語り:エミリー・ラヴィニア

21歳のときにNHS(国民保健サービス)から、HPVの検査と子宮頸部の健康を確認するための子宮頸部細胞診の招待状が届きました。

通常この検査はイングランドとアイルランド、スコットランドでは25歳になってから行われていますが、私が暮らすウェールズでは21歳から行うという方針がありました。そして少し早かったことに、私は命を救われることになったのです。

※ パップスメア/パップテスト。子宮頸がんを発見するための検査のこと

「触れられると病院や手術用具を思い出してしまう」

子宮頸がん検査自体は、心地の良いものではありませんでしたが、我慢できるほどだったと覚えています。そしてこの時は、これから検診や生体検査、手術、療養を繰り返す三年間の闘病生活がくるなんて想像していませんでした。

検査では、HPVとがん細胞が子宮で見つかったという結果がでたのです(前がん性や異常細胞とは違うもの)。闘病生活は20代前半の私にとっては、かなりトラウマになるできごとでした。

今でこそ、いつもセックスについて語っているセックスライターを名乗っていますが、長きにわたって私のセックス観や自分の身体との関わりはネガティブなものでした。闘病後にまたセックスについて考えられるようになるまで何か月もの心理セラピーと理学療法が必要で、セックスを実際にするなんて到底考えられませんでした。

すべてが“機能停止”してしまっていたのです。骨盤の筋肉が常に緊張で強張り、脳と身体がバラバラになったような気持ちでした。誰かに触れられるたびに、病院や手術用具を思い出してしまうのです。拡張器を使うこともたびたびあり、これは悪夢として夢に出てきました。“限界”だったというだけでは、表現ができない状態でした。

子宮頸部の半分を残して回復へ

診断後の検査や注射、手術と治療の数々によって、私は大学生活のたくさんの大切な場面を過ごせませんでした。友人たちはみな楽しそうにしているのを、横目に見ながら。病院の予約がずっと続くんじゃないかと、おわりの見えない日々でした。

しかしその三年後。そのときには多くの手術や治療をほどこしていたので子宮頸部の半分を失っていましたが、半分を残して私は回復したのです。 同時に、これ以上誰にも私の膣を触られたくないという気持ちも芽生えました。

回復のプロセスは長いものでした。ウソなんじゃないかと思うような、今になっては笑い話にしたくもなるようなことですが、抗生物質のクリームを膣口に塗るときは、自分で陰部に触れることに抵抗があったので、脚を開いて浴室の床に寝ながら母親に塗ってもらっていました。お互いにとって、複雑なものだったと思います。

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Keith Brofsky//Getty Images

子宮頸がんはいずれ“撲滅”できる病気

NHSのデータによると、HPV(ヒトパピローマウイルス)は少なくとも子宮頸がん発症例の99.7%に関連しているのとこと。そして性交経験のある人のほとんどは、生涯の中でいずれか感染すると言われています。

※挿入を伴う行為やオーラルセックスなどを含む

検査を担当した看護師は「HPVウイルスはほとんどの人がもっているけど、ほとんどの場合、その人の免疫によって自然に消える」と言いました。しかし私は運悪く、そのウイルスによって健康に影響が出てしまったのです。

それから12年後の2024年、イギリスでは学校でHPVワクチン(HPVが健康な細胞に感染するのを防ぐための抗体を作るもの)が接種できるようになりました。

このワクチンは子宮頸がんを予防する有効な手段で、頭部と頸部、肛門、生殖器のがんにも効果があります。そしてNHSは2040年までに、ワクチンの普及によって子宮頸がんを撲滅できる可能性があると発表したのです。

しかし新しい調査によると、性的に活発になる前にワクチンを受けることが一番効果的とされているのにも関わらず、(イギリスで暮らす)12〜13歳の女子の6人に1人がワクチンを受けておらず、5人に1人の男の子も受けていません。

3人に1人の女性と従来のジェンダー規範に当てはまらない人は、子宮頸部細胞診を受けていないそう。

「子宮頸がん検診は命を救う」

これらの新しい数字を考慮して、NHSのワクチンとスクリーニング部門ディレクターを務めるスティーブ・ラッセル氏は、対象者の保護者たちにワクチン接種に同意するように促しています。

「中学校 3年の終わりまでに、HPVワクチンを受けた児童は50万人以上に上ります。一方、ワクチンを受けていない女子は5万人以上、男子は7万人以上もいます」

NHSの家庭医で女性の健康専門家であるアジザ・セセイ氏は、HPVには100以上の変種があると説明します。

「イギリスでは11歳から13歳の女の子と男の子に、無料でワクチンが提供されています。学校でワクチンを受け逃した場合は、出生時に女性と割り当てられた人は25歳まで、男性とセックスをする男性の場合は45歳まで保険が適用されます。25歳以上の場合は、薬局やその他の施設で接種できます」

ワクチン接種の有無に関わらず、定期的な検診を受けることも大切です。

セセイさんは「子宮頸がん検診は命を救います。絶対に無視しないでください。定期検診の対象年齢前でも、何か不安があったら医師に相談できるということを忘れないで」とアドバイスしています。

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Westend61//Getty Images

「ワクチンが受けられる時代に希望を感じる」

私の人生は、闘病によって一変しました。すべてを経験してなかったら今の私はなかったかもしれない、そして過去にHPVワクチンが私に提供されていたら...と考えないわけにはいきません。

11歳から13歳の間にその注射を受けていたら、おそらくこのような怖い思いはしなくて済んだはず。子宮頸部の半分を失うことも、何年間もセックスができないなんてこともなかったでしょう。

このようなトラウマを経験すると、心が癒えるまでには長い時間がかかることがあります。だからこそ、ワクチンを受けることができる時代に希望を感じます。そして、みんなで早期発見の重要性について話し続ければ、みんなで検診を受けるようになるでしょう。

私は闘病を通じて、子宮頸がん慈善団体や性機能障害/トラウマをもつ女性の支援に加えて性科学、セックスジャーナリズムなどに興味をもつようになりました。

私は未だにホルモンバランスの問題も抱えていますが、月経も時折くるようになって、妊娠をする可能性は残っていると医師からも言われています。しかし、子宮頸部の全体や一部を除去した場合、流産や早産がより起こりやすくなると言われているのも事実。

自分の心身の健康を取り戻すために私は長年にわたって、セラピーや身体療法、セクシュアルな健康習慣を実践しました。いまだに検鏡を見ると身構えてしまいますが、2040年までに子宮頸がんを完全に撲滅できるかもしれないということに喜びを感じます。

今の10代や20代が、私のような経験をしなくてすむということはうれしいです。

私のアドバイスは「ワクチンを受ける」「バリア式の避妊用具を使う」、そして3年ごとに「子宮頸がん検診にいく」こと。こういった積み重ねが命を救うアクションだと忘れないで。

※本記事は、Hearst Magazinesが所有するメディアの記事を翻訳したものです。元記事に関連する文化的背景や文脈を踏まえたうえで、補足を含む編集や構成の変更等を行う場合があります。
Translation: 佐立武士
COSMOPOLITAN UK