ウクライナの女性起業家、オルハとヘレンの姉妹がアスレジャー・ブランド「ノルバ(NORBA)」を立ち上げたのは、スポーツ好きの二人にとってほぼ、趣味の延長のようなものだったという。ズームでのインタビューに応じたオルハは、そう語りました。
姉妹の名を冠したそのブランドは、創業から数年の間に順調に成長。国外での販売を始め、アクセサリーのラインもローンチしようとしていたところ。だが、それらのすべてがいま、妨げられています。
その原因はもちろん、ロシアのウクライナへの侵攻にある。突然始まった戦争により、姉妹は拠点を置く首都キーウ(キエフ)のチームと引き離されたまま、イタリア・ミラノで足止めされ、ビジネスは中断を余儀なくされています。
攻撃が開始されたのは、姉妹が2022年秋冬コレクションを発表するため、ミラノに到着した翌日。オルハは2月24日の朝のことを、こう振り返ります。
「目が覚めて携帯電話を見ると、キーウ(キエフ)を離れ、国境に向かおうとしている人たちからのメッセージであふれていました…まさに大混乱でした」
それでも、二人は予定どおりに仕事をこなし、アメリカやヨーロッパの会社からの注文を受けた。だが、今の状況では、約束どおり商品を納品できるかどうかもわからないという。コレクションの大半は手元になく、新たに生産することもできない(ノルバの工場は、最も激しい攻撃を受けた都市のひとつ、ハリコフにある)。
母国に戻ることができない姉妹は現在、そのネットワークを駆使して、ウクライナ国内に残る人たちを助けるための活動を行っている。
オルハによると、二人がまず寄付をしたのは、ウクライナ軍だという。だが、気持ちの上で最も寄り添うことができるのは、自らのブランドにとってのコアである女性たちとその苦しみだと考え、現地でボランティア活動を行う人たちに直接連絡を取ることに。
そして、キーウ(キエフ)のほか激しい空爆を受けた北東部のスムイに、支援物資を送ることにした。実際に、軍の基地に避難している女性たちに衣類や衛生用品、赤ちゃん用のおむつや粉ミルクなどを届けることができたという。
現在のような状況下の人道支援において、最大の問題は物流となる。地下のシェルターで身動きが取れずにいる人たちに、実際に支援物資を届けるのは非常に難しい。
オルハは、「私たちがしていることは、いま起きていることの大きさからみれば、とても小さなことです。ですが、必要とされるもののわずかな一部でも、満たしたいと思っています」と話す。
姉妹のビジネスは、今後の見通しがついていない。オルハにもヘレンにも、この恐ろしい状況がいつまで続くのか、まったくわからない。「何の計画も立てることができない」という。
ただ、家に帰れるのが「数カ月先かもしれないし、数年先かもしれない」という状況のなかでも、姉妹は自社のチームを助けるために、最善を尽くしている。ウクライナの銀行システムに何かあったときに備え、オルハは従業員たちに、数カ月先の分までの給料を前払いする考えだという。
また、恐怖と先行きの不透明感のなかで、オルハは「いずれヘレンと事業を再開する」という希望を失っていない。そして、次のように語っている。
「私たちはいま、これまでにないほど懸命に働かなければなりません。ウクライナからの難民が数多く入国している(隣国の)ポーランドに、オフィスを構えたいと考えています。難民たちの働き口を作りたいのです」
「なんといっても、いまは私たち自身が難民なのですから」
ただ、オルハがそれ以前に願っているのは、ウクライナの女性たちがいま置かれている状況について、より多くの人に関心を持ってもらうことだという。
「こうしたことを自分のことのように感じるのがどれほど難しいか、それは私にもわかります…私たちも平和な世界に住み、ファッションや旅行などに関心を向けていましたから」
「シリアやアフガニスタンで起きていることを目にしても、同じようなことが自分たちの身に起こりうるとは思ってもいませんでした…私たちの誰にでも起こりうることなのだと、わかってもらいたいのです」
※この翻訳は抄訳です。
Translation:Hearst Contents Hub
※ウクライナで難民の支援活動を行う国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)への寄付に関する情報は、こちらでご確認いただけます。