性のこと、自分の体のこと、パートナーとのこと、そして自分が心地よさを抱けているかということ。これらは全部大事にしたい、「セクシャルウェルネス」です。

「みんなのセクシャルウェルネス」連載では、自身の欲を満たし、性を肯定し、パートナーとのコミュニケーションもより豊かにするようなアイテムやサービスにフォーカス。それに対するこだわりや思い入れだけでなく、「自分に何をもたらすか」を掘り下げます。

第三回は、ベルギーでライター/ポッドキャスト配信者としてフェミニズムやセックス、サステナビリティにまつわるトピックについて語るNadiaさんが登場。明るく性と向き合うパワフルさと繊細さを兼ね備えるNadiaさんの、心のよりどころとなったアイテムは?

Nadiaさん

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Nadia
「ドイツ出身の母と、アルジェリア出身の父の間にベルリンで生まれ、育ちました。現在はライター・ポッドキャスト配信者として活躍中。関心のあるテーマはフェミニズムやサステナビリティ、ダイバーシティ、セックス、ラブ、メンタルヘルスなど…。難しく感じられる事柄も共感できるように紐解き、対話を拓くことを目指しています。

プライベートでは自分をもっていると思いますが、まだまだ“弱さ”も。ここ数年でセラピーや自分と向き合う時間を通して、人生のバランスをつかもうと動き出しました。今はシングル。バイセップスという名前のフレンチブルドッグと暮らしています」

冷たくて重たいステンレスが深い快感へ

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Nadia

お気に入りのアイテムは、「njyo」のPure Wandです。 

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このセックストイはこれまで使ってきたほかの製品とは明らかに違って、とってもユニーク。素材がステンレススチールなので、最初手に取ると冷たさがあって、重さも少しあります。また、振動もしません。

だからこそゆっくりとマスターベーションを楽しんだり、感じ方を観察しながら使うのにぴったり。もちろんたまには、さくっとオーガズムに達して眠りにつきたい日だってありますよね。でもこれは時間をかける価値がとにかくあります。気持ちいいところを探す楽しさや、深い快感が味わえるんです。

バイブレーターでは慣れてしまって、“作業”のようにオーガズムを得るために使っていることに気が付きました。また、日常的に使うと感覚が鈍ってしまって、パートナーとプレジャーを楽しむ際に影響がでることも。なので最近は使用頻度を調整しています。

このトイはカーブを描く形で作られているので、膣口から少し入った前壁に近いGスポットにあたります。ここは指を使うと疲れてしまうこともあるので、このトイで刺激するのが自分は好きです。両端には異なる大きさの球がついています。ダイレクトに感じたいか、より深みを感じたいか、好みに合わせられるのも最高!

可能性に「気づいていない」だけかも

このトイを買ったのは2020年の春、はじめての新型コロナウイルスによるロックダウンの頃でした。多くの人がそうだったかと思いますが、家でやることがなくて。新しい“スキル”や自分の可能性、そして体のことなど…これまで知らなかったことを学ぶのにぴったりだなって思ったんです。

Gスポットについて聞いたことはあったし、それがなにかは知っていました。しかし実際さらに踏み込んで、自分のGスポットがどんな風になっていて、どんな感じ方をするのかもわからなかったし、人に「こう触られるのが好き」と伝えたこともなくて。

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Nadia

Gスポットについて調べていくうちにこのトイを多く目にするようになり、思い切ってオンラインでの購入に踏み切りました。ロックダウン中に何度も試すうちに、自分の体のさらなる理解につながっていきました。

女性の性欲は“恥ずかしい”もの?

セックスに対して、ずっと昔から憧れはもっていた方だと思います。現在35歳の私が20代だったころは、セックスは“パートナーとだけ”する行為っていう認識でした。性欲もずっとあったし新しい行為を試すことへの好奇心も旺盛だったにもかかわらず、「パートナーはそんな私の一面は見たくないはずだ」「恥ずかしいこと」って思いこんでいて。ずっと自分の声を無視してきましたね。実際はほぼ毎日マスターベーションをしていたんですが(笑)。

でもきっとこの感覚って、男性に対して性的欲求の伴う恋愛感情を抱いたことのある女性の多くが経験していると思うんです。自分の性欲は男性のパートナーありきで存在しているような、または相手の欲を満たすことがなにより大切とされているような…。そう思わされて、私たちは育ってきている気がします。

自分の性を観察したり、相手にそれを伝えることはおざさりなのが当たり前になってしまっているのかもしれません。 私はこれまで付き合っていた相手に「○○すぎる」または、「もっと○○であってほしい」と思われるのがすごく怖くて、自分の欲求には蓋をずっとしてきました。

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Nadia

パートナーを傷つけてしまうことへの恐れも…

30歳になるまでは、マスターベーションをするときはいつも手や指を使ってきました。実際どこにでも“連れていける”し、“操作”も簡単。一番使いやすいツールだったので、それで満足をしていました。実際最高ではあるんですが、まあ飽きてくることもありますよね…。

それでも自分のことを“性に開放的”だとは思えなかったし、セックストイを使うほどの自信や好奇心が足りていないと思っていました。彼氏にバイブを持っているのが見つかって、傷つけてしまうのも嫌でした。今思うと、パートナーがいるのにマスターベーションをするのはよくないことだって感じていたのかもしれません。

そんなに“強い”性欲があることに対して罪悪感もあったし、特に交際がうまくいっていなくてセックスの回数が減っているときはより自分を責めました。自分の頭の中で「一体どんな彼女が、彼をほったらかしにしているときに、マスターベーションはしたいって思うの? 」って。

まずは「自分を知る」ことから

でもシングルになったことで、自分のことをもっと知る余白が生まれました。30歳を迎えて最後に交際していた人と別れたときに、初めて自分らしくあることを学べた気がしていて。やっと自分自身の性と健康的に向き合うことの大切さを実感したんです。相手ありきではないので交際関係にヒビが入る心配もなく、自分の好きなことは何か・誰とするのが好きかなどを探せるようになりました。

自分のことを知るってこんなに大事だったんだって! 自分がなにを求めているかが分かるようになるので、相手とのコミュニケーションも上手になります。自分の感情を把握して、それをきちんと認識することで、本当にセックスライフが向上しました!

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Nadia

この5年で自分のセクシュアリティはパンセクシャル(全性愛)だろうなと気づけたのも、大きな発見です。数は少ないものの、女性と性的関係をもったことで自分の性的指向に対する考え方がすごく広まった気がします。クィアな関係性では、セックストイはもっと“普通”で、カジュアルに交際している日常に登場する印象です。おかげで罪悪感や自分を責めるような気持ちとは折り合いが付きました。

今の私はセックスについて語ったり、新しいことに挑戦をしたり、自分の欲求に素直になったり、友達にアドバイスをしてみたりすることなどが、心地よくできるようになりました。 私の輪郭を形作るものの中で、セックスはすごく大切な要素。自分の興味をもっと知ろうとした自分を褒めたいし、自分が何が好きで何がほしくて、どんな人間であるか、ということに対して胸がはれるようになりました。

自分を愛して他人とも!

セルフプレジャーのためのアイテムは満足がいくくらいいろいろ使ってきたかなって思っているので、これからはパートナーと使うことが想定されているものに興味があるかな。

ずっと、セックススイングは使ってみたいなって好奇心があります。重力に逆らいながらセックスするなんて、すっごく楽しそう。