数あるワインのなかでも、最近よく聞く「ナチュラルワイン」。ほかのワインとは何が異なり、どんな魅力があるのでしょうか? 今回は、ナチュラルワインにまつわる様々な疑問を専門家が解説!

※この記事は、海外のサイトで掲載されたものの翻訳版です。データや研究結果はすべてオリジナル記事によるものです。

※アルコールの分解能力には、個人差があります。お酒を飲む際は、自分にとっての適量やその日の体調を考えて、節度を持ってたしなむようにしましょう。適正飲酒の10か条は、<アルコール健康医学協会>のサイト上より確認できます。

ナチュラルワインが人気な理由

従来のワインと比較すると、ナチュラルワインは味も形もそれぞれ異なる、いわゆる“手作りワイン”のようなもの。多くのワイン愛好家が、ナチュラルワインを「より生っぽく、よりワクワクする味わい」だと評価するのは、同じラベルのワインでも、ボトルによって味わいに違いがあるからです。

ナチュラルワインは今、世界中で人気が高まっています。多くのセレブからも愛されており、特に歌手のデュア・リパや、ラッパーのアクション・ブロンソン、俳優のエリック・ウェアハイムなどがナチュラルワインの愛飲家として有名で、それぞれおすすめのナチュラルワインを公表しているほど。さらに、ヨーロッパやアメリカでは最近、ナチュラルワインの提供を売りにする、おしゃれなレストランやワインバーも数多く出現しています。

一時的なトレンドのようにも見えますが、その歴史は古く、実は近年のワイン製造方法が開発される前までは、あらゆるワインがナチュラルワインの製法で造られていました。「二日酔いや脱水症状を和らげ、腸の健康を促進するなど、従来のワインよりも健康に良い」とされる面を主張する意見もあり、それも近年のナチュラルワインの人気を押し上げている理由の一つとなっています。

winetasting
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「ナチュラル」なワインとはどういうもの?

ワイン専門のジャーナリストで作家のアリス・フェイリング氏は、著書『Natural Wine for the People』(原題)のなかで、「ナチュラルワインとは、不純物の入っていないワインのこと」だと述べています。

さらに、彼女はワイン業界のある秘密についても告白。従来のワインには「完全に合法ですが、必要のない72種類もの添加物が含まれている可能性がある」と言及しました。

そのなかには、ワインの色をより良く見せ、味や甘みを高めるシロップ状のブドウ濃縮液「メガ・パープル」や、風味やタンニンを加える「オークチップ」、濁りを取り除く「アイシングラス(特定の魚の浮袋を乾燥させた清澄剤)」などがあります。従来のワインすべてに入っているわけではありませんが、原材料に不安を覚えた場合は製造工程をオープンにしている生産者のワインを購入することをおすすめします。

また、ナチュラルワインは特定の種類のブドウから造られているわけではなく、極力人の手を加えない「ロー・インターベンション・ワイン」という製造方法が使われています。もちろんブドウ果汁が発酵しすぎてビネガー(酢)にならないよう、多少手を加える必要はありますが、それでも従来のワイン造りに比べると、かなり人工的な工程が少なくなっています。

ripe grapes hanging on the vine at bordeaux region vineyards
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なお、「ナチュラルワイン」と呼ばれるものに政府の規定などはありませんが、少なくとも以下の基準を満たしていることが期待されます:

  1. 農薬や除草剤が散布されていない有機ブドウを使用している
  2. ブドウに自然に付着している酵母、または有機培養した酵母でブドウを発酵している
  3. 無ろ過で瓶詰めされており、従来のワインに含まれる亜流酸塩(酸化防止や殺菌効果のある物質)やその他の添加物がゼロ、または最小限に抑えられている

なぜすべてのワインがこの方法で製造されていないのかというと、オーガニックの野菜や果物と同様に、より多くの時間と労力がかかる製法では、1本あたりの平均コストが高くなってしまうため。従来のワインの製造方法であれば低コストで大量生産が可能となり、どのボトルも同じ味になるよう、各工程でコントロールができるのです。

friends toasting glasses with red wine in wedding
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どんな味がする?

味は生産者やブランドによって異なりますが、ものによっては少し変わった風味に感じる場合も。その味わいはコンブチャや風変わりなシードルを思わせることもあります。一方で、多くのナチュラルワインはフランスで「グルグル(フランス語で「ごくごく」の意味)」と呼ばれ、軽くて飲み心地の良い、美味しいワインとして知られています。

なぜワインが濁る?

前述の通り、ナチュラルワインはろ過したりアイシングラスや卵白などの清澄剤(せいちょうざい)を使用したりしないため、濁っていたりかすんで見えたりすることがあります。ナチュラルワインのボトルを逆さまにすると、中に沈殿物が残っているのが見えるかもしれません。沈殿物に害はありませんが、口当たりが不快だと感じる場合は、ボトルやグラスの底に沈澱させてから飲むことをおすすめします。

オーガニックワインとは何が違う?

すべてのナチュラルワインは有機ブドウから造られたオーガニックだといえますが、オーガニックワインのすべてがナチュラルワインの製法で造られているわけではありません。

亜流酸塩は含まれている?

ブドウが発酵してワインになる過程で亜流酸塩は自然に発生するため、ナチュラルワインにもまったく含まれていないわけではありません。生産者によっては、出荷時にワインを保護するため、あるいは劣化させないため、瓶詰めの直前に少量の亜流酸塩を加えることもあります。

ただし、製造過程で天然酵母を死滅させるほど亜流酸塩を使う従来のワインに比べると、その量ははるかに少ないと考えられます。アメリカでは、従来のワインに350ppmまで亜流酸塩を添加することが認められていますが、ナチュラルワインは20ppm程度しか含まれていないことが多いそう。

red wine rustic wood table and christmas tree with ornaments
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二日酔いになりづらい?

お酒がとても得意な人でない限り、アルコールを大量に摂取すれば翌朝はひどい気分になってしまう可能性が高いです。一方で、ほとんどのナチュラルワインはアルコール度数が従来のワインよりも低めの10〜12%なので、激しい二日酔いにはなりにくいかもしれません。

また、もしワインに含まれる亜流酸塩に対する過敏症が翌日の不調の原因となっているのであれば、含有量が少ないナチュラルワインのほうが、体調不良のリスクが下がる可能性があります。ただし、これらの考えを裏づける決定的な科学的根拠はまだ出ていないため、ほかのアルコール飲料と同様に、水分をとりながら適度に楽しむのがベストです

どこで買うことができる?

まずは、近くのワインショップやワインバーを訪ねてみるのがおすすめ。赤や白、ロゼ、オレンジ、スパークリングなど、様々な種類から好みのテイストを探してみましょう。家で楽しむ場合は、ボトルを冷暗所に保管し、購入後1〜2年以内に飲み切るように。ナチュラルワインは、添加物が少ないことで従来のワインよりも状態が変化しやすいため、新鮮なうちに楽しむのがカギです。

From: Fujingaho JP