ここ数年で注目を集めている「チートデイ(cheat day)」。cheat(チート=「ズル」「ごまかし」)にdayをつなげた英語で、「ダイエットを休む日」という意味で使われています。欧米で「Metabolic Confusion(メタボリックコンフュージョン=代謝を混乱させる)」という呼び方でも知られるこのダイエット法は、体の反応を惑わす方法によって代謝を早め、減量を促進するというもの。

では、「チートデイ」とは一体どんなダイエットなのでしょうか? 本記事では、専門家による安全性や効果についての解説を交えて、その実態を紹介します。

※この記事は、過剰な減量(ダイエット)を推奨するものではありません。基礎代謝量には個人差があり、身体の状態や生活習慣によって健康に取り組めるダイエット方法も異なります。新たなダイエットに取り組む際にはリスクを知ったうえで判断をし、また基礎疾患を抱えている場合には必ず医師または資格を有する医療従事者の助言を仰いでください。

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チートデイとは?

チートデイとは、定期的にカロリーの摂取量を抑える時期と高める時期を繰り返す方法で、「カロリーシフティング」と呼ばれることも。

内科医で栄養学の専門家であるカーラ・ディセンゾ・フリン博士は、このように説明します。

「このダイエットは、代謝を落としたり食欲が増進しないように、“体を混乱させる”ことができるのではないかという考えに基づいたものです」

つまり、体が処理するエネルギー量を変化させることで、代謝を落とすことなく、基礎代謝率、すなわち生命活動を維持するために必要な最低限のエネルギー量を引き上げるということ。それにより多くのエネルギーを消費し、脂肪を減らすという効果が期待できるのだとか。

栄養学と自然治癒の専門家として知られる医師、ジョエル・ファーマン博士は以下のように述べています。

「いったん自分の理想体重に到達すると、人体はそれ以上の減量に抵抗するようにできています。そのため、代謝率や体温、呼吸、甲状腺の活動の低下などが起こるのです」
ice cream scale
Shana Novak//Getty Images

チートデイダイエットのやり方

厳格なルールは存在しないという「チートデイダイエット」。今回は2パターンの方法をご紹介します。

2週間を1サイクルとする場合

  • 2週間を1サイクルとして、そのうち11日間はカロリー制限を続け、残りの3日間だけ高カロリーの食事を取る期間とするやり方

    1カ月を1サイクルとする場合

    • 1カ月を1サイクルとして、3週間は低カロリーのダイエットを続ける期間とし、あとの1週間を高カロリーの期間とするやり方

      また、このダイエット中に食べるべき具体的な食品についても、明確な指針はないそう。

      a middle aged woman sitting in the kitchen at the glass table
      Fiordaliso//Getty Images

      安全性やリスクについて

      基礎疾患などの健康問題がなければ、このダイエットの実行は誰でも可能とのこと。ただし、どんなものであっても、新たな食事法を取り入れる前は専門家に意見を聞くようにしましょう。

      また、自分の身長と体重に応じた、適正なエネルギー量を摂取することを心がける必要があります。

      「どのようなダイエットであっても、新たにはじめようとする場合はできれば栄養学を専門とする医師に、適正な栄養を摂取しているかどうか相談しながら行いましょう。必要なエネルギー量には、かなり個人差があります」

      「たとえば身長が195センチほどある人が、低カロリーの期間中に摂取するエネルギー量を1200カロリーにした場合、それはもう“飢餓状態”であり、摂取量が不適切であると言えます」

      チートデイダイエットのメリット

      さらにフリン博士は、チートデイの長所として「このダイエットを実行する人が、単にカロリー制限を行うだけのダイエットに比べ、食事に満足感を覚える機会がより多く、長く続けられる可能性が高いという点にあるでしょう」と、説明。

      「けれど、今のところ本当に代謝を混乱させることができるのかの確証はなく、私自身も確信はありません。それでも、カロリー制限の合間により多く食べられる期間をはさむことで、これまでにない効果があると信じている人がいるのも事実です」

      このカロリーシフティングを、カロリー制限と比較した研究結果が存在。実験の参加者を「カロリーシフティングを行うAグループ」と「カロリー制限だけ行うBグループ」にわけて、前者は45%、後者は55%のエネルギー摂取量を減らしたそう。

      Aグループは2週間を1サイクルとして、定期的にそのうち3日間は制限なく食事を取るのに対し、Bグループは毎日同じエネルギー量の食事を継続。どちらのグループも全般的に減量に成功したものの、実験終了後に行った聴き取りの結果、AグループはBグループに比べて空腹感を覚えることが少なく、満足度が高かったのだとか。

      さらに、Bグループの36%が実験終了前に脱落したのに対し、Aグループは途中でリタイアする参加者が12%にとどまったのだそう。

      チートデイダイエットの問題点

      減量のために代謝を促進するこのダイエットは、健康リスクと無縁であるとは言えない面があり、また減量を維持するにはこのダイエットを一貫して続ける必要があるのだとか。

      「たとえば食事量を増やして代謝を促進するやり方ですと、老化の進行が速くなり結局は健康を害する恐れがあります」と、ファーマン博士。

      「代謝を加速させるために、『自分の体を混乱させる』ようなことをするのはおすすめできません。健康に良いことを実行しても、それを生涯継続して行わなければ、減量したり、減量のためのテクニックを駆使したりすることには、結局のところメリットがないと知るべきです」

      「食事の質を高め、健康的で栄養に富んだ食品を摂取し、不健康な高カロリー食を避けることで持続的な減量を心がける。これをずっと維持することができれば、おのずと減量にもつながりますよ」

      毎日のエネルギー摂取量を制限するダイエットに比べると、チートデイは続けやすいように思えるものの、その結果として体の代謝が上がるといった根本的な変化に期待するのは難しそう。

      運動と栄養バランスのとれた食事、充分な睡眠を日課とする健康的なライフスタイルの維持を重視することの方が、長い目で見たときに健康的な減量につながりそうですね。

      ※この翻訳は、抄訳です。
      Translation: 西山 佑(Office Miyazaki Inc.)
      WOMAN’S DAY