な、なんで、その流れで私が攻撃されるハメに?

スノーリゾートでの休暇中に小さな雪崩に遭遇した一家が、結果論としては何も被害はなかったものの、その瞬間に父親がとっさに一人で逃げたことから、夫婦に不協和音が……という『フレンチアルプスで起きたこと』、前回に引き続き今回もネタはこちらです。いろいろあって中盤からは夫がダダ崩れになりますが、実のところ最初に崩壊するのは妻のほうです。

夫が逃げるとか……ありえない……とショックを受けた妻は、もちろん相当腹を立てているのですが、でも夫は「怒るほどのことした?」的テンションだし、拗ねてしまった子供たちと一緒になって怒るのもどうか……というわけで、残る小さなわだかまりを、友人カップルとの会話の中で「この人ったら一目散に逃げたのよ信じられる?」と笑いにして終わらそうとするのですが、そこで夫が「おいおい勘弁しろよ、俺は逃げてないし」とか言い出します。

最初の時点の妻の思いは「あなたにはガッカリ」程度ですが、この夫の態度――何ひとつ悪びれず、なかったことにしようとしていること――に、なんで? なんで認めないの? なんなのこいつ? 私の結婚した男はこんな男だったの?と、完全な混乱状態に陥ります。

で、彼女が真っ先に何をしたか。夫も子供もいるくせに一人旅で、かつ男を現地調達しながら自由に遊んでいる友人をとっ捕まえ、感情的に糾弾するんですね。こんな感じ。

「行きずりの男と寝るより、誰かと人間関係を築いて、結婚して子供を産む方が価値があるとは思わないの?」

わーお! なんでこっちにとばっちり!?

「だって普通はそうでしょ」で自分の考えを補強する人たち

現実にこういう場面に出くわすと、私は漠然と「なんか辛いことでもあったのかな~」と考え、心の中で「人間だもの」と念仏のように唱えるようにしています。

この場合「行きずりの男と寝る」というのが比較なのでかなり分が悪いのですが、リアルな場面ではもっと別のバリエーションがあります。例えば「自分が生きるためだけに働くなんて虚しくない?」。それから「子供が欲しいから一人で産むなんて…」。「男をとっかえひっかえして、若いからっていい気になって」なーんてのもありそうです。でもって、「結婚して子供を産む方が価値があると思わないの」で、ぐさーっとくる。いやあの、それ以外もそれなりの価値はあると思うんだけどな~と困惑するわけですが、この妻の本当のキラーフレーズはこの後にくるんですね。曰く

「そういうお気楽な考えが、社会への挑発だってわかってる?」

私は自分でいうのもなんですが、お年寄りがいれば真っ先に席を譲るし、駅の階段でベビーカーが往生していればお手伝いもします。節電や節水もすごく意識しているし、無駄なゴミも出さないようにしている。それなりによりよい社会をと思い日々暮らしているつもりです。でもこういうことを言う人には敢えてぶちかましたい。

社会のために生きてんじゃねーんだよ。

社会の多数派であることを疑わない人は、自分の考えが脅かされるとその正しさを補強するために、自分とは別の価値観を「社会」を盾に攻撃するものです。「だって普通はそうでしょ」「一般的にそうじゃない?」「たいていの人はそう思う」。こういう言い方をする女子が多いことに、私は悶々とします。もちろん少数派が行く道はイバラの道かもしれませんが、多数派ってだけで安心できるとでも?

と、そんなことを踏まえながら、良き妻と良き夫、つまり多数派の形をどうにか取り戻した夫婦に起こる、最後のエピソードをぜひご覧ください。見た人の半数以上が「これ何の意味が?」と案じるに違いないラストの小さな挿話の意味が、きっと見えてくるに違いありません。

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