体重が減るうえにさまざまな健康効果が期待できると言われている「プチ断食」。世間で話題になってから、実践してみた人も多いはず。メリットが多いと言われていたプチ断食ですが、最新の研究ではいくつかのデメリットも指摘されています。

そこで本記事では、プチ断食が体に及ぼす影響と、実践するときに覚えておきたい注意点についてご紹介します。

※この記事は、<ランナーズ・ワールド>を抄訳したものです。データや研究結果はすべてオリジナル記事によるものです。

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「プチ断食」とは

日本では「プチ断食」の名で馴染みがある「インターミッテント・ファスティング(IF)」。1日のうちに食事をとる時間帯を限定し、例えば8時間と決めた場合、その時間の中で1日分のカロリーをすべて摂取します。また「5:2の食事法」というものもあり、これは週に2日間連続して断食を行い、残りの5日間は通常通りに食事をする方法です。

これまでの研究で、プチ断食のような食事法は、血圧や血糖値の調節をサポートし、改善する効果があることがわかっていました。

内分泌学についての情報を届ける<International Journal of Endocrinology>誌によれば、プチ断食はメタボリックシンドロームの人のインスリン抵抗性(インスリンに対する感受性が低下し、インスリンの作用が十分に発揮できない状態)を改善するのに有効であるため、治療の一環として考えられるべきだと主張しています。

研究が示す「プチ断食」のデメリット

「プチ断食」が若者に及ぼす影響

プチ断食に関する研究のすべてが、メリットを示しているわけではありません。

摂食障害に関連する情報を届ける<Eating Behavior>誌に掲載された最近の研究は、プチ断食が若者の食生活の乱れを促す可能性があることを指摘しています。実際に2,700人以上の若者を対象に行った研究では、プチ断食と過食、嘔吐、食後の強迫的な運動といった行動に関連性があることがわかりました。

この研究に参加したうちの一人、トロント大学のカイル・ガンソン博士によると、若者におけるプチ断食の普及率は高く、対象者の女性の47%、男性の38%、性別無回答者の52%が、過去1年間のうちに試したことがあると回答したそう。

「私たちは、1年間に及ぶプチ断食と摂食障害の関連性について新たな発見をしました。対象者の間では、このプチ断食という食事法がまるで一般的であるかのように普及していたことに驚きました。どの性別においても『経験がある』と答えた人は、過去1年で平均100日以上もプチ断食をしていることが分かりました。これは、プチ断食と摂食障害との関係を考えると懸念される事態です」

また、トランスジェンダーを含む性別無回答者たちのプチ断食の経験率が高い理由について「社会生活で受けるストレスが原因の可能性がある」と述べている、ガンソン博士。

「彼らにとっては摂食障害による行為が、感情調節やコントロールの手段になる場合があります。社会がつくり上げた“理想の体型”に近づこうと、異常な食事法を取り入れて自身の体つきを変えようとするのです」
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Tetiana Kreminska//Getty Images

「プチ断食」が女性に及ぼす影響

プチ断食のデメリットを示す研究はこれだけではありません。肥満に関する研究や論文を掲載している<オべシティ>誌では、肥満体型である閉経前の女性12人と、肥満体型である閉経後の女性11人を対象に、8週間のプチ断食のプログラムを実施した研究の結果が発表されました。

参加者は1日のうち4時間、または6時間だけ食事をした結果、いくつかのホルモン値は変わらないものの、「デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)」と呼ばれる特定の生殖ホルモンの値が、8週間後に著しく低下していることが分かりました。

アメリカにあるメモリアル・スローン・ケタリング・癌センターは、DHEAの血中濃度が高いことが乳がんや卵巣がんのリスクを高めることを指摘。つまり、研究結果が示した「プチ断食によるDHEAの減少」は、乳がんのリスクを下げる効果が期待できると言えます。

一方で、閉経後の女性にとっては、DHEAの減少が懸念される場合があります。閉経を迎えた女性はエストロゲン値が低下しますが、それに対処する主要なホルモンがDHEAなのです。このホルモンの低下は、性機能不全、肌の色が悪くなる、膣の乾燥を引き起こすなどの影響を及ぼす可能性があります。

ただしこれらの研究結果は、プチ断食を実践することを完全に否定しているわけではありません。<オべシティ>誌で発表された研究は小規模で行われたものであり、プチ断食とホルモン分泌の関係についてはより深く調べる必要があります。

「プチ断食」の注意点

The Complete Guide to Fasting」の著者であるジェイソン・ファン医学博士は、プチ断食が体に与える影響に注意を払うことが重要だとし、<ランナーズ・ワールド>に対して次のように語りました。

「そもそも、劇的にカロリーを減少させることを目的に断食をするべきではありません。また、断食による体の不快感や異常な食生活に伴う副作用を無視するのも禁物です」

プチ断食が自分に合っているかどうか判断するためにも、断食をする際には短期間に留めましょう。また、食事ができる時間を長めに設定するのも、制限されているという感覚を減らすのに効果的。

ファン博士は、こうすることによって断食が体に及ぼす影響に注意を向けることが出来るうえ、食事に意識を向けることにもつながると話します。

「プチ断食を試してみると、“いつ食べるか”だけでなく、“何を食べているか”についての意識も高まります。だから、たとえプチ断食があなたに合っていなかったとしても、『より健康的な食品を食べるようにしよう』と思えたら、それだけで実践した価値があるのです」
healthy food and diet concept
Iryna Veklich//Getty Images

まとめ

プチ断食をするときに覚えておくべきことは「断食には、向いている人と向いていない人がいる」ということです。

例えば過去に食習慣の乱れがあった人、妊娠を希望している人、自分の体にどのような影響があるか不安な人などは、プチ断食が自分に合っているかどうか、健康を維持しながらどのような方法で断食を行うかということを、医療機関などに相談するようにしましょう。

※この翻訳は抄訳です。
Translation: Risa Tsubakihara
Runner's World