少し前までは「ミルク」と言ったら「牛乳」のことを指すことが一般的でしたが、近年はプラントベースな選択の普及とともに、さまざまなミルクを目にすることが増えてきました。

豆乳やアーモンドミルク、オーツミルクといった植物由来のミルクが普通のスーパーにも並ぶようになってきたけれど、まだ認知度が低いのが「ヘンプミルク」。実は日本では古くから親しんできた食材で作られており、日本人の体にも相性バッチリの植物性ミルクです。

今回は、菜食栄養学の発信をしているYukaさんが、注目を集め始めているヘンプミルクについて解説。原料や栄養素、健康効果、飲み方、そしてお家でできる作り方をご紹介します。


【INDEX】


ヘンプミルクとは

「ヘンプミルク」とは、ヘンプシードから作られる植物性ミルクのこと。ヘンプシードとは日本語で麻の実のことで、昔から日本で食べられてきた八穀(稲・きび・大麦・小麦・大豆・小豆・あわ・麻)のうちのひとつ。日本食に合うスパイスミックスとしてお馴染みの七味唐辛子にも殻付きの麻の実が入っています。

その麻の実を植物性ミルクにしたヘンプミルクはまだまだ日本では馴染みが薄いですが、欧米ではスーパーで手に入りやすく、栄養価が高く健康に良い飲み物として人気です。

また、現代人の環境問題への意識の高まりを背景に植物性ミルクがどんどん普及してきているなか、へンプミルクの原材料の「麻」という植物は持続可能性が高く、注目を浴びています。

麻は栽培・収穫の過程でのCO2排出量が少ないだけでなく、光合成の速度が非常に速いことからCO2吸収量が多いと言われています。また、栽培に必要な水の量も少なく、自然に降る雨だけで成長することができるため、栽培に多くの水を使用するアーモンドミルクよりも環境負荷が低いのです。

さらに、体質的に乳成分をうまく消化できない(乳糖不耐症)人が多い日本。牛乳や他の動物性のミルクよりも、ヘンプミルクの方が消化器官に負担がかからず体に優しい上、牛乳や大豆、ナッツにアレルギーがある人も安心して飲めるミルクです。

organic hemp seeds
NelliSyr//Getty Images

ヘンプミルクの栄養素

ヘンプミルクの原材料のヘンプシード(麻の実)は美容と健康に良いスーパーフードとして人気がありますが、その理由が豊富に含まれる栄養素。そのヘンプシードを原材料とするヘンプミルクももちろん栄養価が高く、数ある植物性のミルクの中でも栄養が豊富な部類に入ります。

植物性たんぱく質

ヘンプミルクには、20種類あるアミノ酸の中でも食事から必ず取らないといけない9つの必須アミノ酸がすべて含まれる、良質な植物性たんぱく質が豊富です。

ビタミン・ミネラル・食物繊維

ビタミンやミネラルも豊富で、特にビタミンEや鉄分、亜鉛、銅、マグネシウム、マンガンの摂取に役立つほか、第6の栄養素と呼ばれる食物繊維もたっぷり。

オメガ3脂肪酸

さらに注目したいのが、「オメガ3脂肪酸」です。他の一般的な植物性ミルクには含まれていない栄養素のオメガ3脂肪酸は、魚から取ることができる栄養素として知られています。

オメガ3脂肪酸が取れるプラントベース食材としてアマニ油やチアシードなどが挙げられますが、色々なタイミングで取り入れやすいヘンプミルクは重宝するはずです。

a wooden spoon with hemp seeds and a glass of hemp milk stand on a concrete surface food background
Tatyana Orakova//Getty Images

ヘンプミルクの健康効果

ヘンプミルクにはさまざまな栄養素が豊富に含まれているということが理解できたところで、実際に食生活に取り入れるとどんな効果が期待できるのかについて見ていきましょう。

美肌効果

ヘンプミルクに含まれる9つの必須アミノ酸は、筋肉作りのサポートをしてくれることはもちろんですが、コラーゲンのを生成する材料となり健康的な肌作りに貢献してくれます。

また、代謝を促進してくれるビタミンEや、アンチエイジング効果のあるオメガ3脂肪酸が含まれ、肌のくすみやシワの予防の効果が期待されます。

貧血予防

ヘンプミルクには、赤血球を作るのに必要なタンパク質と鉄が豊富に含まれるため、体の中で健康的な血液を作るお手伝いをしてくれます。豆乳よりもヘンプミルクの方が鉄が多く含まれるため、貧血気味の方は豆乳の代わりにヘンプミルクを取り入れてみるのもおすすめです。

また、体の中で健康的な血液が増えると疲労感や倦怠感の解消にもつながります。

腸内環境の改善

ヘンプミルクには含まれる食物繊維は、不溶性食物繊維という種類で、腸の動きを活発にさせて腸に蓄積している老廃物を排出するお手伝いをしてくれます。

結果として便秘解消や倦怠感の緩和、肌荒れの改善や倦怠感の緩和など、腸内環境が良くなることによってさらなる嬉しい効果も期待できます。

oatmeal porridge with apple and blueberries
Arx0nt//Getty Images

ヘンプミルクの作り方

環境負荷が少なく、体にも優しく、いいことだらけのヘンプミルクですが、近所のスーパーでなかなか手に入らないのが難点です。一部の自然食品店で売っている場合もありますが、値段的に手を出せないことも多いと思います。

そこで今回は自宅で簡単にできるヘンプミルクの作り方をご紹介します。

材料(コップ1杯分)

  • 水…180ml
  • ヘンプシード…大さじ1
  • 甘味料(メープルシロップ、デーツなど)…お好みで
  • バニラエッセンス…お好みで

※料理で使用したい場合は、甘味料やバニラエッセンスは不要

手順

  1. 材料をハイスピードのブレンダー(ミキサー)に約1分間しっかりとかける
  2. 液体が乳化したら完成!

豆乳やアーモンドミルクなどの他の植物性ミルクは、事前に材料を浸水させたり、加熱する必要があったり、最後に濾さないといけなかったりで時間と労力がかかってしまいます。

でもヘンプミルクの場合は、ミキサーにもよりますが、濾す必要がなく、思い立ったらすぐにとても簡単に作れるのが魅力です。

ヘンプミルクの味とおすすめの飲み方

家で作れるなら取り入れられるかも! と思っても、やっぱり気になるのはそのお味。

豆乳と比べると、スッキリさらさらしていてコクはあまりありません。また、オメガ3脂肪酸が豊富なこともありほんのり青臭さがあるため、飲み物としてそのままプレーンで飲むとなると好き嫌いが分かれやすいかもしれません。

そのため今回ご紹介しているヘンプミルクのレシピにも甘味料やバニラエッセンスを足して、飲みやすいレシピにしています。コーヒーに足したり、ココアを作るときに使ったりグラノーラを食べたりするときに使う分にはそれほど青臭さは気にならないと思います。

私も自分で作るときは何かしらの甘味料を足したり、最初からココアパウダーを足して作ったりして、青臭さが気にならないように作っています。


日本ではまだ馴染みの薄いヘンプミルク。健康的な生活を心がけている方や環境問題を意識して生活されている方にはぴったりな植物性ミルクなため、気になった方はぜひご自宅で試してみてください。

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