2月14日はバレンタインデーということで、チョコレートを贈ったり、自分へのご褒美として食べる人は多いはず。チョコレートというと、砂糖が多く含まれていて甘いお菓子というイメージが強いですが、チョコレートの主成分である「カカオ」にはミネラルやポリフェノールなどの栄養が豊富で、健康に効果的な面もたくさんあります。

そこで、今回はカカオが秘めている栄養や健康効果、おすすめの取り入れ方について菜食コンサルタントのYukaさんが解説していきます。

【INDEX】


カカオとは

カカオとは、アオイ科(旧アオギリ科)の常緑樹。その果実の種が「カカオ豆」と呼ばれ、お馴染みのチョコレートやココアの原材料です。カカオの学名であるテオブロマ(Theobroma)は、ラテン語で「神の食べ物」という意味で、メキシコのアステカ族の神話に由来しているそう。古くからカカオ豆をとても大切にし、貨幣として使ったり、儀式の際に神様へ捧げたりしていた地域もあったのだとか。

カカオの原産地は中南米にあるベネズエラを中心としたオリノコ川流域や、ブラジルのアマゾン川流域と言われていますが、現在はその他の地域でも栽培されています。カカオは寒さや直射日光、乾燥に弱く、とてもデリケートな植物で、平均気温27度以上で気温差が小さく、高温多湿の熱帯性気候と半日陰の環境が、栽培に必要な条件。そしてこの条件を満たすのが、赤道を挟んだ南北約20度の範囲に広がる「カカオベルト」と呼ばれる地帯です。

現在のカカオが生産されている国々も「カカオベルト」に位置し、なかでもコートジボワールは世界有数のカカオ生産国として知られています。その生産量は、世界の収穫量の3分の1を占めるほど! それに続いて、ガーナ、インドネシア、ナイジェリアといった国が主要な生産国として名を連ねます。

cacao
Jeremy Horner//Getty Images

カカオに含まれる栄養素

ココアやチョコレートの原料であるカカオは薬として使われていたこともあるほど体に良いとされる食べ物で、その理由は豊富な栄養素にあります。

カカオには「マグネシウム」、「」、「亜鉛」といった体の調子を整えるために必要なミネラルが豊富に含まれています。

例として、カカオパウダー大さじ1に含まれる栄養素は以下の通り。

  • マグネシウム:26ミリグラム
  • 鉄:0.8ミリグラム
  • 亜鉛:0.4ミリグラム

上記のカカオパウダーを豆乳で溶かしたホットココアをつくる場合、次のようにより栄養価が高まります。

  • マグネシウム:76ミリグラム
  • 鉄:3.2ミリグラム
  • 亜鉛:1.0ミリグラム

つまり、カカオパウダーを豆乳に溶かして飲むだけで、成人女性の場合、1日に必要なマグネシウムの約9%、鉄の約30%、亜鉛の約12.5%を摂取することができます。

マグネシウム

マグネシウムは骨や歯の構成成分として、リンやカルシウムとともに骨を形成するという役割があるほか、筋肉や脳、神経などにも存在し、筋肉収縮や神経伝達、血圧や体温の調節などに関わっています。

また、マグネシウムは数多くの酵素を活性化させる作用もあるため、体内の重要なはたらきを担う、欠かすことのできない栄養素です。

鉄のメインの仕事は血液中の赤血球を作るヘモグロビンの材料となり、身体中に酸素を運ぶこと。

鉄が不足すると貧血になるリスクや集中力の低下、頭痛、倦怠感が抜けなかったり、めまい、月経不順などの症状に繋がることもあります。

亜鉛

亜鉛は体内に存在する酵素の構成成分として活躍するほか、タンパク質の合成にも関わっています。亜鉛が不足すると、味覚障害や抜け毛、肌荒れなどの症状が出ることがあります。

他にもカカオにはフィトケミカルという有効成分も。さらに、カカオの苦味や香りのもとになり、リラックス効果もあるというテオブロミンや、抗酸化作用のあるカカオポリフェノール、そして腸内環境を改善するのを助けるカカオプロテインなど、様々な栄養素が含まれています。

raw organic cocoa beans in a bowl
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カカオの健康効果

カカオは含まれている栄養素や有効成分の働きにより、たくさんの健康効果が期待されています。

動脈硬化の予防

動脈硬化を引き起こす原因の一つとして、体内に生じる活性酸素によって悪玉コレステロールが酸化することが挙げられます。カカオに含まれるカカオポリフェノールは、強い抗酸化作用を持つため、悪玉コレステロールが酸化されることを防ぎ、その結果動脈硬化を予防する効能があるといわれています。

またカカオポリフェノールは、血液をサラサラにしたり、血管のしなやかさを向上させたりするのに加え、善玉コレステロールを増やす働きも確認され、動脈硬化の予防に良い効果が期待できます。

アレルギーの予防

アレルギーの発症には、過剰に作られた活性酸素が関わっているといわれています。カカオに含まれる抗酸化作用のあるカカオポリフェノールは、活性酸素が発生すること自体を抑え、アレルギーの予防や軽減に繋がります。

またカカオポリフェノールは、アレルゲンに対して抗体が作られるのを防いだり、炎症やアレルギー反応に関与するヒスタミンの放出を抑えたりします。これに加えて、アレルギー疾患における炎症の一因にもなる好酸球の働きも抑えることができ、アレルギー症状の抑制や緩和に効果的です。

肌トラブルの予防

ここまでで何度か登場している活性酸素は、肌のエイジングに繋がるトラブルも引き起こすといわれています。

カカオポリフェノールは抗酸化作用によって活性酸素の働きを抑え、肌荒れや、シミ、しわ、たるみなどの老化による肌トラブルを予防。またカカオに含まれる亜鉛も、健康的な肌作りをサポートします。

腸内環境を整える

カカオに含まれるカカオプロテインは消化されにくい性質を持っていて、食物繊維のような働きをします。小腸では消化吸収されずに、そのまま大腸まで届いて便を柔らかくし、便通をスムーズにしてくれる効能があります。

また、カカオプロテインは腸内の善玉菌のエサとなるため、善玉菌を増やすのにも貢献。これは、腸のぜん動運動を促して粘膜細胞を増殖させ、腸の免疫力を高めることにも繋がります。

集中力を高める

カカオに含まれるテオブロミンには、カフェインに似た中枢神経を刺激する働きがあり、集中力や記憶力、思考力を高める効果があるといわれています。ただし、カフェインのような覚醒作用はなく、自律神経のバランスを整えて緊張を和らげる効果が期待できます。「コーヒーを飲むと集中力は上がるけど、なんだか心臓がドキドキする」という人にはココアがおすすめです。

さらにテオブロミンは別名“幸せホルモン”ともいわれるセロトニンの働きを助長し、脳の活性化を促す効果をもつとされています。

high angle view of food on table
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おすすめのカカオの取り入れ方

日常生活にに取り入れるのに最適なカカオ食品は「カカオニブ」、「カカオパウダー」、「高カカオチョコレート」の3つ。ここからはおすすめの食べ方をご紹介します。

カカオニブ

カカオニブとは、生のカカオ豆を炒って皮をむき砕いたもの。チョコチップのような見た目をしていて、クッキーやマフィンなどの焼き菓子、アイス、ヨーグルト、スムージー、グラノーラなど、様々な食品に混ぜて食事に取り入れることができます。

もちろんそのまま食べることもでき、カカオの風味とサクサクとした食感を楽しむことができます。

カカオパウダー

カカオパウダーは、カカオを非加熱圧縮(コールドプレス)してできたカカオバターから分離した後に残ったものを粉末にした食品。

このカカオパウダーはカカオニブと同じく、ヨーグルトやアイス、焼き菓子、スムージーに入れることができるうえ、ミルクに混ぜてココアを作ることも可能です。

高カカオチョコレート

高カカオチョコレートは、主にカカオパウダー、砂糖、カカオバターからできている、カカオ含有率が70%以上のチョコレートです。市販の一般的なチョコレートよりも糖分や乳成分が少なく、よりカカオ本来の風味を楽しめます。

小腹がすいたときにおやつとして口に入れても良いですし、ドライフルーツやナッツと一緒に食べるのもおすすめです。

rustic homemade dark chocolate
Emilija Manevska//Getty Images

高カカオチョコレートが良い理由

上述したもののなかでも特にカカオの栄養素を手軽に摂取できるのが「高カカオチョコレート」。

一般的なチョコレートにもカカオは含まれていますが、甘さや口どけ、まろやかさを出すために砂糖やミルクなどを多く配合しているため、カカオ含有率は30~50%ほど。

一方、高カカオチョコレートには一般的なチョコレートの約2倍ほどのカカオが入っているため、より栄養素や有効成分を摂取しやすいのです。また一般的なチョコレートよりも糖分が少ないため、糖分の取りすぎ予防にも繋がります。乳成分の摂取を控えている人にもおすすめ!


カカオが入っているものというと、どうしてもチョコレートやホットココア、ブラウニーなど、甘くて脂質が高いものをイメージしていた人も多いはず。

一方そんなイメージとは裏腹に、カカオには体に良い成分がたくさん詰まっています。健康と美容のために、是非毎日の食生活に取り入れてみて!