2023年は、恋愛に関するスラングに恵まれた年だったといえるでしょう。たくさんの新しい概念が生まれる中、TikTokなどで注目を集めているのが「delulu(デルル)」という言葉です 。

「恋愛に対して妄想的なのは、きちんと理想があるということ」――Z世代・ミレニアル世代当事者のライターが語る、このスラングにみる新しい恋愛観を<コスモポリタン イギリス版>からご紹介。

デルルとは

この数年でよく使われるようになった恋愛に関するスラングは、たくさんあります。

センスや魅力で人を惹きつける力を指す「rizz(リズ)」や、恋愛相手から感じられる危険信号・赤信号という意味の「red flag(レッド・フラッグ)」、逆の意味を指す青信号の「green flag(グリーン・フラッグ)」に、中途半端でつまらなそうという意味の「beige flag(ベージュ・フラッグ)」も追加されました。

その中でも特に流行しているのが、「delulu(デルル)」という言葉。これは「delusion(思い込み、妄想)」が元になっている言葉で、2014年頃からK-popファンたちの間で使われていたと言われています。

デルルであるということは「とても高い理想や期待を持ち、いつかそれが叶うというと信じ続ける」こと。一部では「delulu is the solulu」が合言葉となり、「盲目的であることこそが、solution(解決策)なのだ」というモットーにもなっていたそうです。

このスラングは2023年に大々的に流行し、この言葉を使ったTikTokは51億回も再生されました。それだけ夢を優先し、現実は後回しにした人がきっといるのでしょう。

「デルルな恋愛」って?

2023年において「デルル」は、恋愛模様を表すように。たとえば、恋愛を“やめた方がいい”と感じるサインを見ないふりをして、友達以上・恋人未満な関係をずるずると引きずり、運命の人を待っているといったところでしょうか。

マッチングアプリ「Tinder」のユーザーである、イギリスはブライトンで暮らすグレイシーさんはこう言います。

「デルルであるということは、ちょっとクレイジーであることかな。気になる人から返信がきたかを何度も確認したり、妄想を膨らませたり、スナップチャットの位置情報を確認したり、とても健康的とは言えない執着心を指すと思います」

一方で、人によっては「デルルであることは単純に理想がある」ということ。決して、自分の理想を下げてまで満足をしないという考え方なのです。

「最近いい感じになっている人を前にすると、私は完全にデルルです。頭の中で勝手に結婚式も計画しています。私が求めている全てをもっているし、毎日話します。絶対運命の人です」(北ロンドン在住の21歳、ヒンジのユーザーであるルーシーさん)

理想を求めるのは現実逃避?

Tinderのグローバル・リレーションシップ・インサイト・エキスパートのポール・C・ブランソンさんは、この流行について次のように説明します。

「これまでの世代に比べ、Z世代はよりオープンでポジティブな恋愛観を持っています。デルルであることは、まだ見ぬ出会いへの期待を膨らませ、恋愛のモチベーションを上げることにつながります」
「今の若い世代は恋愛の“ゴール”だけではなく、つき合いのその過程と経験を楽しむ傾向が見られます。恋愛の楽しさを維持するためには、出会いを探すときに少しの“妄想”を足すことも重要でしょう」

筆者は、オフラインでもアプリで始める恋愛でも、大きなゴールを夢見て、過大な自信をもってこそ恋愛! と思ってきました。ビジョンを掲げて、自分の理想を呼び込むように願いつづける――そんなデルルに賛成です。

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Mystockimages//Getty Images

このような恋愛観をもっているのは、恋愛を求めるZ世代とミレニアル世代が多いようです。他の世代からしたら、アプリで“運命の人”に出会うなんてあり得ないのだとか。確かに、自分より年上の人からはよく理想を下げるように言われます。

でも理想があることって、そんなに“現実逃避的”なのでしょうか? 自分の人生だからこそ、ベストな結果になってほしいと思うのはおかしなことなのでしょうか。

妥協して誰かと一緒にいるより一人で幸せでいたい

有名な恋愛カウンセラー、ジョン・ゴットマンは、完璧ではなく“十分な人”を探すようアドバイスしていて、バブル世代や団塊の世代の多くの人はこれに賛同するでしょう。しかし、私にはただの「妥協」としか思えません。

Redditの恋愛アドバイスで立ちあがった「完璧なパートナーと十分なパートナーのどちらが理想的か」というスレッドで、「“十分な人”だったら友達でよくない? 」と、とあるユーザーは疑問を投げました。そして、私もそう思うのです。特別だと感じないのに、わざわざ恋愛する必要はないのではないでしょうか。

恋愛にがっかりさせられることも多いこの世界。ウソをつかれたり、時間を無駄にされたり、落胆させられたりと、恋愛は山あり谷ありです。だからこそそんなさまざまな試練を乗り越えても、得たいと思うものであってほしいのです。

そのための理想でも、ただ「妄想的だ」と揶揄されるかもしれませんが、私は希望を見出していると思っています。

マッチングアプリの影響も

現代ではマッチングアプリのおかげで、望めば、より多くの人とつながりをもてます。確かに私の親の世代は何100人という候補を毎週スワイプして、相手を見つけるようなことは同じ年齢のときにはできませんでした。

相手探しの母数が大きいからこそ、私たちはよりデルルになっている可能性もあるでしょう。“代わりの人”がたくさんいるという考えから、マッチした相手に十分なチャンスをあげていないような気もします。ちょっと危険信号や嫌なところを見つけると、すぐに“次”に移ってしまうことは事実です。

それでも、私は理想は高くもつべきだと考えます。未来に希望をもって、本当に大切なものに時間とエネルギーを使うべきなのではないでしょうか。

妥協して誰かと一緒にいるよりも、一人で幸せでいたいです。「自分に合っているな」と思う相手としか付き合いたくはないし、そうでなければ次に進むのみです。

自分にとっての“完璧”を見つめて

「未来を楽観的に見ることに損や危険はありません。Z世代は他の世代よりも、自己認識があり、危険信号を避け、自身の人生観や心身の健康を優先できています。“デルルが行き過ぎている”と感じれば、自発的にストップすることができます」と、ブランソンさんは言います。

Tinderが発表したデータによれば、69%のZ世代は「固定観念を壊していきたい」と答えたそう。恋愛において“妥協”をしないということであれば、それは良いことだとも思えます。みんなが自分にとって“完璧”な誰かと一緒にいられるべきだと私は思います。そして、その“完璧”は人それぞれなのです。

昨年バズった「デルル」。2024年もよりポジティブに、ちょっとデルルに生きてみてはどうでしょうか?


※本記事は、Hearst Magazinesが所有するメディアの記事を翻訳したものです。元記事に関連する文化的背景や文脈を踏まえたうえで、補足を含む編集や構成の変更等を行う場合があります。
Translation:佐立武士
COSMOPOLITAN UK

From: Cosmopolitan UK