今や世界中に広まり、多くの人が生活に取り入れている「ヴィーガン」。一言でヴィーガンと言っても、それは食からビューティ、ファッション、そしてライフスタイルに至るまで多岐にわたるもの。

「まずは食から」と思う人は多いけど、最初から徹底しすぎると、偏った食生活に陥ることも。そこで、栄養士が解説する「健康的にヴィーガンに切り替える方法」を<コスモポリタン イギリス版>からご紹介。

ヴィーガンのメリットを理解し、自分のペースに合わせて少しずつ食生活を変えみて。

健康的にヴィーガン食を続ける8つのヒント

加工食品を避ける

「ヴィーガンをはじめたばかりの人は、スーパーで簡単に手に入るヴィーガン用の加工食品に手を伸ばしがちです」と語るのは、ロンドンにあるクリニック「Human Health by Clinic」のヘルスコーチで栄養士のサバイン・グランツデンさん。

「加工食品には、添加物や砂糖が多く含まれている場合が多いのです。レトルト食品はなるべく避け、前もって数日分の献立を考えるなど、計画的に買い物と調理を行いましょう。新鮮な野菜や果物を『丸ごと(ホールフード)』摂取するように心がけるのがベストです」

加工食品を利用する場合は、パッケージに書かれた成分表を確認することも大切なのだとか。

たんぱく質もしっかり摂る

プロテイン(たんぱく質)は肉や魚からだけでなく、植物性の食べ物からもとれます。しかし、植物性プロテインは動物性に比べて消化が悪く、量をたくさん食べる必要があるのだとか。

まずは豆類(レンズ豆、大豆、エンドウ豆)を毎食(1日3食)食べることを目標にしてみて。体が豆類を大量に摂取することに慣れていない場合は、少しずつ食事に取り入れ、量を増やしていくよう工夫することが大事です。

「豆類の摂取量を急激に増やすと、お腹が張るといった、消化器に関する問題を引き起こす可能性があります。体が順応すれば軽減されるので、徐々に増やしていきましょう」
how to go vegan advice
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ビタミンB12のサプリメントを飲む

ヴィーガンの食生活において、貧血などの原因とされる「ビタミンB12欠乏症」には要注意。

「納豆や海藻などの植物性食品だけでビタミンB12を十分摂取できると考えている人は多いですが、それは間違いです」

サプリメントやニュートリショナルイースト(栄養酵母)を取り入れるなどして補う方法もありますが、まずは医師に相談することが大切。自分の体に合ったビタミンB12の摂取法のアドバイスをきくのがおススメです。

EPA&DHA欠乏症に注意

脂肪酸の一種であるEPA(エイコサペンタエン酸)とDHA(ドコサヘキサエン酸)は、人間の脳と体を機能させるために不可欠な物質。

EPAやDHAはα-リノレン酸(ALA)から体内生成することができますが、鮭、鯖、ニシン、オヒョウ(カレイの仲間)などの魚には、EPAとDHAが多く含まれているのだとか。

「ALAが含まれている植物性食品は多いものの、体内でEPAやDHAへの変換率が低いという研究結果もあります。ヴィーガンはEPA(約50%)やDHA(約60%)が欠乏する傾向にあるので、補うための対策をしっかり考えるとよいでしょう」

鉄分を多く含む食品をたっぷり食べる

植物性の鉄分は動物性鉄分よりも体内に吸収されづらいため、ヴィーガンはより多くの鉄分を摂取する必要が。鉄分を比較的多く含む植物性食品には、レンズ豆、豆腐、キヌア、ひよこ豆などの豆類などがあげられるそう。

「ビタミンCを豊富に含む食品(たとえばブロッコリー、パセリ、赤ピーマン、ケール、クレソンなど)を食事に加えることで、植物性鉄分の吸収を高めることができます」
vegan plant based diet
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カルシウムとビタミンAも忘れずに

カルシウムは骨の健康、筋肉や神経の機能に不可欠であり、血液の凝固にも関係しているそう。

「カルシウム含有量が比較的高い食品として、ほうれん草やケールなどの葉物野菜があります。しかしこうした野菜は、効率的に吸収されません。よって、植物性の食事のみではカルシウムが不足しがちになるのです」

爪がもろくなったり、髪の毛のパサつきや肌の乾燥が気になったりするといった症状がある場合は、カルシウム不足の可能性もあるので医師に相談を。

ビタミンAは免疫機能や視力、肌の健康に欠かせないもの。魚介類、卵、乳製品などの動物性食品に多く含まれる、重要な脂溶性ビタミン。植物にはβ-カロテンが含まれており、体内でビタミンAに変換されますが変換率は高ないそう。

ビタミンAの推奨摂取量を満たすためにはニンジンなら400ml、サツマイモなら200ml、 ケールなら400ml分程度の量を食べる必要があると言われています。軽度のビタミンA欠乏症の場合、疲労感(倦怠感)が続くことも。

家族や身近な人には先に伝える

ヘルスコーチであるグランツデンさんは、クライアントに「食生活を変えるとき、家族や同居人などの身近な人にはあらかじめ伝えておくといい」とアドバイスしているそう。

「周りの人に、自分の思いや動機を理解してもらうことはとても大事なこと。突然のことと捉えられないようにしておくと、協力が必要なときも頼りやすくなるでしょう」
「ヴィーガン食に切り替えたばかりの頃は、『何を食べたらいいの』と悩むかもしれません。そんなとき、レシピ本が何冊かあると頼りになって便利ですよ」

SNSでヴィーガンレシピを紹介しているインフルエンサーや、YouTuberも多いので参考にしてみて。

経験者が語る「切り替えのコツ」

ここからは、ヴィーガン生活を送る人たちによる切り替え方のアドバイスを紹介!

お気に入りの「代替食品」を見つける

「私は健康上の理由からヴィーガンになりましたが、ヘルシーさを保ちつつ、これまで通り“おいしく食べる”方法を見つけたいと思いました」と語るのは、イギリス最大のヴィーガンレストラングループ「Erpingham House」の創設者、ルイ・ブレイクさん。以前はアイスクリームが大好きだったブレイクさん。現在はその代わりになるヴィーガンスイーツを発見したそう。

「バナナを3本冷凍し、植物性ミルクを混ぜてなめらかになるまでブレンドします。チアシード、ブルーベリー、クルミなどをトッピングすると、おいしい“ナイスクリーム”のできあがりです」

野菜を食事の主役に!

ヴィーガン食を中心とするレストラングループ創業者であるアーロン・ブライアンさんは「『おいしい食事=肉が含まれた食事』ではないはずです」とコメント。

「僕の場合、食事の主役は野菜なんです。野菜にはビタミンAやKなどのビタミンとカリウムなどのミネラル、そして腸に良い食物繊維もたっぷり含まれているので満足感も得られます。最近は植物性の代替肉も充実しているのでありがたいです」
vegan plant based diet
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切り替えは少しずつがおすすめ

「すべての食事を一気にヴィーガンにするのではなく、ヴィーガン食の日をときどき設けることから始めると無理がないですよ」とヴィーガンサプリブランド「musclemary」の共同創業者であるスチュアート・ジャックさんはアドバイス。

「食事は生活に根づいているものです。既存の食生活を劇的に変えてしまうと、長く続けることが難しい場合があります」

動物性食品を排除すると、特定の多量栄養素(たんぱく質、脂肪、炭水化物)や微量栄養素(ビタミン、ミネラル)、総カロリーが不足することも。アプリで摂取したものを解析し、何が欠乏しているか教えてくれる「食事管理アプリ」がジャックさんのおすすめなのだとか。

手早く作れるメニューをストック

Cauldron Foods」でブランドマネージャーを務めるアンドレア・ハーバーンさんは「ヴィーガン食の調理は計画性が大切です。一晩でプロのシェフのようになる必要はありませんよ」とコメント。

「手早く作れて栄養価のマ高い主食レシピをまずスターし、その後でレパートリーを少しずつ増やしていくとうまくいくでしょう」

乳製品を含まない代替品を知る

肉を避けるのは、比較的簡単なこと。「でも乳製品を避けるのは結構難しいんです」と語るのは、植物ベース食の宅配サービス「planthood」の共同創業者であるウィル・モクサムさん。

「スーパーで乳製品の代替品を見つけるのは、今も難しいときがあります。そんなときは創造力を働かせ、自分で代替品を作ってみるのも手。たとえば、ヴィーガンマヨネーズの作り方はとても簡単。レシピは通常のマヨネーズと同じですが、卵黄をアクアファバ(ヒヨコ豆缶の煮汁、豆の茹で汁)に置き換えるだけです」

※本記事は、Hearst Magazinesが所有するメディアの記事を翻訳したものです。元記事に関連する文化的背景や文脈を踏まえたうえで、補足を含む編集や構成の変更等を行う場合があります。
Translation: 宮田華子
COSMOPOLITAN UK