【悶々13】少女たちが暮らす「可愛い楽園」に漂う、不気味な毒

なんて美しい世界……というウットリしてると、次第に「もしやヤバい映画では…?」とわかってくるのが、この映画のキモ。

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この危うい可愛さは……ろ、ロリコン映画?

桜吹雪の中、真新しい制服を着た手乗りサイズの小学生集団が、町を駆け抜けていきます。世知辛い日々の中で、そんな風景に出会うとホッコリします。制服は無個性化と服従の象徴、いうたら「私の苦手なものの代表選手」ですが、やっぱり日本人の血が流れているんでしょうか(日本人の血しか流れてませんけど)、和柄効果というかAKB効果というか、似たような小さいものが一定数集まって醸し出す「可愛さ」には問答無用にやられてしまいます。

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『エコール』は、そんな私の理屈を超えた勘所を撃ち抜いたフランス映画です。「エコール」とはフランス語で「学校」のことで、舞台は深い森に隠された謎めいた寄宿学校。生徒は6歳から12歳までの女の子たちのみで、全員が白いブレザーに丸襟の白い半そでシャツ、白いミニのプリーツスカートという「クラシックなお嬢様のテニスウェア」的制服に身を包み、髪型はあどけないツインテールの一択です。そこに結んだ赤から紫まで6色のリボンの色で学年がわかるという、ラブリーな発想もたまりません。

そうしたたくさんの少女たちが、まるでヘンリー・ダーガーの絵(こんな感じ)のようにときに平気で真っ裸だったりしながら天衣無縫に暮らす世界は、まさに閉ざされた楽園のようですが――やがてこの「可愛さ」は「売り物」であることが分かってきます。

あああ、こいつは紛れもない真性ロリコン映画や...…ユートピア的に見える"まっぱで川遊び"とか"下着姿でフラフープ"とか"半裸のくすぐりっこ"とか、実はすごくヤバいんじゃなかろか……映画を見ている最中に、不安はどんどん膨らんでいきます。

特にヤバいのは、この世界観があまりに美しく描かれていることです。映画の"深いところ"まで思い至らない十代の少女たちが、その美しさのみに心奪われウットリと浸り、翌日から"純白セットアップ&ツインテールwithリボン"の一人制服を始め、オッサン相手にロリータ気取り始めたらどないしよ――と、どないもこないもできない私は、暗闇の中ひとり悶々としたのを覚えています。

「可愛さ」売りは、はたして得か損か。

理屈抜きで人を魅了してしまう「可愛い」は、知らぬ間に周囲にそれが作用してしまう特定世代の女子にとっては絶大な武器です。そりゃあ「可愛いから許す」「可愛いから買ってあげよう」「可愛いから採用決定」「可愛いから稼げる」と言われ続ければ、「可愛さ=無敵」と考えるようになっても不思議はありません。女子校生~20代前半くらいの女子が妙に「怖いものなし」なのは、意識無意識に自分が高く売れる「売り物」であることを知っているからです。

問題は「可愛い」を「売り物」にして何かを得ることが常態化し、そのサイクルから抜け出せなくなることです。「売り物」になったが最後、買い手のつかない「可愛さ」は無価値にひとしく、でもそれ以外の「売り物」がなければ、「可愛さ」を売ることから降りることもできません。「可愛さ」の時代が終わった後も。優位に立っているように見えて、その実買い手との関係で主導権を取り続けることはまず不可能です。

映画の"深いところ"はこうです。学校の地下にある秘密の舞台では、最年長"紫リボン"の少女たちが、正体不明のおっさんたちを観客に、ひらひらとした蝶の羽をつけて毎夜踊っています。初舞台を終えて言いようのない気持ち悪さに襲われている新人に、先輩が言います。「次はもっと楽にやれる」。それでも「もうあそこはイヤ」という新人の言葉を、先輩は今度はぴしゃりと封じ込めます。「そんなこと許されないのよ」。だって「エコール」は、この「可愛さ」の稼ぎで成り立っているのですから。

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 (C) L'Ecole,byLucileHadzhalilovi

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