「大きな関心や期待を向けられることが苦手」、「イベントが自分のためだと思うと、プレッシャーを感じてしまう」と話すのは、まもなく結婚式を迎えるジャーナリストのアニヤ・メイロウィッツさん。

招待客が楽しめないのではないか、何か悲惨なことが起きるのではないか、誰かを失望させるのではないか…と、考えてしまうそう。不安な思いを抱えつづけた彼女が、結婚式の準備に苦労した道のりと、それを克服したきっかけを語ったエッセイを<Red>からお届けします。

文:アニヤ・メイロウィッツさん

色あせていく幻想

この数年で、多くの友人が結婚し、結婚式という場をつくることがどれほど大変なのかを聞いてきました。

家族や親族はいろんな意見を言うし(正当な意見も、そうでないものもあり)、招待客を決めるのは難しいし、ケーキの味見も思ったほどできない…等々。でも、ウェディングドレスを身にまとい、愛する人々に見守られる当日を迎えれば、あらゆるストレスや苦労は吹っ飛ぶ…はず。

だから、私が昨年10月に婚約したときも、これから何が待っているのか、まったく知らなかったわけではありません。愛する恋人と結婚できると思うと興奮でクラクラするようでしたが、結婚式の準備をしなければならないと思うと、気分が悪くなりました。

「最初は圧倒されるけど、そのうちやるべきことに慣れていくから」と、幸せに結婚した友人たちは言いました。

“大丈夫”になるのを、8カ月間、辛抱強く待っていましたが、どうやら私には反対のことが起きているようです。時間が経つにつれて不安が増し、結婚式への幻想は色あせていくのです。

主役になるのが苦手だった

不安はパートナーに関するものではなく、招待客が楽しめないのではないか、何か悲惨なことが起きるのではないか、あるいは、もしかすると、何らかの意味で、家族の誰かやパートナー側の家族の誰かを失望させるのではないかという、深刻な不安なのです。合理的でないことはわかっていますが、そういう恐怖から自分を解き放つことができません。

誰かが私の結婚式の話題を持ち出すたびに、私はたちまち緊張します。知り合いの誰かがウエディングドレスを着ている姿を想像するとワクワクするのに、それが自分となると、すくみ上がってしまうのです。

それは、結婚式に関することだけではありません。自分で決められる年になるとすぐ、私は誕生日パーティーをやめました。主役として大きな関心や期待を向けられることが苦手で、イベントが自分のためだと思うと、プレッシャーを感じてしまうのです。

解決のために

結婚式に関する決断を何カ月も延期し、毎週セラピストと話をするうちに、現実に向き合わざるを得なくなりました。解決策を見つけるか、この地獄にはまり続けるかの2択に迫られたのです。

私はパートナーに対して、できるかぎり丁寧に、結婚式について私がどのように不安を感じているか、説明しようとしました。みんなが自分を見ているということへの不安やプレッシャー、友人や家族を会わせることへの心配、招待客の選び方、多くの決断、そして、自分たちが誤った選択をしてしまうかもしれない可能性について。

彼は、大勢の人を招きたいタイプでしたが、理解のある人で、お互いの妥協点を話し合うことにしました。私の気が楽になるならと、双方の両親だけ呼ぶのでもいいと言ってくれましたが、彼のことを考えると、私も罪悪感を感じました。

穏やかに話し合うこともあれば、ヒートアップすることもあり、話は行きつ戻りつしました。そして、数日前、行き詰まってしまったのです。

失敗の可能性をささやく、私の中の不安

机に座りながら、私はパラグライダーをしたときのことを思い出していました。その仕組みは全くわからないけれど、きっと飛べるはずだと、ただ科学を信じて崖からジャンプするのです。

パラグライダーの話を出したのは、崖から思いきって飛び降りるのと結婚式をロマンチックに結びつけようとしているからではありません。私の中の不安な気持ちが、何かが失敗するのではないかという、数限りない可能性をささやくのです。

実際に私がパラグライダーをした時、操縦するパイロットが地上にいるチームと無線で話していた声が聞こえ、翼の一つに問題が起こっていたことを知りました。でも不思議と、あの時のことを思い返すとき、壊れた翼のことはほとんど思い出しません。思い出すのは、青い地平線と白い波のうねり、頬を駆け抜ける風、無重力状態。

こうして私は、自分の中の不安の見つめ方を変えるようにしてみました。私はまた、“崖からジャンプ”したのです。今回は実際に崖からではなく、登記所に電話して、結婚式の予約を入れるというものでしたが。こぢんまりしたイベントになるでしょう。結局、私は私です。でも、今はそれで十分です。

※この翻訳は、抄訳です。
Translation:mayuko akimoto
Red