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引退前に知っておきたい!ドイツのメルケル首相にまつわる7のこと

惜しまれつつも、今秋に政界引退予定のメルケル首相の軌跡を、改めておさらい!

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世界中がパンデミックという未曽有の危機に直面し、各国の政治に関するニュースが飛び交う現在。そんな中、ドイツのアンゲラ・メルケル首相に改めて熱い視線が注がれています。「ドイツの偉大なる母」と称えられながらも、今年9月で政界引退を表明しているメルケル首相について、知っておきたいポイントをまとめました。
Carsten Koall//Getty Images

世界中がパンデミックという未曽有の危機に直面し、各国の政治に関するニュースが飛び交う現在。そんな中、ドイツのアンゲラ・メルケル首相に改めて熱い視線が注がれています。2005年11月にドイツ首相に就任してから15年以上、さまざまな問題と対峙してきた、メルケル首相の人道重視の手腕が世界中から賞賛されているのです。

今年9月で政界引退を表明しているメルケル首相。「辞めないで!」という声が国内外から上がり、“ドイツの偉大なる母”と称えられる彼女について、知っておきたいポイントをまとめました。ドイツ初の女性首相として、また長期政権を支えた政治家として、今後もメルケル首相の名は語り継がれていくはずです。

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東ドイツで幼少期を過ごす

ドイツのメルケル首相について知っておきたい7つのこと
Aflo

1954年7月17日、西ドイツ・ハンブルクで誕生したアンゲラ。誕生名は「アンゲラ・ドロテア・カスナー」で、父のホルスト・カスナーは牧師、母のヘルリント・カスナーは英語とラテン語の教師でした。

当時はドイツが西ドイツ(ドイツ連邦共和国)と東ドイツ(ドイツ民主共和国)に分断されていた時代。誕生後ほどなくして、カスナー家は父の赴任に伴い東ドイツのクヴィツォウ(現ベルレンブルク)に転居します。東西冷戦下であり、西ドイツと東ドイツには大きな経済格差がありました。人々が東ドイツから西ドイツへ逃れようとする中、父は東ドイツでの牧師不足を補うため、時代に逆行して東側に移ったのです。

以後、ベルリンの壁が崩壊するまで、アンゲラは東ドイツで暮らしました。

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ベルリンの壁崩壊が政治家への原点

ドイツのメルケル首相について知っておきたい7つのこと
ullstein bild Dtl.//Getty Images

子供時代から成績優秀だったアンゲラは、1973年にカール・マルクス・ライプツィヒ大学(現ライプツィヒ大学)に入学し、物理学を専攻します。在学中の1977年、最初の夫であるウルリッヒ・メルケルと結婚(1982年に離婚)。「メルケル」の姓は、この最初の婚姻によるものです。

1978年に大学を卒業。その後、科学アカデミー付属物理化学中央研究所(東ベルリン)で物理学者としての道を歩み始めます。1986年には博士号を取得しました。

1989年11月9日、アンゲラが35歳のときにベルリンの壁が崩壊。当時ベルリンに住んでいた彼女は、壁の崩壊を目撃した1人でした。このことをきっかけに、アンゲラは政治家の道を目指し始めます。研究所を退職し、政治団体「民主主義の出発」の結党メンバーに。翌1990年「ドイツキリスト教民主同盟(CDU)」に入党し、ドイツ連邦議会選挙にて初当選しました。

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ドイツ初の女性首相に

ドイツのメルケル首相について知っておきたい7つのこと
Getty Images

初当選の翌年(1991年)、当時の首相ヘルムート・コール氏に抜擢され、議員1年生ながら連邦女性・青少年大臣(1991~1994年)に就任。その後、連邦環境・自然保護・原子力安全大臣(1994~1998年)も務めました。

しかし1998年の総選挙でCDUは野党に転じます。この年、アンゲラはCDUの幹事長に、2000年にはCDU党首に就任。そして、2005年9月の総選挙でCDU/CSU(バイエルン・キリスト教社会同盟)連合が勝利して与党へ返り咲き、同年11月22日に首相に就任を果たします。ドイツ初の女性首相の誕生は、大きな話題を呼びました。

政治の世界に足を踏み入れてから15年で首相の座についたアンゲラ。政治家としては異例の速さで政界の階段を上っていったのです。

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人道主義への賞賛と批判

ドイツのメルケル首相について知っておきたい7つのこと
Getty Images

政権を担って以降、ドイツ国内に加え、EU(欧州連合)にもさまざまな問題が勃発し、アンゲラ(以下、メルケル首相)はさまざまな難題に直面してきました。ギリシャ危機(2009年)、欧州難民危機(2015年)、イギリスのEU離脱(2020年)などでは欧州の舵取り役を務め、また新型コロナウイルスの感染拡大が始まると、すぐに手厚い経済支援・補償策(ドイツ国内)を打ち出しました。

しかし賞賛の反面、批判も浴びています。分かりやすい事例の1つが2015年8月の「欧州難民危機」です。シリアやイラクなどの中東、そしてアフリカから多くの難民が欧州に押し寄せたものの、欧州各国は受け入れに悩み、難民たちはハンガリーで足止めされていました。

ドイツはいち早く大量に難民を受け入れることを発表。人道を優先した温かな措置として、メルケル首相の決断は称えられました。しかし、難民を受け入れることはドイツ市民に多大な負担をもたらすことも意味します。決断の2カ月後には厳しい批判の声が上がり、メルケル首相の退陣や難民受け入れ反対のデモがドイツ各地で起こりました。

写真は難民登録センターを訪問し、写真撮影に応じるメルケル首相(2015年9月)。

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大のサッカーファン!

ドイツのメルケル首相について知っておきたい7つのこと
Getty Images

メルケル首相のサッカー好きは有名。FIFAワールドカップはこれまで何度も観戦しており、真剣に応援する姿が目撃されています。2014年のブラジル大会の決勝戦(ドイツ対アルゼンチン)も現地で応援。優勝したドイツチームとの嬉しそうな記念写真は、世界中で報道され話題となりました。

他にもオペラ好きであることでも知られ、特にリヒャルト・ワーグナー(1813~83年)のファンだそう。夏のホリデー先は山岳地帯など自然を楽しめる場所が多く、1998年に再婚した量子科学者のヨアヒム・ザウアー氏と、毎年夫婦でハイキングを楽しんでいます。

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名演説家として知られる

これはyouTubeの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。
Merkel gets emotional in speech | DW News
Merkel gets emotional in speech | DW News thumnail
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説得力のある言葉を選び、人々に語りかけるように話すメルケル首相は、当代きっての名演説家。時には東ドイツで育った経験を交えつつ、自由と民主主義、そして平和の尊さを具体的に訴える彼女のスピーチに心を動かされた人は多いはずです。

中でも昨年12月9日、新型コロナウイルスの感染拡大に際しドイツ連邦議会で行ったスピーチは記憶に新しいところでしょう。「今年が祖父母と過ごす最後のクリスマスになってはいけない」とジェスチャーを交えて力強く訴え、人々に自粛を要請。このスピーチはドイツ国内のみならず、世界中の多くの人たちの心に刻まれました。

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2021年9月で政界引退予定

ドイツのメルケル首相について知っておきたい7つのこと
Pool//Getty Images

ドイツの「お母さん(ムッティ)」と慕われているメルケル首相ですが、任期満了を迎える2021年9月に政界を引退することを表明しています。2018年に行われた地方選挙でCDUが大敗を喫したことの責任を取り、「2021年の総選挙には出馬しない」と宣言。すでにCDU党首の座も降りています。

長年、ドイツおよび欧州の“顔”としてリーダーシップを発揮してきたメルケル首相。「彼女が去った後のドイツ、欧州、そして世界はどうなる?」「彼女の後を継ぐ人道的、かつ説得力のあるリーダーが出てくるだろうか?」と不安視する声も上がっていますが、彼女の引退が「先の見えない時代に求められるリーダー像」について、皆が真剣に考え、政治に関心を持つきっかけになるかもしれません。

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政治

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