クリスマスなどのホリデーシーズンがもたらすワクワク感も、次第に薄れていく1月。実は、“離婚ラッシュ”の月とも言われています。まだまだ冬で寒いし、年末年始でお金を使いすぎてお財布もさみしいし、気分もなにかと落ち込みやすいことも影響しているかも。

離婚アドバイザーが解説する、新年に離婚を決断する人が増える要因とは?

離婚手続きが150%増加したケースも

ホリデー気分に合わせて、明るく振る舞っていた“仮面”が剥がれ、年明けを迎えることには恋愛関係が冷めていくのかもしれません。イギリスでは、1月に入って最初の月曜日は「離婚の日」と言われています。年末年始は閉まっていた弁護士事務所も営業を開始するこの月曜日に、離婚の相談に来る人が多いそう。

家庭裁判所の統計によると、イギリス国内では2023年1月〜3月の間に2万8865件の離婚の届出が。それに比べて4月〜6月は、2万4624件だったそうです。ある法律事務所によれば、1月は離婚の手続きが他の月よりも150%増加しているとも。

自身の経験から“離婚アドバイザー”に

結婚であれ、長期の恋愛関係や定義しづらい関係の解消であれ、パートナーに別れをつげるということは簡単ではありません。だからこそ、カウンセラーや離婚アドバイザーに相談をする人も多くいます。

サラ・デイビソンさんは離婚アドバイザーとして10年近く活動しています。その前は、カウンセラーやライフコーチとして15年間活動していましたが、子どもが1歳のときに当時の夫から離婚を切り出され、キャリアにも大きな変化が起きました。

「私と一緒にいたくないというだけでなく、新しい相手をすでに見つけていて、その人をすごく愛していたようでした」
「絶望的でした。全く予期していなくて、いきなり稲妻に打たれたかのようでした」

デイビソンさんは、カウンセリングなどを通じてこの状況を乗り越えようと思いました。そのときに、離婚に特化したカウンセリングがなかったことに驚いたと言います。自分でこの離婚とヘルシーに向き合う方法を探すことになり、前進するための段階的な計画を自ら考え出しました。

「失恋は万国共通。別れで落ち込むということは世界中多くの人が経験することなのにそれをサポートするものがないなんて、おかしいことだと思いました。初めてのパートナーと別れる16歳だろうと、パートナーに先立たれた80歳だろうと、この悲しさは共通しているものなのです」

デイビソンさんの立ち直りを目の当たりにした担当弁護士は、そのコツを本として出版することを勧めました。そして今では2作ものベストセラーを持つ作家兼、数百のクライアントがいる離婚アドバイザーに! 日々のアドバイスから、簡潔な良い別れ方の手助けをしています。

新年に離婚が増える理由とは?

デイビソンは、離婚の急上昇現象が1月に起きる理由はクリスマスシーズンが“圧力鍋状態”を生むからだと考えます。

「パートナーと親密な時間を過ごす機会は、“テスト”のようなものになり得ます」
「パートナーと健康的な関係があるなら、良質な時間を一緒に過ごすとつながりが強まるほか、よりゆっくりリラックスできるでしょう。しかし、もし関係にすでに問題や傷が生じている場合は、仕事や毎日のルーティンなど、気をそらすものが減ることで、よりその亀裂を悪化させることにもつながります」

クリスマスというイベントだからこそ、お互いへの期待が高まることもあり、このプレッシャーがパートナーとの確執をさらに深いものにしてしまうことも。

「例えば、クリスマスの金銭問題。そもそも難しいものですが、どちらかの散財が問題になることもありますよね。クリスマスは何もしないでゆっくりしたいと思っていても、パートナーはもっと色々したいと思って、手助けしてくれるのを待っているなど、お互いの期待や予想がズレることも。その上、相手家族との関係、子どもたちのケアなどさまざまな要素がクリスマスを難しくします」

デイビソンさんが見てきた、もっとも一般的な離婚の理由は「不倫」と「単純に冷めてしまった」の2つですが、その原因になっているものは「コミュニケーション不足」だと考えます。

「色々な問題の裏には、コミュニケーション不足があることが多いです。小さな日常の問題について話さず、なんとなくやり過ごしてしまう。それがだんだんと蓄積していくのです。そして、何かの拍子に今まで溜めた問題が、大きな対立を生んでしまうかもしれません。その都度、目の前にある問題について、きちんとコミュニケーションをとることが重要です」
couple having a disagreement at home
bymuratdeniz//Getty Images

離婚を経験する人は35%

デイビソンさんは離婚の風潮にも変化を感じています。

シンクタンク「マリッジ・ファウンデーション」の調査によると、結婚する人の中で、一生のうちに離婚を経験する人は35%という結果が出ました。(ヘテロセクシュアルのカップルの場合)1986年に離婚した女性が10万9883人だったのに対し、2021年は7万607人と、36%減少しています。

「婚姻関係に満足している女性が増えているということがわかる」と「マリッジ・ファウンデーション」のディレクター、ハリー・ベンソンさんは説明しますが、デイビソンさんはこのデータは慎重に見る必要があると考えます。

それは、停滞する経済や物価高で、本当は嫌な婚姻関係から抜け出すことができない女性もいる可能性があるからだと指摘。リーガル・アンド・ジェネラルの調査では、5組に1組(19%)のカップルが物価高を理由に、「離婚が遅れた」と答えています。

希望を伝えて「12週間待ってみる」

デイビソンさんは、有害な恋愛関係、束縛的な関係などのケースを目の当たりにすることが増え、「女性にとって結婚をしていた方が幸せ」という考えを疑問視する機会になったと言います。

「特に不景気の中の男女賃金格差などを考慮すると、女性が経済的に独立するということが難しくなっています。(ヘテロセクシュアルのカップルの場合)どんなに熱心なパートナーでも、育児はどうしても女性側への負担が多くなる現状があり、問題は経済的な面だけではないのです」
「離婚は、金銭を含めた何かしらの負担が現状よりも増えるということになります。経済的に安定するまで離婚を先延ばしするということは珍しくありません」

そして、その過程で「仲直り」や「解決」をすることも実は多いと言います。

「離婚は人生にも大きな影響があるので、ある日突然決めるようなものではありません。だからこそ、隣の芝は青く見えるということを認識することが必要です」
「パートナーに自分が期待していることを伝え、12週間待ってみると良いでしょう。もし離婚するべきかどうか悩んでいるようであれば、『私ができることは全てした、後悔はない』と思えるかどうかを考えてみるといいでしょう」

もし離婚を決断したら…

もし最終的に離婚をすることにしたら、離婚の辛さを和らげることにフォーカスしましょう。

イギリスでは2022年に「無過失離婚法(no-fault divorce law)」が施行されました。それまでは、離婚をする際にその“原因”を5つの選択肢から選んで提出する必要があり、そのプロセスでより関係を悪化させてしまう可能性がありました。

デイビソンさんが何よりも強調したいのは、離婚は「敗北」や「失敗」、「終焉」ではないということ。「新しいチャプターの始まり」と捉えてほしいと考えています。

「離婚をしたから、“終わった”という風には思ってほしくありません。これから自分の人生の舵をとることになるということ、あなたがしたいようにしてもいい、良い決断をしたという風に考えてほしいです」

※本記事は、Hearst Magazinesが所有するメディアの記事を翻訳したものです。元記事に関連する文化的背景や文脈を踏まえたうえで、補足を含む編集や構成の変更等を行う場合があります。
Translation: 佐立武士
COSMOPOLITAN UK