エモフィリア(Emophilia)」とは、急速に・頻繁に惚れこみやすい恋愛傾向を持つ人を指す言葉。

これには「出会ってすぐに好きになりやすい」や「簡単に恋愛関係を持ってしまいやすい」、「頻繁に恋愛的な惹かれやすい」「一瞬で運命の人だと思いこんでしまいやすい」などを含み、その様相や結びつく行動には個人差があります。

もちろん、健全な関係を築ける相手とであれば、一瞬のうちに恋に落ちること自体には問題はありません。一方で、エモフィリアは精神疾患ではないものの、状態が進行することによる危険性も指摘されています。

その一つが、相手が持つ有害な兆候を無視して恋に落ちてしまうこと。これにより、「ダークトライアド」に代表される非道徳的な人格特性を持つ人にも惹かれやすいという研究結果も存在しています。

恋愛感情につけこみ、相手を弱い立場に追いやることもあるダークトライアド。その特徴とエモフィリアとの関連性、ダークトライアドの傾向を持つ人と恋愛をするときの注意点を紹介します。

「ダークトライアド」とは

マキャベリアニズム、サイコパシー、ナルシシズムといった、共感性が欠如した非道徳的な3つの人格特性を総称した言葉。重なり合う部分もあるものの、それぞれの主な特徴は次の通り。

3つの人格特性の主な特徴

  • マキャベリアニズム :狡猾で人を操作しようとする、他人を信用せず目的のために手段を選ばない
  • サイコパシー:共感性や良心の欠如、表面的な魅力、衝動的、反社会的、冷淡
  • ナルシシズム:自己陶酔的、強い自己顕示欲、利己的

ダークトライアドに惹かれやすい人の特徴

近年の研究で示されたのは、エモフィリアの特性値が高い人の方が、ダークトライアドの特性を持つ人を理想の相手と判断しやすいということ。

また、ダークトライアドの特徴を持ったいくつかの男性のプロフィールを生成し、それらを異性愛者の女性たちに評価してもらうという手法をとった研究でも、エモフィリアの特性値が高い女性の方がダークトライアドの特性を持った男性のプロフィールに惹かれやすいことが示されています。研究対象に異性愛者の女性が選ばれた理由として、男性の方がダークトライアドの特性が高い傾向があるという背景も記述されています。

前述の通り「エモフィリア」は、その恋愛傾向から相手の有害な特徴を無視して恋に落ちてしまうリスクを抱えています。そのため、ダークトライアドの人格特性を持つ相手と“不健全”となりえる関係に陥りやすいという実態があることを、これらの研究は表しているといえます。

相手の有害性に気づきにくい理由

エセックス大学の社会・人格心理学者であり、恋愛における信頼・依存関係を研究するヴェロニカ・ラマルシュ博士は、この実態について次のように説明。

「恋に落ちやすく、恋愛がもたらすポジティブな側面にばかり目を向けがちな人は、ダークトライアドの特性が高い相手との恋愛関係に陥りやすいと言えるかもしれません。相手の自信に満ちた、魅力的に見える外面ばかりに目がいって、ネガティブな面に向き合う時間がないまま、無防備な状態になってしまうからです」

また、イギリスのカウンセリングサービスサイト<Relate>のカウンセラーであるシモーヌ・ボーズさんは、相手の有害性に気づけない可能性についても指摘。

「ダークトライアドの特性を持った人と恋愛関係にあることに気づけない可能性もあります。彼らは、表面的な魅力やカリスマ性を持っていることが多いためです。ナルシシズムの傾向を持つ人は自分の長所を見せることが上手で、マキャベリアニズムの傾向を持つ人は欺瞞的で、欲しいものを手に入れる手段を知っています。彼らは、魅力的に振るまう術を知っているのです」

これにより、気づいたときには相手のことを好きになっていたり、すでに恋愛関係に発展していることも。そうして“呪縛”のように、相手の存在に囚われてしまうケースもあるといいます。

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Malte Mueller//Getty Images

ダークトライアドとの交際で起こりえること

ダークトライアドの特性を持つ人たちは、付き合いはじめの頃こそ魅力的に思えるかもしれません。でも、時間が経ち、二人の関係が深まるにつれて様子が変わってくることが多いとラマルシュ博士は言います。

「彼らはしばしば、膨れあがった自尊心と、他者への感情的な無関心さの両方が見られます。また、他者を思いどおりに操ることにも長けている場合が多く、自分が欲しい結果を得るためにどう振るまえばいいのかを知っています」
「たとえば、誰かに何かをしてもらうためにお世辞を言ったり、非現実的で壮大な誓いをたてたりするかもしれません。時間が経つにつれ、他者の感情を軽視する態度や欺瞞に気づくでしょう」

健全な恋愛関係を築くためには、お互いに心を開き、無防備にならなければなりません。この過程は、恋人やパートナーが求めているものに関心を持ち、思いやりのある人とであれば、お互いにとって良い経験となるでしょう。

「一方で、ダークトライアドの特性が高い人たちが恋人やパートナーだった場合には、他者の感情に目を向けることが少なく、相手の気持ちに鈍感です。そうして最終的には、相手の信頼や無防備さを利用する可能性すらあるのです」

人間関係において相手に心を開き、信頼し、そして無防備になることは、非難や批判されるべきことではありません。これはむしろ健全な恋愛関係の核となるものだからです。むしろ問題なのは、そういった相手の感情を利用してコントロールしようとする人だと、ラマルシュ博士は強調します。

ただし、ダークトライアドの特性を持ちつつもその度合いが低い人も存在しているので、すべてがこの例に当てはまるわけではありません。

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nadia_bormotova

ダークトライアドの特性を持つ人の特徴

前述の通り、ダークトライアドの特性を持つ人は魅力的に振るまう方法を知っています。一方で、次のようなサインによって見分けられる可能性もあるとシモーヌ・ボーズさんは言います。

時間が経つと二面性を見せる

やさしいと思ったら急にカッとなるなど態度を変え、そしてまたやさしい人物に戻ります。意地悪で素っ気なくなったかと思えば、その後に謝って魅力的に振るまうことも。

あなたを貶してみたり、あなたの意見が間違っていると思いこませるような言動をみせるなど、序盤に見せていた“親切で思いやりがあるところ”を維持できなくなっている様子に気づくかもしれません。

他人の心の痛みに無関心

共感性の欠如は、ダークトライアドの主な特性の一つ。人の痛みをなんとも思わなかったり、意味もなく他人の悪口を言うかもしれません。そして、自分のそういった言動が周囲にどのような影響を及ぼしているかに目を向けない場合もあるでしょう。

自分の良いところばかり強調する

いつも自分のことについてだけ話し、自分の魅力や長所ばかりを強調する場合にはナルシシズムの傾向があるかもしれません。自分は常に“最高”で、様々な状況下でそんな自分が利益を得られるべきだと考えています。

恋人がダークトライアドの特性を持っている場合

恋人やパートナーの影響によって、あなたが自己肯定感を喪失したり、自分が分からなくなるといった状況にある場合には、その有害な恋愛関係から抜けだすべきです。

ボーズさんによれば、程度に差はあるもののダークトライアドの特性を持つ人は「変わりにくい」と言います。

「共感性が欠如しているため、セラピーによってその特性を軽減させることは難しいと言われています。特にナルシシズムの傾向にある人は、自分を良く見せるために巧みに嘘をつき、有利な状況に持っていくことが多いです。そのため、カウンセリングやセラピーでの効果が得られにくい可能性があります」

もしあなたがダークトライアドの特性を持つ恋人やパートナーとの関係に悩んでいるのであれば、信頼できる人に助けを求め、関係を解消する方法を考えていく必要があります。

「特に相手がダークトライアドの特性値が高めである場合には、あなたを引き留め、あなたの判断が間違っていると思わせるために、涙を流したりすがってくるなど、説得力のあるテクニックを使ってくるかもしれません。元の関係に引きずり込まれないように、しっかりと関係を解消する必要があるのです

「あなたは悪くない」

あなたがダークトライアドの特性を持つ恋人やパートナーに操られたり、なかなか関係を解消できなかった場合でも、自分を責める必要はありません。

「誰だって、誰かに操られてしまう可能性があります。だからといって、あなたが愚かで無知だということではありません。こういった恋愛関係は、気づかないうちに陥ってしまいがち。だから自分を責めず、自分に優しくしてあげてください」(ボーズさん)

※本記事は、Hearst Magazinesが所有するメディアの記事を翻訳したものです。元記事に関連する文化的背景や文脈を踏まえたうえで、補足を含む編集や構成の変更等を行う場合があります。
Translation: 平田三桜(Office Miyazaki Inc.)
COSMOPOLITAN UK