4年に1度行われるアメリカ大統領選挙。2016年の選挙では、民主党のヒラリー・クリントン候補と共和党のドナルド・トランプ候補(現・大統領)が一騎打ち。

「初の女性大統領誕生なるか?」という点からも大きな話題となったけれど、実は前回の選挙において、トランプ氏の最大の支持層は「白人女性」という結果が出たとか。白人女性の52%がトランプ氏に投票したのに対し、黒人女性は4%、ラテン系女性は25%であったことが出口調査で明らかに。

また、<マリ・クレール>の独自のデータ分析によれば、もし白人女性のみで大統領選を行ったと仮定した場合、トランプ氏はさらに51人もの選挙人(アメリカ大統領選挙では、まず有権者が「選挙人」と呼ばれる人を選び、その「選挙人」が大統領を選ぶという間接選挙制が採用されている)を獲得していたとのこと。

これは、ちょっと意外な気もする結果。トランプ氏に投票した女性たちには「ヒラリー・クリントンが嫌いだったから」「トランプはこれまでとは異なるリーダーの在り方を見せてくれそうだったから」「これまでと同じような“普通の”政治家はもういらない」といった理由が。しかし、在任からこれまでの過去4年を振り返り、自分の投票に後悔した女性たちは多いよう。

candidates hillary clinton and donald trump hold second presidential debate at washington university
Chip Somodevilla//Getty Images

そこで、「前回はトランプ氏に投票したけれど、今回は絶対に投票しない!」と考えを改めた白人女性たちの告白を<マリ・クレール>からお届けします。日本にも大きな影響を与えるアメリカ大統領選。彼女たちの意見から、今のアメリカが見えてくるかもしれません。


※以下、発言者の一人称として表記(注釈をのぞく)

テイラー・Kさん(26歳、バージニア州在住)

私が今回「民主党の大統領候補、ジョー・バイデン氏に投票する」と決めていることは、両親も知っています。けれど、彼らは私の決断に反対しており、「バイデン氏に入れないでほしい」と言うほどです。でも、私はこの4年間の社会を見てきた上で、道徳的な意味からもトランプ氏を支持することはできません。

2016年の選挙では、2人の候補者には大きな違いがありました。私はヒラリー(・クリントン氏)を「非常に腐敗した人物」だと思っていたので、第三党(民主党でも共和党でもない党)に投票することも検討しました。しかし、第三党の候補者が勝つ可能性は低く、結局は票が無駄になってしまうのはもったいないと考え、トランプ氏に投票したのです。

トランプ政権を見てきて、トランプ氏に投票したのは間違いだったと気づきました。気づいたのがいつだったのかはっきりとは覚えていませんが、彼のツイートやメディアでの発言、そして最高裁判事に任命していた人たちの顔ぶれなど、ひとつひとつが積み重なり、そう思うにいたったのだと思います。誰に投票すべきか迷っていた時期もありましたが、特にこの1年で考えが固まり、バイデン氏に投票することに決めました。

トランプ氏が再選しても、私はヘテロセクシャルの白人なので個人の生活には大きな影響はないかもしれません。しかし、“女性である”という点では影響があるかもしれませんし、またLGBTQ+やBLACK LIVES MATTER運動には大きな打撃になるでしょう。常に弱い立場の人たちの視点から社会を考えるべきだと、(白人女性たち)に言いたいです。

donald trump and joe biden participate in first presidential debate
Pool//Getty Images

ジョニ・Fさん(61歳、モンタナ州在住)

私はあと数週間で62歳になる(取材当時)、モンタナ州在住の女性です。これまでずっと共和党支持者として生きてきました。1980年の大統領選では、ロナルド・レーガン氏に投票しました。

2016年にドナルド・トランプ氏に投票したのは、ヒラリー・クリントン氏が好きになれなかったからです。彼女は不誠実かつ日和見主義者で、大統領選に立候補したのは「“自分が”アメリカ史上初の女性大統領になりたいから」なのだと感じていました。彼女はいつも「“私が”女性初の大統領に就任する」と語っていましたが、それに嫌悪感を抱いていました。

逆に、トランプ氏については、女性についての発言やふるまい含め、特に気にとめていませんでしたね。あるとき「政治経験のない彼が大統領になって何をするか見てみたい」と思ったんです。これまでとは異なる方法で、何かを成し遂げてくれるのかも、と期待しました。しかし、期待したことは何も起こりませんでした。

当時の私は、誰に投票したのかを人に語ることはほとんどなく、実際、夫の前ですら口に出しませんでした。でも夫は、私がトランプ氏に投票したことを知っていたと思います。夫は民主党支持者なんです。彼は穏健な民主党支持者で、私も穏健な共和党支持者としてこれまでやってきました。2008年には初めて民主党(のバラク・オバマ氏)に投票しましたが、2012年は共和党の候補、ミット・ロムニー氏に投票しました。

夫は、今回の私の決断を支持し、誇りに思ってくれています。私自身、これまで政治に強く関心を持ったことはありませんでした。しかし「トランプ政権を終わらせたい」という思いから、「トランプに投票しない共和党投票者の会(RVAT)」と「バイデン氏を支持する第43代同窓会」のために、推薦ビデオを作ることになりました。バイデン氏は党派を超えて 物事を成し遂げることができると人物だと信じています。バイデン氏の選挙キャンペーンとリンカーン・プロジェクト(反トランプの共和党系スーパーPAC/特別政治行動委員会)に寄付もしました。

また、現在は(トランプ氏に批判的な報道も辞さない)CNNも視聴するようにして、夫婦で政治について話すようにもなりました。以前は「そんな話はしたくない。政治には興味がないから」と言っていたぐらいなのに。夫は「今でもトランプ氏を支持していたら、君と離婚してたかも」と言いますが、私も「それもそうだよね」と答えています。

トランプ氏が就任する前は、彼がとんでもないことを言ったりやったりするたびに、「それはトランプ氏のやり方だから(仕方ない)」と自分に言い聞かせていました。しかし、彼が大統領に就任してからは、彼の行動は荒唐無稽を超えて“危険”だと感じています。

2018年に共和党の重鎮であったジョン・マケイン(2008年にオバマ氏に敗北した共和党の大統領候補)が亡くなったとき、ホワイトハウスに掲げられた国旗の半旗掲揚について二転三転しましたが(※1)、このとき「潮目が変わった」と感じました。彼の遺族への接し方にはうんざりしましたし、そのころからトランプ氏の行動を微細にいたるまで観察するようになりました。

sen john mccain's r az body is transported from us capitol to the national cathedral for memorial
Chip Somodevilla//Getty Images

彼が新型コロナウィルスに感染したとき、私は怒りを覚えました。そして死亡したジョージ・フロイド氏への発言には本当にうんざりです。トランプ氏の経済政策は偽りそのもの。一見良さげに見えますが、それは実態とはかけ離れています。株式市場の動向を経済と見なす人は多いですが、実体経済は株式市場と同じではありません。私にはトランプ氏が共和党の意見を代表しているとは思えないのです。

今回、私がバイデン氏に投票することを明言していることで、近所の人から非難されることもあります。たとえ反対意見でも「あなたとは意見が合わないけれど 友達や隣人でいたくないわけじゃないから」と尊重してくれる人もいます。熱心なキリスト教徒の隣人に避けられることもありますが、でも、私自身もキリスト教徒なんです。人を避けるなんて、キリスト教徒らしくない行動ですよね。

家族ぐるみで付き合っているキリスト教徒福音派の友人がいますが、彼らは筋金入りのトランプ支持者です。トランプ氏について誰が何を言おうと、彼らは意見を変えません。トランプ氏の集会で見る人たちと同じ。マスクを装着しないし、人と集まることもやめない。トランプ氏の言うことは何でも正しいと思っているんです。

今こそ、トランプ政権を終わらせるときです。現在だってひどい状況なのに、あと4年もこの政権が続いたら、どうなってしまうかわかりません。この国は再生不能になってしまいます。本当に「神様助けて!」という気持ちです。

※1)マケイン氏のような国家に大きく貢献した公職者が死去した場合、それに敬意と哀悼の意を表し、ホワイトハウスならび連邦議会などに掲揚されている国旗を一定の期間半旗にする慣習があるものの、ホワイトハウスはこの時、国旗を半旗にしたりそれをまた戻したり繰り返すなどの異例の対応を取り、大きな批判を受けた。その背景には、過去に激しい対立を繰り返してきた、トランプ氏とマケイン氏の関係性があると考えらている


アン・Kさん(59歳、アリゾナ州在住)

私は“普通の”政治家に幻滅していました。普通の政治家ではない人が大統領になり、この国を変えてほしいと考え、さらにオバマ大統領の行動にネガティブな印象を受けていたので、ヒラリー・クリントン氏を支持するつもりはありませんでした。

2016年のある日、「政治の領域から外れた人(=トランプ氏)の方が良いのかもしれない。きっと大丈夫なはず」と思いました。彼がどれだけ恐ろしい人物か、そのときはまだ知らなかったのです。私は彼に投票したのではなく、既成概念に反対して投票したのです。

息子が「彼はナチスそのものだよ!」と叫んだことがありましたが、そのことで家族が対立することはありませんでした。私はそのとき、「そんなにひどい事態ことになるはずないでしょ? アメリカには、現状確認とバランスを取るシステムが構築されているじゃない」と言ったのを覚えています。その後、共和党がただの“ゴマすり”たちの集まりになるとは…予想していなかったんです。

私にとって転機となったのは、今年6月にトランプ氏がラファイエット広場(ワシントン)の平和的なデモに対し、軍を派遣したときです。この出来事で目が覚めました。彼には敬意も人徳も誠実さも正直さもない…と。

protesters demonstrate in dc against death of george floyd by police officer in minneapolis
Drew Angerer//Getty Images

私は誠実な父に育てられました。父は誠実に人に接し、周りの人も同じように接してくれていたのです。しかし、デモのニュースを見た私は頭を抱えてしまいました。トランプ氏に投票する前に、もっと彼について知っておくべきでした。私が共和党支持者になることは金輪際ないだろうと思っています。

アメリカでは20万人以上の人々が新型コロナウイルス感染症で亡くなりましたが、私自身にも責任の一端があると感じています。現在ホワイトハウスを占拠している邪悪な存在が国民をだまし通して再選してしまったら、それは“アメリカの死”を暗示するでしょう。彼はファシストであり、「終身大統領」になりたがっているだけなのです。

私のきょうだいとその家族はみんな、熱狂的なトランプ支持者です。彼らは私を「クレイジー 」と呼び、「遠くに住んでいるから、あなたたち家族ことは存在しないものと思うことにする」とまで言っています。

6月3日だったと記憶していますが、そのきょうだいがフェイスブックに「トランプ氏こそが私の大統領です。彼はなんだか誤解されているけれど…」などと、長い文章を投稿しました。これを読んだ私の娘(=アンさんとは非同居)は、「いまだにトランプ氏に投票しようとしているなんて、ありえない」とコメントしました。トランプ氏にまつわるすべての事実を把握するのは無理ですが、彼が自分以外の“誰か”のことを少しでも気にかけるような人物だと思っているのであれば、それはただの妄想だと早く気づくべきです。

その晩、娘はそのきょうだいに電話をしましたが、“トランプ教”を妄信しているため考えを変えず、娘にひどいことを言って電話を切りました。娘は泣きながら夫に電話をかけてきましたが、それと同時にきょうだいから私にテキストメッセージが届きました。

そこには「あなたの娘から電話がありました。『誰に投票すべきか』『誰に投票してはいけないか』あれこれと言われました。今後、二度と彼女と口をきくことはないでしょう」とありました。毎年お互いの誕生日に電話をするのを習わしとしてきましたが、今年は私が電話をしても、きょうだいは電話に出ませんでしたね。

私はこれまで、政治について人と議論したことがほとんどありません。しかし、今回の選挙は少なくとも私にとっては、「民主党 VS 共和党の選挙」という構図だけではないのです。善悪にかかわる選挙であり、国の未来を決めるものなのです。

大統領選を通じて、多くの家族が引き裂かれたはずです。これは本当に悲しいこと。私はきょうだい家族との縁を失いましたが、今でも毎日彼らのために祈っています。本当に悲しい気持ちでいっぱいです。


ジェシカ・Fさん(49歳、ジョージア州)

私はジョージア州のロックマートという小さな町に住んでいます。(2016年の選挙では)郡全体がドナルド・トランプ氏に投票しました。

私が彼に投票したのは、他の多くの人が思ったように、ベテラン政治家とは違うことをしてくれるだろうと思ったからです。トランプ氏が国民のためになる良いアイデアをいろいろ持っていると信じていましたし、地域の工業化や製造業を再生するなど、今アメリカが必要としていることについて“聞き心地の良い約束”をしてくれました。

しかし、こうした約束は何ひとつ実現しませんでした。

自分の間違いに気づいたのは、新型コロナウイルスの感染が拡大したときです。私は典型的なトランプ信奉者ではないと自負しているので、彼を妄信していたわけではありせんし「アメリカを再び偉大なものにする!」と叫ぶタイプでもありません。また、トランプ氏への批判を目にする度に、以前は「何もかも政府のせいにしている」「野党支持者にありがちな行動」ぐらいに思い、特に気にかけていませんでした。

しかし感染が拡大してもまったく状況改善のための責任を果たさないトランプ氏を見て、衝撃を受けました。大統領が責任を取らないのなら、一体誰が責任を取るのでしょう…。彼は事態が悪化していることを知っているのに、そのようには説明しませんでした。パニックを煽りたくなかったからではないのです。彼は自分を良く見せたいためだけに、事実を隠し通そうとしました。

このパンデミックが起こっていなければ、ジョージ・フロイド氏に起こったような悲劇が、さらに起こっていたかもしれません。人種差別主義的発言を露骨に語る人を支持できませんし、私が彼に投票することはもう二度とないでしょう。トランプ氏のやり方はまったく評価できないですし、このことではなく、一事が万事こんな感じなのです。

2016年の大統領選において、最大のトランプ支持層だったのは、非都市部に住む白人女性だったと言います。しかしこの4年間で、おそらく彼女たちも自分たちの声が共和党に届いていないと感じたはずです。

一般的に、女性たちは「選挙や大きなキャンペーンにおいて、自分たちの声はなかなか届かない」と感じているものですが、このことがトランプ氏に期待するきっかけとなり、彼を勝利へと導いてしまったのかもしれません。

バイデン氏が勝利すれば、来年からの4年間、私たちはバイデン氏の動向を見ることになります。私個人としては、ホワイトハウスの原動力になるのはカマラ・ハリス氏(民主党・副大統領候補)だと思っています。

トランプ氏を妄信し「再びアメリカを偉大な国に」と思っている白人女性の熱狂的な支持層は、ハリス氏を支持しないでしょう。理由は簡単。彼女が白人ではないからです。しかし、今後もこういった差別意識が続いていくのか、または女性たちが「私たちの声をくみ取ってくれる強い女性がホワイトハウスにいる」と考えるようになるのか、先のことはまだ分かりません。

us politics vote democrats
OLIVIER DOULIERY//Getty Images

私はこれまで党派に関わらず、自分が良いと思う人に投票してきました。オバマ氏に投票し、ビル・クリントン氏に投票し、ブッシュ氏に投票したのは、政党がすべてだとは思わないからです。

今回の選挙でも、私はバイデン氏を100%支持しているわけではありません。しかし、彼は社会主義者のように見えないですし、合衆国憲法修正第2条の権利や言論の自由を奪おうとしているとは思えません。また、彼が無条件に妊娠中絶を合法化しようとしているとも思えない。私はトランプ氏がこの国を分断し、私たちの生活を破壊しつづけることに我慢できないのです。

選挙ですから、誰もが「しっかり仕事をしてくれる」と思える候補に投票するでしょう。もし大統領がきちんと任務を遂行しない場合でも、大抵の場合は国民の力でダメージを修復することが可能です。

しかし、トランプ氏の場合は違います。彼がもたらすダメージは修復不可能なのです。 彼のしていることは政策以上のことであり、国家と国民を破壊してしまいます。たくさんの人がこの事実に気づき、考えを変えてほしいです。考えは変えても良いものだし、疑問を持ってもいいのです。私が考えを変えたように、現状に疑問を持っているのはあなただけではないのです。

※記事は一部、編集・短縮されています。

この翻訳は、抄訳です。

Translation: 宮田華子

MARIE CLAIRE