アメリカではパンデミックによる厳しいロックダウンにより、ウェディングパーティを延期したカップルはたくさん。なかなか先が見えないからこそ、ウェディングのあり方自体に変化が見えてきたよう。

“自分らしさ”を大切にするアメリカでは、コロナ禍でどんなウェディングプランを計画しているのか――。ニューヨークでウェディングプロデューサー、ウェディングファッションエディターとして活躍する松本亜佑香さんに昨今のウェディング事情を直撃! そのほか、さまざまな方のこだわりのウェディングストーリーについても話を伺いました。

4人だけの場合も!少人数ウェディングが当たり前に

コロナ禍前からインティメイト(少人数制)ウェディングはトレンドの兆しだったものの、パンデミックをきっかけに「自分たちにとって大切な人たちと喜びを分かち合いたい」とう意識が強くなり、50名以下のインティメイトウェディング(少人数制のマイクロウェディング)が大きなトレンドに。

「日本では50名規模のウェディングパーティはよく見かけるものの、アメリカでは100名以上のゲストが当たり前。また、ニューヨークで結婚をするためには神父の資格を持った人と証人(見届け人)の友人1名の立会いが必須のため、新郎新婦、神父、証人の4人で形式的に式を挙げる人も多かったようです」(松本さん)

オンライン挙式への切り替え

パンデミックによってオンライン挙式に切り替えたカップルも話題に。オンライン挙式となったのはニューヨーク在住のシューズデザイナー「Sand by Saya」のサヤさん。

“自分らしさ”を大切にするアメリカでは、コロナ禍でどんなウェディングプランを計画しているのか――。ニューヨークでウェディングプランナー、プロデューサーとして活躍する松本亜佑香さんに昨今のウェディング事情を直撃! そのほか、さまざまな方のこだわりのウェディングストーリーについても話を伺いました。
Saya

3月にロックダウンが始まり、当初は5月に予定していたウェディングパーティの目処も立たなくなっていた状況だったそう。ニューヨークでは市役所に結婚の書類の申請をしてから神父と証人にサインをしてもらうシステムで、書類の申請をしてからサインまでの有効期限があるとのこと。

サヤさんは4月18日までの有効期限当日にニューヨーク市のニュースを見てZoomでの結婚式が可能になったことを知り、有効期限の2時間前の午前11時にZoom挙式を決定! 夫の出身地イギリスの家族、住まいのあるニューヨークの友人に急遽声をかけて40名ほどが参加し、オンライン挙式を開催することに。

「イギリスはディナーの時間帯だったので大盛り上がりでした。高齢の親戚にもZoomだと会えたので良かったです。ただしこれは仮のパーティ。来年にはイギリスと日本の両親を招いてパーティをしたいので、早く自由に旅行ができるようになることを願っています」(サヤさん)

自然&ラグジュアリーな国内ウェディング

「これまでは海外ウェディングが人気だったのが、ゲストも移動しやすい国内でのデスティネーションウェディングも人気が出てきています」と松本さん。

状況次第とはいえ、国内でのウェディングはトレンドとして続くと言われていて、ユタ州にあるラグジュアリーリゾートホテル「アマンギリ」のような雄大な自然もありつつラグジュアリーな場所が注目されているそう。

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日本のようにウェディングフォトだけ撮影するというカップルはアメリカでは少なく、まずはコロナ禍で少人数制の挙式をして、アフターコロナに結婚記念パーティを従来の規模で開く予定のカップルもいるとのこと。

サステナブルなレンタル&ユーズドドレスにも注目

コロナ禍以前からウェディング業界でも「サステナブルやエコフレンドリー」は意識されるように。実はアメリカでは、新品のウェディングドレスを購入するのが一般的なのだそう。

「ウェディングドレスに関しては、5~6年くらい前までは日本やアジアの『ウェディングドレスのレンタル文化』に懐疑的だったのが、アメリカでも『ドレスをレンタルするのは実は賢くてサステナブルな取り組みだ!』と少しずつ見直され始めました」(松本さん)

ただ、アメリカではパーティやアフターパーティでかなり激しくダンスをするため、レンタルドレスを綺麗な状態で数回着られるようにキープするのはなかなか難しいよう。しかし、Nearly Newlywedといったような、サンプルドレスやユーズドドレスが購入できる、セカンドハンドビジネスは好調とのこと。

「かわいい」よりも「自分らしい」ドレス

パンデミックの影響でドレスに対しても「自分にとって一生愛せるものとは」と考える花嫁が増え、クラシカルでオーセンティックないわゆる王道のスタイルやシンプルで質が良いものなどが注目されています。

アメリカではボディコンシャスやバックシャンなドレス、フェミニンでコケティッシュなデザイン、取り外しのできるドラマチックなケープも人気だそう。

“自分らしさ”を大切にするアメリカでは、コロナ禍でどんなウェディングプランを計画しているのか――。ニューヨークでウェディングプランナー、プロデューサーとして活躍する松本亜佑香さんに昨今のウェディング事情を直撃! そのほか、さまざまな方のこだわりのウェディングストーリーについても話を伺いました。
Oscar de la Renta
「アメリカは『自分らしいか』という基準で選ぶ人が多いです。ドレスも型にはまらず、ブランドから選ぶというよりも自分に似合うスタイルやシェイプだったり、デザイナーがどんな想いで作っているかという基準で選ぶ花嫁もいます」(松本さん)

ブランドにこだわらない!世界に一つの婚約指輪が人気

婚約指輪に関しては、ブランドで指輪を選ぶというよりも、もっとパーソナルでユニークで自由な選択になっている傾向がある、と松本さんは話します。

「『婚約指輪はダイヤモンドでなければならない』という意識はなく、自分の好きな石のリングを選ぶ人も増えています。あとは、ヴィンテージのジュエリーや16世紀から好まれているローズカットダイヤモンドが見直されているなど、家族や祖先を感じられるような“指輪がもつストーリー性”に重きを置いていると思います」(松本さん)

セレブで言うと、アリアナグランデの婚約指輪はパールが組み合わさったリングで、リリー・コリンズの指輪は、ローズカットダイヤモンドが話題に。こういった影響もあって、さらに人気が出るのではと言われているそう。

「アメリカでは結婚後も普段から婚約指輪と結婚指輪をセットでつけていているのが一般的で、私も婚約指輪を選ぶ時に『お年を召された時を想像してご自身に合う形、大きさを選ばれると良いですよ』と言われたことがあります。確かに、レストランや街中で年齢を重ねた手に婚約指輪と結婚指輪をつけていらっしゃる方を見かけるとお二人の愛を感じられてとても美しいと感じます」(松本さん)

ニューヨークでハンドモデルとして活躍する永瀬まりさんは、ニューヨークのジュエリーブランド「MIKKO JEWELRY」で特別にオーダー。

“自分らしさ”を大切にするアメリカでは、コロナ禍でどんなウェディングプランを計画しているのか――。ニューヨークでウェディングプランナー、プロデューサーとして活躍する松本亜佑香さんに昨今のウェディング事情を直撃! そのほか、さまざまな方のこだわりのウェディングストーリーについても話を伺いました。
Liliya Nazarchuk
「これまでハンドモデルとして数え切れないほどの指輪を身につけさせていただいた中で、もし自分が選ぶなら、手が美しく見えるようなこだわりを詰め込んだオーダーメイドのものが良いと思うようになりました。
今回依頼をしたMIKKOさんはプライベートでも親交があるのですが、本当に才能があって信頼できるジュエリーデザイナーなので私の中では彼女一択でした」(永瀬さん)

デザインにもこだわり、地金はなるべく華奢に、指を長く見せるためV字を意識した流線型のシェイプ、ダイヤは大きさやカットの違う複数の石を隙間なく配置して華やかな印象に、セッティングは低めを希望など、細かな要望を伝えたそう。

アメリカの婚約指輪市場はダイヤの大きさ勝負というところもあり、石のクオリティを少し落としてでも大きなダイヤを希望する女性が多い中、永瀬さんは大きさ以上に輝きを選択。クオリティ優先でダイヤモンドを探してもらったと言います。

「アメリカでは結婚後も婚約指輪を普段使いする傾向があるので、婚約指輪を引き立てるデザインの結婚指輪をセットで作ってもらいました。こちらは、中心から外側に向けてダイヤが大きさのグラデーションで並ぶようなデザインに。地金の光沢も見えるように石を配置してもらい、結婚指輪を単体で着ける時にはあまり目立ちすぎないようなシックなデザインを希望しました」(永瀬さん)

実家でのパーティも!パーソナルなストーリーを重視

パンデミックという実体験に基づいて、きちんと自分自身の意思や理由で選択しているカップルが増え、それがトレンドになってきているよう。松本さんも、「ウェディング自体がとても本質的になってきたなと思う」とコメント。

「パンデミックの影響で『今を大切に生きよう』という意識が世界的に芽生えたと思います。それは結婚や結婚式に対しても同じで『自分たちにとって大切な人、モノ、コトは?」と考えるようになったカップルが多く、ドレスも指輪ももっとパーソナルなものや作り手の想いや環境に配慮したものかなどを意識する人が多くなったと感じます」(松本さん)

ミシガン州グランド・ラピットで暮らすニッキーさんは、同州トラバーズシティでワイナリーを営む実家のぶどう畑で結婚セレモニーを開催。

“自分らしさ”を大切にするアメリカでは、コロナ禍でどんなウェディングプランを計画しているのか――。ニューヨークでウェディングプランナー、プロデューサーとして活躍する松本亜佑香さんに昨今のウェディング事情を直撃! そのほか、さまざまな方のこだわりのウェディングストーリーについても話を伺いました。
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「特別な日のパーティは、実家の庭を会場として選びました。自分が育った思い出の場所に友人を招くことができるし、もちろん無料なのも◎」(ニッキーさん)

日本でも少しずつ変わってきているウェディングのスタイル。アメリカのトレンドで気になるものがあったらぜひ参考にしてみて!


松本 亜佑香(まつもと あゆか)さん

“自分らしさ”を大切にするアメリカでは、コロナ禍でどんなウェディングプランを計画しているのか――。ニューヨークでウェディングプランナー、プロデューサーとして活躍する松本亜佑香さんに昨今のウェディング事情を直撃! そのほか、さまざまな方のこだわりのウェディングストーリーについても話を伺いました。
Ayuka Matsumoto

福岡県生まれ。現在ニューヨーク在住。大学卒業後、FMラジオナビゲーター等を経て、東京・ニューヨークの金融機関でイベント・IRコーディネーターなどを経験。現在は、ニューヨークを拠点に世界中を飛び回りエマージング・デザイナーを発掘し日本へ繋げるファッション & ライフスタイル ナビゲーター、ウェディングプランニングやフォトグラフィーをプロデュースする EAMのファウンダー&クリエイティブ プロデューサーとして活動。また、日米のメディアでブライダルファッションに関しても執筆中。