、「4時間も付き合えません」という大合唱が聞こえてきますので、今回は『ラ・ラ・ランド』を例に5分で分かるその魅力を、勝手に、強引に、有無を言わさず、お伝えしたいと思います。

眠い目のライアン・ゴズリング。pinterest
ALBUM//Aflo

恋に生きるロマンチストな変人イケメン

ライアン・ゴズリングの最大の魅力、それは「変人」を演じるのがめっぽう上手いことです。どの映画でも演じているのはある種の変人、もしくは彼が演じることで「変人臭」が加味されたキャラクターです。ベースとしては頑固で孤独、そこに作品ごとの+αが加えられることで、それぞれの「変人キャラ」ができあがってゆきます。

『ラ・ラ・ランド』で演じるセバスチャンもそうしたキャラクター、ジャズを猛烈に愛している才能あるジャズ・ピアニストです。その強いこだわりゆえ、クリスマスの夜に陽気にジングルベルを引き続ける、みたいな金のための仕事が全然できず、憧れていたジャズクラブが意味不明なタパスの店になっているのを見ては苦虫を噛みつぶす毎日を送っています。そしてジャズの話をし始めると長い。いわゆるひとつの面倒くさい男の典型です。

ところがそこまでして守ってきた変人的こだわりを、ライアンは女のために捨ててしまうんですね。なぜかといえば、「変人」だけどめちゃめちゃ「ロマンチスト」だから。これは『きみに読む物語』『ドライブ』に通じる彼の最も得意とするキャラクターで、そこに生まれる「ギャップ萌え」が大きさは、最初の「変人ぶり」が際立っているからに他なりません。

ここで効いてくるのが、あの独特の「眠たい目」です。常に半開きで、笑ってるのか、泣いているのか、怒りで座っているのか、よくわかりません。裏を返せばどうとでも取れる目です。観客は、映画開始直後にはその目の怪しさを警戒していますが、やがてそれぞれの作品の文脈に合わせて勝手に解釈します。そして、あのどろんとした感じは、眠いんじゃないんだわ、憂いなんだわ、寂しいんだわ、孤独なイケメンなんだわ……あらヤダ私ったら、イケメンだなってぜんぜん思ってもいなかったのに、いつのまにか!――みたいな感じになってしまいます……なってしまいます……なってしまいます……(呪文)。

『ラ・ラ・ランド』では、ヒロインのミアを羽ばたかせるために、そこからさらにもう一歩進化するというおまけつき。こういう男こそ、こういう男こそ(大事だから二度)、全女子に必要!――と妄想が膨らんだ分だけ、「現実にはどこにもいないし!」という悶々も、膨らんでしまうかもしれませんが。

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Photo credit: EW0001: Sebastian (Ryan Gosling) and Mia (Emma Stone) in LA LA LAND. Photo courtesy of Lionsgate. (C)2016 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved.