今年はイギリスで同性婚が制度化され、結婚の平等が達成されてから10周年。これはイギリスのLGBTQ+の権利拡大における大きな一歩でしたが、クィアな人々からはまだ結婚シーズンにさみしさや疎外感を感じているといった声も。

コスモポリタン イギリス版>から、現地で生活を送る当事者の声をご紹介します。

結婚の平等が達成されても…

クィアライターでパフォーマーのマズ・ヘッジホッグさんは「結婚式シーズンは好きですが、部外者であるという感覚は拭いきれません」と言います。

「もともと結婚願望はあったのですが、過去の恋愛を経て結婚は自分には合わないのかもと思い始めています。もちろん参加した結婚式では、他人の幸せを願い自分もハッピーな気持ちです。でも自分が一部になれているようには思えません」

モノガミー(一夫一婦制、一夫一夫制、一婦一婦制など一対一の恋愛関係)が結婚によって公にお祝いされているように、「自分にも何かあったら」とヘッジホッグさんは感じるそう。

「自分にいつか結婚規模のお祝いをする何かが見つかるのかわかりません。ビッグなパーティの開催はできても、結婚式のようにわざわざ遠くから人を呼び、多くのスピーチや贈り物が用意されるようなが祝い事ができるとは思えません」
blurred festive party
Linda Raymond//Getty Images

夏は特に同僚の結婚に関する話や、いとこの“独身さよならパーティ”(バチェラーやバチェロレッテパーティ)の投稿などが、Instagramであふれるのだとか。たとえ制度上は結婚の平等が達成されても、クィアの人々の毎日はヘテロセクシュアル(異性愛)でシズジェンダーの人々とは違う点も多いことに気付かされると言います。

多くの人が婚約や結婚など“人生のステップ”を達成する中、クィアの人々は違ったペースで“人生のステップ”を達成していると言われています。それは思春期のころに本来の自分を隠しながら過ごした人が多いため、いわゆる“結婚ラッシュ”の年齢は、クィアな人にとって“第二の思春期”の真っ只中だから。結婚をするとしても、その後になることが多いようです。

「男性はスーツ」「女性はドレス」に違和感

また結婚式の場では、装いやふるまいにジェンダーの固定観念もあります。まだ結婚式に行ったことのないカーソン・ハートレイジさんは、ブライズメイド(花嫁の付き添いの女性)かグルームズマン(花婿の付き添いの男性)のどちらかのみを選んで参加することへの不安があると言います。

ノンバイナリーのサムさんは、結婚式のようなフォーマルなイベントの正装ではジェンダーが二分化されていることに悩んでいるそう。

「どちらのスタイルを選んでも、しっくりきていない感じがあります。礼儀がないと思われたくないので、普段はドレスを着てメイクをしていますが、どうしても違和感と不快感を感じてしまいます」

複数のパートナーとの結婚式はできる?

クィアの人々の中には、ポリアモリー(複数恋愛)やオープンリレーションシップなど“伝統的”でないとされる形の恋愛関係をもっている人も多いですよね。なのでドレスコード以外にも、結婚式の“伝統”に多様な恋愛の形を合わせることが難しいという当事者の声が寄せられます。モノガミーではないチャーリーさんは、以下のように説明。

「もちろん、家族や友達が愛を誓う大切な瞬間に立ち会えているという喜びが勝ります。しかし自分はきっとしないであろう結婚式に参加するのは、やっぱりちょっとつらいです」

1人以上のパートナーとは制度上結婚ができないので、結婚という概念がすごく遠いものに感じるそう。

結婚式のプラスワン(自分のパートナーなどゲストを1人付き添いで連れて行くこと)も、パートナーが2人以上いる場合は難しいです。この場合、チャーリーさんはどちらかを選ぶのではなく、1人で行くことを選ぶと言います。家族はチャーリーさんの恋愛関係をサポートしていますが、周りからの目が恥ずかしいから複数人のパートナーは連れてこないようにと言われているのだとか。

ヘッジホッグさんも結婚の制度がモノガミーを基本に想定されていることで、参加しにくくなっていると感じています。

「モノガミーな恋愛は自分と合っていないと感じつつも、そこに当てはまることができたら…と思う気持ちもあります。同時に社会の“恋愛とはこうあるべき”という圧力も感じていますが、それでも“普通”になれるものではないのです」
「だからこそ、自分とは切り離して祝う気持ちをもつようにしています。それは、ブライズメイド(花嫁の付き添い人)として結婚を祝うけれど、自分自身がブライド(花嫁)になることはないという事実に気持ちの折り合いをつけるということ」

宗教ごとの挙式スタイルも

クィアの人が花嫁になったとしても、まだ疎外感を感じる場合もあります。カトリック教徒として育てられたバイセクシュアルのサムさんは、結婚式においてカトリックの伝統的な要素は重要だと感じるけど、自分の結婚では取り入れられないという悩みがあります。

「今付き合っている女性と、ゆくゆくは結婚をしたいと思っています。でもみんなが結婚式でしている催しを『いいな』って思っても、(カトリック教会では同性愛行為は自然法に反する罪深いものとされているため)自分にはできないんだと思うと悲しい気持ちになります」
「もし、自分の結婚式でカトリックの“婚姻の秘跡”を受けることができないのであれば、周りの人の結婚式でその喜びを分かち合うしかありません」

この記事で紹介したみんなに共通しているのは、「ほろ苦さ」。つらさやさみしさはあるけれど、周りの結婚式に参列し、家族や友達の幸せを祝う喜びはあるのです。

lesbian wedding with friends
Kelvin Murray//Getty Images

愛の形やそれを祝う方法も人それぞれ

「クィアの人々が結婚することができるようになったのは最近で、まだ新しい概念なのでそれを守り祝うことも大事」とチャーリーさんは考えます。

結婚は愛と結びを祝うもので、結婚の文化だって常に変化し続けています。しかし変化はゆっくりで、伝統という理由で疎外されてしまう人も多くいます。今年の結婚シーズンは、少しだけでも周りのクィアの人に思いをはせ、愛の形やそれを祝う方法も人それぞれだといううことを思い出してみるのはいかがでしょうか。

※この翻訳は、抄訳です。
Translation:佐立武士
COSMOPOLITAN UK