毎年9月29日は、国連が定めた「食料のロスと廃棄に関する啓発の国際デー」。よりよいフードシステムの構築に向けて官民にアクションを呼びかけ、優先順位を付け、食品ロス削減への変革を進める機会として、2019年12月の国連総会で制定された新しい記念日です。
ここ数年でよく聞くようになった「食品ロス」という言葉ですが、そもそも何のことを指すのか、同じくよく耳にする「フードロス」との違いは何なのか、そして、食品ロスを減らすために私たちにもできることなど、改めてきちんと知っておきたいポイントをまとめました。
【INDEX】
◆そもそも、「食品ロス」って何?
「食品ロス」とは、簡単に言うと「本来は食べられるのに捨てられてしまう食べ物」のこと。
◆「フードロス」との違いは?
では、「食品ロス」と「フードロス」の違いは何でしょうか? この2つは間違えられやすく、食品ロスと同じ意味でフードロスが使われているケースもしばしばありますが、厳密には異なります。
日本ではまとめて「食品ロス」と呼ぶことが多いですが、世界的には以下の2つに分けて考えられています。
- フードロス/食品損失(Food Loss):生産、収穫、輸送、製造、加工、包装までの、小売業者に到達する前の段階で廃棄される食品
- フードウェイスト/食品廃棄(Food Waste):小売業者や飲食店、消費者までの、小売業者に到達した後の段階で廃棄される食品
◆私たちはどのくらい食品の廃棄を生み出しているの?
日本では2021年度に、約523万トンの食品の廃棄(家庭から約244万トン、事業者から約279万トン)が発生したと推計されています。これは、日本人1人当たり毎日お茶碗1杯分(約114グラム)を捨てている計算になり、毎日10トントラック約1433台分もの食品が捨てられていることになるのだとか。
また、世界規模だと廃棄量は年間約13億トンにものぼり、私たちは、私たちが食べるために生産されたはずの食料のおよそ3分の1もの量を廃棄していることになるそうです。この廃棄量だけで、世界中で飢餓にあえぐ人々の2倍以上の飢えを満たすことができ、お金に換算すると約1兆ドルにもなるのだとか。食品の廃棄は、現代における重大な問題であることを意識しなくてはなりません。
なお、家庭で発生する食品の廃棄は、大きく以下の3つに分類されます。
- 食べ残し 要因:作り過ぎ、好き嫌いなど
- 賞味期限・消費期限切れによる廃棄 要因:買い過ぎ、間違った保存法など
- 野菜や果物の皮・茎など、過剰に除去された可食部分 要因:調理技術不足、過度な健康志向など
◆なぜ食品の廃棄をなくすべきなの?
食品の廃棄が発生することにより、さまざまな影響や問題が生み出されます。
まず、食品を含め多くのごみが廃棄されているため、その処理に多額のコストと環境への負荷がかかってしまっているということ。可燃ごみとして焼却することで大量の温室効果ガスが排出される(2014年の資料によると、世界で年間約33億トンにものぼるそう)うえ、焼却後の灰(2021年度の日本だけで、食品の廃棄を含めた一般廃棄物すべてで年間約342万トン発生)の埋め立てなどにより、環境にダメージを負わせ続けています。
食品が廃棄されると、当然ながら、それを生産するために使われたエネルギーや水、土壌、労働力、時間もすべてムダになります。
経済の観点から見ても、多くの食料を輸入に頼りながらも、食べきることなく廃棄してしまっている状況は、大きなムダを作り出していることになり、また社会の観点から見ると、多大な食品の廃棄を発生させているいっぽうで、日本では7人に1人の子どもが貧困により食事に困っているという状況に陥っています。
◆私たちにできることは?
2015年に開催された国連サミットでは、『持続可能な開発のための2030アジェンダ』が採択されました。そのなかでは、2030年までに「世界全体の一人当たりの食料の廃棄を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食料の損失を減少させる」ことが掲げられています。
その後、日本でも2019年に「食品ロスの削減の推進に関する法律(食品ロス削減推進法)」が定められ、各自治体や企業、団体も食品の廃棄削減のためにさまざまな動きをしています。
では、私たちが普段の生活でできること、気を付けるべきことには、どんなものがあるのでしょうか?以下で確認してみましょう。
〈買い物のときのポイント〉
・買い物の前に、冷蔵庫やパントリーにある食材をチェックして。スマホで写真を撮ったりメモに残したりして、買い物時の参考にしましょう。数日分の献立を前もって考えておくとなおラクになり、衝動買いも避けられ、お金の節約にもなります。
・必要な分だけ、食べられる量だけを買うこと。お買い得品や値引き品を見つけると嬉しくなりますが、腐らせてしまっては意味がありません。また、空腹時に買い物に行くと、本当に必要ではないものや特に欲しくないものまで買ってしまう可能性が高まります。
・使用予定と照らし合わせて、期限表示を確認。すぐに使う予定の食材は、売り場の陳列棚の手前から取るようにしましょう(てまえどり運動)。
〈家庭での保存・調理のポイント〉
・食材を適切に保存しましょう。記載された保存方法に従って保存し、野菜や肉は早めに茹でておく、使いやすいサイズに切って冷凍するなど、下処理してストックを。
長持ちする保存方法をインターネットで調べたり、市販の野菜保存袋や保存容器を活用したりしましょう。
・食材を上手に使いきること。残っている食材から使い、作り過ぎてしまって残った料理は、リメイクレシピなどで工夫を。
もうすぐ傷みそうな食品や半端に余った食材で、スープや炒め物などをアレンジして作ってみれば、料理の腕もクリエイティビティも上がるはず。野菜のくずなどは冷凍しておけば、ベジブロスなどに使えます。「使いきりレシピ」「食べきりレシピ」などで検索しても◎。
・食べきれる量を作る。体調や健康、好み、家族がいる場合はその予定なども配慮して、作る量を調整しましょう。まとめて作って冷凍しておくのもひとつの手です。
・生ゴミはコンポスターなどを活用して堆肥にすれば、土に還り、温室効果ガスの排出量を減らせます。
・キッチンにメモを置いておき、悪くなって捨ててしまったものが何だったかを書き留めてみましょう。しばらく経ってその傾向が見えてくれば、買い物も保存も上手になるはずです。
〈外食するときのポイント〉
・残さず食べられる量を注文するよう心がけて。ただしどうしても食べきれない場合は、持ち帰ることができるかを確認しましょう。持ち帰って食べたあとの容器のゴミも、もちろんきちんと分別を。
・パーティや宴会の席では食べ残しが多くなりがちなので、各自が注意することも大切です。乾杯からの30分間とお開き前の10分間は自分の席で料理を楽しみ、食べ残しを減らそうという「3010運動」を徹底するのもアイデアのひとつ。
また、「mottECO(モッテコ)」のマークがあるレストラン(デニーズやロイヤルホストなど)では持ち帰りを推奨しているので、それも覚えておくとよさそうです。
〈賞味期限・消費期限について正しく知る〉
・知っているようで実は知らない、「賞味期限」と「消費期限」の違いも覚えておきましょう。「賞味期限」とは、品質が保たれ、おいしく食べることができる期限のこと。チーズやスナック菓子、缶詰、インスタント食品など、比較的品質の劣化が緩やかなものに表示されます。
適切に保存していれば、期限を過ぎたからといって、すぐに食べられなくなったり、食品衛生上問題が生じたりはしません。しっかり加熱するなど、調理方法を工夫しましょう。
・いっぽう「消費期限」とは、過ぎたら食べない方がいい期限のこと。惣菜や生菓子、食肉など、品質の劣化が速い食品に表示されます。消費できるだけの量を購入し、期限内に食べきりましょう。
とはいえ上記はいずれも、未開封の状態で、記載されているとおりに保存した場合の期限。一度開封したものは、期限に関わらず早めに食べるのが鉄則です。
・「ローリングストック」も実践できればなおベター。これは、少し多めに食材や加工品を買っておき、使ったら使った分だけ新しく買い足していくことで、常に一定量の食料を家に備蓄しておく方法のことを言います。
こうすることで備蓄品の鮮度を保ち、災害時などいざというときにも普段とあまり変わらない食生活を送ることができるようになります。非常食は未使用のまま賞味期限が過ぎてしまいがちですが、ムダなく非常時に備えられます。
パックご飯やレトルト食品、乾物などがローリングストックに向いています。
〈フードシェアリングサービスの活用〉
・近年、「TABETE(タベテ)」や「Kuradashi(クラダシ)」、「Let(レット)」、「Wakeai(ワケアイ)」、「ロスゼロ」、「ロスヘル」など、飲食店で廃棄になる前の料理や、賞味期限前に捨てられてしまう食品、規格外の野菜を安く購入できるウェブサイトやアプリがいくつも登場しています。
売り手は料理や食品を廃棄せずに済むうえ、買い手は十分おいしい料理や食材を安く買えるなど、環境にもお財布にもやさしい仕組みなので、賢く活用してみては?
〈寄付でも食品のロス削減に〉
食品メーカーや小売店などが、販売できなくなった賞味期限内の食品を、食事に困っている方を支援するフードバンク団体に寄付して食品の廃棄を減らす活動も行われています。
「棚で眠っている賞味期限内の未開封食品がある」「買ったものの好みに合わなかった食品がある」という人は、地方公共団体や大型スーパーマーケット、学園祭などで寄付を受け付けている場合があるので、探してみるといいでしょう。寄付されたものは、フードバンクなどを経由して必要としている人たちに届けられます。
また、家庭で余っている未使用食品を持ち寄り、フードバンク団体や福祉施設、子ども食堂などに寄付するフードドライブという活動もあります。自治体のホームページなどで調べてみるとよいでしょう。
「捨てちゃえばいいや」ではなく、「もったいない!まだ使えるかも?」と立ち止まって考えてみるだけで、食品の廃棄削減に貢献できるはずです。