ロシアのボリショイ・バレエ団のプリマバレリーナ、オルガ・スミルノワさん(30)が、退団したことをメッセージアプリのテレグラムで明らかに。すでにオランダ国立バレエ団に移籍し、オランダ入りしているという。

オルガさんは、「魂のすべてで戦争に反対する」、「無関心ではいられません」と投稿。「ロシアを恥じることになるとは思っていなかった 」と述べています。

サンクトペテルブルクで育ち、2011年にボリショイ・バレエ団に入ったオルガさんは、2016年からプリンシパル・ソリストを務めていました。祖父がウクライナ人のオルガさんは、母国ロシアが引き起こしている大惨事を「恥ずかしく思っている」とのこと。

ウクライナへの軍事侵攻が開始されて以降、ロシアでは文化芸術界に関わる著名人が相次ぎ自国を離れており、オルガさんもその一人に。また、ボリショイ・バレエ団ではすでに、ブラジル人ソリストのダビド・モッタ・ソアレスさんと、イタリア人プリンシパルのジャコポ・ティッシさんの2人が、ウクライナへの侵攻に反対し辞任しています。

bolshoi theater
YURI KADOBNOV//Getty Images
ロシア・モスクワにあるボリショイ劇場

ボリショイ・バレエ団は、ロシア政府と深いつながりが。このバレエ団に関する著書『Bolshoi Confidential: Secrets of the Russian Ballet from the Tsars to Today』(原題)で知られるアメリカの音楽史家、プリンストン大学のサイモン・モリソン教授は、「石油で財を成した(政治的な影響力も持つ)オリガルヒ(新興財閥)たちが、ロシア文化の多くを支配している」と指摘。

ロシアの舞踊評論家は『ニューヨーク・タイムズ』紙に対し、「オルガさんの決断は、ロシアのバレエ界を揺るがすものだ」とコメント。1991年のソビエト連邦の崩壊後、ダンサーたちは「よりよいポジションを求めて」ボリショイを去っていったそう。

だが、オルガさんはボリショイ・バレエ団で最高のポジションを手に入れていながら、「戦争への道徳的反対」を理由に退団を決めたとのこと。

swan lake performed by the bolshoi ballet
Robbie Jack//Getty Images
2016年7月の公演で、白鳥の湖のオデットを演じるオルガさん

オランダ国立バレエ団のディレクター、テッド・ブランセン芸術監督は、オルガさんは「類いまれなダンサー」であり、非常に悲しい出来事がきっかけであったとはいえ、「私たちのカンパニーに迎えるのは、光栄なこと」だと述べています。

オルガさんは4月、ロシアの古典バレエ『ライモンダ』で、オランダ国立バレエ団のダンサーとしてデビューする予定だという。

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以下、オルガさんの投稿の一部をご紹介。

「21世紀であるにもかかわらず、いまだに20世紀を生きているかのようです。現代の見識ある世界において、文明社会は平和的な交渉によってのみ、政治的な問題を解決するものだと考えています」
「ロシアを恥じることになるとは、思ってもみませんでした…人々が命を失い、屋根を失い、家を捨てなければならなくなっているのは、つらいことです。数週間前、このようなことが起きるとは、誰が想像していたでしょうか?」
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VALERY HACHE//Getty Images
舞台に立つオルガさん、2015年撮影
「私たちは、軍事衝突が起きているその震源地にいるわけではないかもしれません。ですが、この世界的な大惨事に、無関心ではいられません」
「オランダ国立バレエ団は私にとって、今後バレリーナとしてキャリアを積んでいく上で適した場所だと考えています。かなり前から、こうした行動を取ることを考えていました。ただ、現在の状況によって、その行動を早めることになりました」

※この翻訳は抄訳です。
Translation:Hearsts Contents Hub


From: Harper's BAZAAR JP