アメリカのジョー・バイデン大統領が、「紛争下の性的暴力」の被害者に対する支援をさらに強化し、加害者の説明責任を追及するための「大統領覚書」に署名しました。ホワイトハウスによると、署名によって法的効力を持つものとなったこの覚書は、紛争下の性的暴力に対するアメリカ政府の姿勢をより明確にするためのものだと言います。

ホワイトハウスの発表文によると、覚書には、紛争下の性的暴力は「権限を持つ機関が(加害者に)制裁を課す際、その他の深刻な人権侵害と同等に考えられるべきもの」だと明記されています。

※この記事には性暴力に関する露骨な表現が含まれます。


今年2月にウクライナに軍事侵攻したロシアは、レイプを「武器」として使用しており、これにより多くの人が被害に遭う悲劇的な状況となっています。国連(UN)によると、戦闘が始まって以来、ウクライナで報告されたレイプや性的暴行の被害は、100件を超えていると言います。

国連で紛争下の性的暴力の問題を担当する事務総長特別代表(SRSG)、プラミラ・パッテン氏は10月に応じた<AFP>のインタビューのなかで、この問題について次のように語りました。

「女性たちが何日も拘束されてレイプされ、少年や男性もレイプされるようになり、性器切除の例が相次いで確認され、女性たちは『ロシア兵はバイアグラ(勃起不全治療薬)を持っていた』と証言しています。これは明らかに、軍事戦略です」

ホワイトハウスはこうした状況について、「アメリカがこうした暴力を、武力紛争の避けられない代償として認めることはありません」と明言。覚書のなかで、「今後こうした暴力が使われることを阻止するため、法律、政策、外交、財政支援などのあらゆる手段を通じて、被害者を支援していくことを確約します」と述べました。

この覚書は、バイデン政権が国連への支援の強化を通じて、加害者側への対応をさらに強化する考えであることも示しています。アメリカ政府はSRSGが司法制度を通じて加害者の説明責任を問う活動を支援するため、来年9月までに40万ドル(約5600万円)の追加支援を行う予定です。

また、アメリカ国務省の民主主義・人権・労働局(DRL)は、ウクライナのほかビルマ(ミャンマー)、スリランカにおける紛争下の性的暴力について調査・記録する民間の活動を支援するため、450万ドル(約6億2300万円)以上の支援を行い、さらに今後2年の間に、およそ550万ドル(約7億6100円)を拠出する計画とのこと。

そのほか国務省は、被害を受けた人たちへの支援を継続するとともに、被害者の司法制度や保護、関連サービスへのアクセスの向上に向け、活動を強化していく方針です。

From: Harper's BAZAAR JP