米OpenAI社が開発した、人工知能技術を駆使して回答を生成するチャットサービス「ChatGPT」。機械学習や深層学習アルゴリズムを使用してトレーニングされたAIによって、自然な文章での応答を得られると注目を集めています。

カスタマーサポートやチャットボットなどの対話システムや、詩や台本、記事を書くなどの文章の自動生成、言語を処理するという面では要約など、様々な活用方法が見出されている一方で、その正確性についてや実生活への影響、倫理的な課題など、AI技術との共生に向けた議論が繰り広げられています。

本記事では、<コスモポリタン イギリス版>のエディターが、ChatGPTを活用して実生活におけるタスクに取り組んでみた体験談をお届け。新たな気づきと、専門家が考える今後の展開についてもお届けします。

語り手:イザベラ・アロンさん

AIに関する研究を行うイギリスの「アラン・チューリング研究所」の研究員であるマイリ・エイトケン氏によると、ChatGPTは「自然言語のニュアンスに対応するために洗練されてきた」と説明します。

文章を書くことを生業にしている私としては、AIに取って代わられる可能性を信じたくない気持ちもあります。そこでまずは、メールの作成や友人とのメッセージの送信など、簡単な文章作りがどれほどの精度で可能なのかを試してみました。

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Leon Neal//Getty Images

メールの作成

まずは、以前インタビューをした方に対するお礼メールの作成から。ChatGPTにプロンプト(指示)を与えると、すぐに文字を打ち込みはじめました。

ChatGPTが最初に生成したメール文は、長くフォーマルなもの。

「今回のインタビューに貴重な時間をいただいたこと、この場を借りて感謝の意を表します。いただいたご協力は貴重であり、非常に感謝しています。あなたの知識と専門性は、私に素晴らしいインサイトを与え、問題をよりよく理解することに役立ちました」

次に「堅苦しくない口調でお礼メールを生成して」と、より具体的に指示してみることに。すると、1通の短いメールに3つの感嘆符が含まれた文章が生成されました。

「ありがとうございます! お話させていただき、私の考えを共有させていただきたいです。明日の午前9時にお電話するのが都合がつきそうです。そうしましょう! ご都合に確認いただき、私も都合が合うようにいたします。それでは! 」

その後、「ロボットっぽくせずに、もっと自然な文章で」と指示してみました。すると驚くことに、私が実際に書いたメールによく似たシンプルで読みやすい文章が生成されたのです。

友人へのメッセージ

次に、メッセージアプリで友人を食事に誘うというタスクを試してみることに。ChatGPTは“人間らしさ”を理解して自然な言葉を選ぶと言われていますが、実際に友人はAIが生成した文章であることを見抜けるでしょうか。

滑り出しは好調のようでした。

  • ChatGPT:「こんにちは、近々食事に行かない?」
  • 友人:「元気にしてた? ぜひ行こうよ」
  • ChatGPT:「元気だよ! 聞いてくれてありがとう。興味を持ってくれてうれしい。今週末はどう?それとも他の日がいい?」

ところが、その週末ではなく他の日を提案してほしいという友人に対する返信をChatGPTに生成させたところ、失礼に聞こえるような文章に。やり取りは気まずくなってしまい、友人にはすぐさま試験的にChatGPTでメッセージを生成していたことを説明。これについては、残念ながら大成功とはいきませんでした。

また、生身の人間が他の人間に対して、AIが書いたメッセージを送ることに違和感を覚え、倫理的な問いかけも生まれました。

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Robert Alexander//Getty Images

ChatGPTとAI技術の今後

結局のところ、ChatGPTが生成する文章には機械的な面もあり、多くの場合は言葉選びを修正する必要がありました。

そこで私は、研究員であるマイリ・エイトケン氏に「ChatGPTは実際に使えるのか」という質問をしてみることに。エイトケン氏の回答は「使い方による」とのこと。

「手紙やメールを生成するためのツールとして使うこともできますが、スペルチェックや文法チェックの用途で使うという意味では、既存のツールとそれほど変わりはありません。“コンテンツを生み出す”という点では、まだまだ課題や議論が必要な段階です」

“対話”の価値について考える

また、将来的にはメールなどのサービス内にChatGPTのインターフェースが組み込まれる可能性もあると言います。

「ChatGPTで生成した文章同士でやりとりをするようになると、それはボット同士がコミュニケーションしているに過ぎません。これは、人間同士の対話についての価値について問い直す問題提起となります」

親しい人とのコミュニケーションにおいては、なおさらに懸念の余地があると言います。

「親や友人など、親密な関係におけるコミュニケーションという観点から考えると、対話が自動化されることは危険な先行きに感じられます」

では、AI技術の発展は今後どのような未来に繋がっていくのでしょうか。「現状のAI技術は、その進化の氷山の一角に過ぎない」とエイトケン氏。

「OpenAIがMicrosoftと契約したことで、Bing、Outlook、Word、PowerPointなどの製品には、早い段階で統合されることになりそうです。しかし、ChatGPTはまだ事実と虚構の判断ができないため、現段階では高度なスペル・文法チェックをしてくれるツールと考えた方がいいでしょう」

ChatGPTとAI技術が私たちの仕事や生活を変えていくことは間違いありませんが、エイトケン氏は、これが一つの大げさなトレンドである可能性も示唆しています。

「彼らは知的ではなく、まだプログラムされたことを実行しているだけです。技術が進化したとしても、ChatGPTが人間とまったく同じように物事を捉えることはできないと私は考えています。完璧にニュアンスを読み取ることも、トーンを正確に把握することも難しいのです」

また、新しい技術が与える影響にだけ囚われるのではなく、むしろ人間がAIをどう活用できるかについて注視するべきだとエイトケン氏は話します。

「AIシステムに関する意思決定を行う組織や人々は、人類に対する大きな責任を負うことを認識する必要があります。これらのシステムは、私たちの生活においてますます大きな影響を与えるようになるのですから」

技術発展を私たちの生活にどう調和させていくか、今後の議論に注目を。

※この翻訳は抄訳です。
Translation: ARI
COSMOPOLITAN UK