性のこと、自分の体のこと、パートナーとのこと、そして自分が心地よさを抱けているかということ。これらは全部大事にしたい、「セクシャルウェルネス」です。

みんなのセクシャルウェルネス」連載では、自身の欲を満たし、性を肯定し、パートナーとのコミュニケーションもより豊かにするようなアイテムやサービスにフォーカス。それに対するこだわりや思い入れだけでなく、「自分に何をもたらすか」を掘り下げます。

第四回は、メンタルヘルスを中心に、自分たちの視点を生かした社会課題に対する発信をする「blossom the project」を立ち上げた中川ホフマン愛さんが登場。日ごろから自分のこころや気持ちの働きに耳を傾ける愛さんだからこその、セクシャルウェルネスとの関係性とは。

中川ホフマン愛(めぐ)さん

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Meg Nakagawa Hoffman
大阪生まれの南アフリカと日本のミックス。ニューヨーク大学で政治学を勉強し、現在はカリフォルニアのロースクールで弁護士の資格を取るために勉強中。2020年3月にblossom the projectを設立し、「メンタルヘルス×社会問題」についてインスタグラムを中心に発信。

はじめてのトイには特別な思いが

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Meg Nakagawa Hoffman
bloomi play mini vibrator

私のお気に入りは、「bloomi」という会社のトイ。bloomには(わたしが立ち上げた)「blossom the project」と同じように「咲く」という意味があって、会社の設立者がラテン系女性起業家と性科学者であることに興味をもちました。

トイに使われているシリコンや素材はすべて医療グレード(医療用の認証を受けたもの)で、エシカルに作られているにも魅力を感じます。

女性のセルフプレジャーへの偏見も…

買う前からずっとトイに興味はありました。ただ、どこから探し始めたらいいのかわからなく、女性のセルフプレジャーへの偏見もあって、なかなか手に入れようと思えませんでした。

友達とセックスについて話すことがあってもセルフ・プレジャーについて話すことはほとんどなく…。自分の中にあった偏見は、「トイを使う人は特別なフェチやキンク(性癖)をもっている人なんだろう」ということ。そんな私が、誰もが使っていいんだと思ったのは友人がオープンに「私使ってるよ」とシェアしてくれたのがきっかけです。

開発者の思いに共感

自分に合ったトイに出合うため、まずはネットで調べました! そのとき探していたのは、複雑でなくて簡単にもち運びできるものや、デザインも機能がシンプルなものなど。「こんなトイもあるんだ〜」と思いながら、いろんな会社の背景や商品への想いなどもしっかりと調べ、最終的にbloomiを見つけました。

Bloomiのマーケティングはすごく包括的で、セックスを「女性と男性の間でするもの」に限定せず、いろんな人々の性経験を取り入れている点が魅力的。ウェブサイトにもセックスに関する記事などが掲載されていて、性科学者が開発した商品だからこそあらゆる人の性的ニーズに合わせて作られていることが分かります。

自分の中の偏見に自覚があった私ですが、女性の性欲が見過ごされていることにおかしいって感じたり、「恥ずかしいもの」って思わされているんだなと感じるようになって。 Bloomiにはトイ初心者から慣れている人向けのものまで幅広い商品の選択があるので、私はビギナーにぴったりなサイズと機能をもつplay mini vibrator に決めました。

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Meg Nakagawa Hoffman
play mini vibrator

「恥ずかしいことじゃないのに」

私は今カリフォルニアに住んでいるので、近くのターゲット(生活用品もそろえる大型スーパー)に売っていました。「トイへの偏見はなくなるべき! 」という思いを抱えて、“堂々”と店舗に入って購入。

しかし、レジで男性の店員が面白がって少し笑っているのを見て、少し恥ずかしい気持ちになったのを覚えています。「恥ずかしいことじゃないのに」と自分の中で思ったのですが、周りにはまだ偏見があるんだなーと思いましたね。

わたしが恥ずかしがっては、「女性がトイを買うことは恥ずかしいこと」というイメージが強まってしまう! そう思って、ノーリアクションを貫いてお店を出ました。

こころの健康とつながっている?

メンタルヘルスと社会問題について発信する団体「blossom the project」では、日常生活でもメンタルヘルスを重視しています。セクシャル・ウェルネスはメンタルヘルスの維持に大きく関係しているので、私自身のセルフプレジャーに目を向けるようにしました。

もちろんセックスと愛を別々として見る人もいると思いますが、私はセルフプレジャーにはたくさんの“自分への愛”があると思います。「自分に一番愛を与えられるのは自分だけ」。相手から求めるのが悪いというわけではないけど、自分で自分に与えるという行動は、ものすごくパワフルだと感じます。

パートナーがいないと孤独を感じる人も多いのではないでしょうか。実際、私自身もそうでした。これまではパートナーがいることで心の中の“空っぽ感”を埋めていたように思います。でも、その空っぽを埋められるのは自分だけなんだと気づいたのはセルフプレジャーを通して自分と向き合う時間が増え、自分の心と身体を深く理解することができたからだなって。

自分と向き合う時間を大切に

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Meg Nakagawa Hoffman

今でも性に関する話は“いやらしく”て、オープンに話してはいけないことだという世間の印象は感じますが、自分にとってはそうじゃなくて。セックスに興味をもつことは悪くないし、誰もがトイを使ってもいいんだと思えるようになりました。 今、トイは私にとって私のセクシャルウェルネスとセルフプレジャーを楽しむためのものであって、自分のセクシュアリティをさらに探求できるきっかけになったと思います。

そして、セルフプレジャーを探求することで、自分をもっと愛せるようになりました。自分の身体を誰よりも知っているのは自分。だからこそ、自分にとって気持ちがいいと思えることも、気持ちよくないと思うこともより深く理解することができるようになったと思います。

これまでは仕事に追われたり、仕事の後は友人と過ごしたり、「一人」でいる時間を通して自分と向き合うことが少なかったと感じます。私にとってセルフプレジャーは、自分と向き合う時間の一つです。自分との“リレーションシップ”を深めることで、それが周りの人との関係を強めると思います。